遺族年金について知っておきましょう
その3 「遺族」に該当するための条件

文:山田由里子 社会保険労務士
発行:2004年7月
更新:2013年4月

  

妻か夫かで大きな違い

「遺族年金」とは誰がもらえる年金なのでしょうか。まず、大原則は「死亡した人の収入によって扶養されていた家族がいる」ということです。独身者で扶養している家族がいない人や、サラリーマンの妻で自分自身が夫に扶養されているといった人が亡くなっても「遺族年金」は出ません。では、一家の稼ぎ手が亡くなったら残された遺族が誰でも遺族年金を受け取ることができるかというと、残念ながらそうではありません。年金制度でいう「遺族」に該当するためにはさまざまな条件があるのです。

[表1 遺族の範囲]
表1 遺族の範囲
表中の「18歳未満」は18歳に達して最初の3月末日までをいう。また20歳未満で1・2級の障害の子も含む。
表中の「55歳以上」は55歳から59歳までは支給停止。60歳からの受給となる。

遺族年金には国民年金から「遺族基礎年金」、厚生年金から「遺族厚生年金」、公務員の加入する共済組合の「遺族共済年金」などがあります。遺族年金を受けられる遺族は、死亡した人がこれらのどの制度に加入していたかによってもその対象が大きく異なります。どんな違いがどのように遺族年金に反映されるのか、具体的事例をもとに探っていきましょう。

[表2 年金制度と給付]
表2 年金制度と給付
事例-1 自営業の夫が死亡した場合

A男さん(40歳)が死亡。遺族は妻B子さん(40歳)と長男(14歳)。

A男さんは10年ほど前に10年間勤務した会社を退職し、念願だった園芸店を始めました。現在は個人事業主であるため厚生年金には加入していません。夫婦ふたりとも国民年金第1号被保険者として保険料を納めていました。店の経営にはA男さんだけではなくB子さんも大きな戦力となっており、どちらが欠けても店が立ち行かない状態でした。このような状況のなか、A男さんが突然倒れそのまま帰らぬ人となってしまったのです。

国民年金第1号被保険者=自営業者、フリーターなど国民年金の保険料を自ら納めるべき人。給与から保険料を控除される会社員は第2号被保険者。保険料が免除されているサラリーマンの妻は第3号被保険者

遺族年金の額

A男さんが加入していたのは国民年金です。遺族である妻B子さんには国民年金から遺族基礎年金がでます。遺族基礎年金は国民年金を40年かけてもらえる満額の老齢基礎年金と同じ額の79万2100円が基本となり、それに子の加算額がついて102万円、月額で8万5000円がもらえます。しかし、この遺族基礎年金は言ってみれば養育費がわりの期間限定の年金です。あと4年経ち長男が18歳になって高校を卒業する3月でこの年金は打ち切られます。

事例-2 自営業の妻が死亡した場合

亡くなったのがA男さんではなく、妻のB子さんだったとしたらどうでしょうか。B子さんもA男さんと同じく国民年金に加入していました。しかしこの場合、残された夫であるA男さんは遺族年金をもらうことはできません。「遺族基礎年金」は子のある妻、または子だけが対象となっているからです。この場合の子とは18歳未満または1、2級の障害をもつ20歳未満の子を指します。A男さんのように扶養する子がいても夫はすべて対象外、子のない妻も対象外です。18歳未満の子である長男は受給権者となりますが、父に扶養されている子の遺族基礎年金はその間支給停止となりますので、結局遺族年金はもらえません。

ただし、国民年金に3年以上かけたのに年金につながらず死亡した場合の死亡一時金12万円をA男さんはもらうことができます。

事例-3 共働きの家庭で会社員の夫が死亡した場合

C夫さん(40歳)が死亡。遺族は妻D子さん(40歳)と長男(14歳)。

C夫さんは高校を卒業して、12年間ほど実家の青果店を手伝っていましたが近くに大型スーパーが進出したのを機に店をたたみ、10年前に今の会社に就職しました。死亡時は厚生年金加入中でしたが、その前はずっと国民年金の保険料を自ら納める第1号被保険者でした。妻であるD子さんも会社勤務です。正社員として厚生年金にも加入していました。


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