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薬剤の使い分けが重要に

治療薬に新たにボスチニブが加わる 慢性骨髄性白血病の最新治療

監修●鈴木憲史 日本赤十字社医療センター副院長/血液内科部長
取材・文●町口 充
発行:2015年6月
更新:2015年8月

  

「患者さんに合わせて、上手に薬剤を使っていくことが大事となってきます」と語る鈴木憲史さん

慢性骨髄性白血病(CML)は、近年の分子標的薬の登場で治療法が目覚しく進歩している。昨年(2014年)新たに2次治療、3次治療に有効なボスチニブが加わり、他にも新規薬剤の登場が待たれているが、完全治癒により薬を服用し続けなくてもよい時代の到来も決して夢ではなくなってきた。

画期的だったイマチニブの登場

CMLは、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞が作られる骨髄の中で、血液細胞の元となる造血幹細胞ががん化し、正常な造血が行われなくなってしまう病気。慢性期、移行期、急性期に分けられ、急性期になると治療成績は極めて悪いため、慢性期で食い止めることが重要であり、この段階での治療で効果を発揮するのが分子標的薬だ。

原因遺伝子が特定できていないがんが多い中で、CMLは発生原因となる遺伝子がわかっている。

ヒトには46本の染色体があるが、9番目と22番目の染色体が途中で切断され、相互に入れ替わってつくられるのが「フィラデルフィア染色体」と呼ばれる特殊な染色体。すると本来は離れて存在するBCRという遺伝子とABLという遺伝子が融合してBCR-ABL融合遺伝子が出現し、この遺伝子によって作られるBCR-ABLチロシンキナーゼの作用で白血病細胞が異常増殖していく。

フィラデルフィア染色体が発見されたのは1960年であり、この染色体上に生じたBCR-ABL融合遺伝子がCMLの原因遺伝子であるとわかったのは1980年代になってから。そこでBCR-ABLチロシンキナーゼをターゲットにした分子標的薬の研究開発が始まり、登場したのがイマチニブだ。

日本赤十字社医療センター副院長で血液内科部長の鈴木憲史さんは次のように語る。

「以前、化学療法に使われたのはブスルファン、ヒドロキシウレアといった薬で、その後、インターフェロンがファーストライン治療薬(1次治療薬)となりましたが、2001年に経口薬のイマチニブが登場してCMLの治療は劇的に変わりました」

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)の臨床研究によれば、イマチニブによる治療開始後8年間の生存率は93%に達しており、かつては原因不明で〝不治の病〟といわれたCMLは文字通り〝慢性の病気〟となり、鈴木さんによれば「薬を服用している限りはめったに亡くならない病気」になった。

イマチニブ=商品名グリベック ブスルファン=商品名ブスルフェクス、マブリン散 ヒドロキシウレア=商品名ハイドレア インターフェロン=商品名スミフェロン、オーアイエフ

治療抵抗性と点突然変異の問題

しかし、イマチニブとて万能ではない。問題点の1つは、服用を続けているうちにがん細胞がイマチニブに耐性を持つようになって次第に効かなくなる「治療抵抗性」の問題で、こうした患者さんが15~25%存在するという(表1)。

表1 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬の問題点1

△:臨床効果が確認されていない

「なぜ効かなくなるかというと、BCR-ABL融合遺伝子の構造に変化が起きて、BCR-ABLチロシンキナーゼの形が変わってしまう点突然変異が起こるからです」と鈴木さん。

変形したBCR-ABLチロシンキナーゼにイマチニブは結合しなくなり、十分な治療効果が得られなくなるのだ。

イマチニブの副作用がひどくて薬を飲み続けられない「不耐容」の問題もある。

QOL(生活の質)の低下につながるような全身の倦怠感、浮腫、吐き気などで投与の中断や減量が必要なことがあり、最終的に投与を中止せざるを得なかった人が約8%いたとの臨床試験の結果もある(表2)。

表2 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬の問題点2

そこで、イマチニブの弱点を補う第2世代のBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)として、09年に日本で発売されたのがダサチニブとニロチニブ。さらに14年9月にはボスチニブも仲間入りした。

「1次治療はイマチニブでいいと思いますが、イマチニブが効かなくなった人に対して、3つの薬を上手に使っていくことが大事になっています」と鈴木さんは語る。

阻害作用がどれだけあるかの比較では、イマチニブの阻害効果を1とすると、ニロチニブで20倍、ボスチニブが50~200倍、ダサチニブでは325倍もあるというから、大いに期待したいところだ(表3)。

表3 慢性骨髄性白血病(CML)治療の用いられる分子標的薬の阻害作用の比較

ダサチニブ=商品名スプリセル ニロチニブ=商品名タシグナ ボスチニブ=商品名ボシュリフ

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