遺族年金について知っておきましょう
その4 遺族厚生・遺族共済年金の給付のしくみ

文:山田由里子 社会保険労務士
発行:2004年8月
更新:2019年7月

  

遺族基礎年金は「子育て年金」

公的年金制度は、よく2階建ての家にたとえられます。1階部分が、すべての国民を対象とした国民年金、2階部分が会社員や公務員が加入している厚生年金保険や共済組合です。2階部分は1階の基礎部分の上乗せと考えるとわかりやすいです。たとえば、会社員だった人の老齢年金の場合、国民年金から「老齢基礎年金」をもらって、さらに厚生年金から上乗せとして「老齢厚生年金」をもらうという形になります。

遺族年金にも、国民年金からの「遺族基礎年金」、厚生年金保険からの「遺族厚生年金」、共済組合からの「遺族共済年金」がありますが、給付の面から考えると老齢の場合のしくみとは大きく異なります。老齢年金の場合と違って、遺族基礎年金はもらえないけれど、遺族厚生年金や遺族共済年金がもらえるというケースが多くあります。これは、遺族基礎年金の受給権者が「18歳未満の子をもつ妻」または「18歳未満の子」だけという、かなり限定的な、いわば「子育て年金」であるからです。遺族基礎年金を終身でもらえるということはありません。扶養する子が18歳になると打ち切りになる有期年金なのです。

遺族基礎年金と比べると、遺族厚生年金の受給権者はかなり広く設定されており、終身で年金を受け取ることもできます。遺族厚生年金と遺族共済年金のしくみは基本的には同じですので、ここからは遺族厚生年金で話をすすめていきます。

どのようなときに遺族厚生年金を受けることができるのか、事例研究をスタートしましょう。

事例-1 会社を辞める前に受診した場合

A男さん(42歳)が死亡。遺族は妻B子さん(38歳)のみ。

A男さんは、大学を卒業以来16年間勤務した大手スーパーを退職し、2000年にコンビニエンスストアを始めました。個人事業主となったので、厚生年金ではなく国民年金加入です。また、健康保険は社会保険から国民健康保険に変わりました。現在は、会社員が加入する政府管掌健康保険も、自営業者が加入する国民健康保険も、病院にかかるときの自己負担は3割と同じです。しかし2000年は、政府管掌健康保険は自己負担が2割でした(2003年4月から3割負担)から、すでに3割負担だった国民健康保険よりも有利でした。そのため、悪いところがあったら退職前に会社の保険証で治療してしまおうと、A男さんは考えました。

そんな軽い気持ちで近くの総合病院を受診したのですが、そこで思いもよらず、初期の胃がんが発見されたのでした。早期胃がんは現在かなり高い確率で治癒します。A男さんの場合、手術後の経過も順調で治療スケジュールもこなし、すっかり治ったかのようでした。復帰後にはあらたな仕事にも意欲を燃やしました。しかし、半年前の定期検査で再発が見つかり治療の甲斐なくA男さんは亡くなりました。最初に病気が発見されてから4年後のことでした。

A男さんが死亡したとき、A男さんは国民年金の第1号被保険者でしたが、残された妻B子さんは遺族厚生年金、約5万1000円(注1)を受け取ることになりました。

政府管掌健康保険=社会保険庁が管理運営する会社員のための健康保険のこと。他に健康保険組合が管理運営する健康保険に加入する会社員もいる
注1=昭和37年生まれ、平均給与36万円、厚生年金加入期間16年間として算出

事例-2 会社を辞めてから受診した場合

C夫さん(42歳)が死亡。遺族は妻D子さん(38歳)のみ。

C夫さんは、2000年にそれまで勤務していたIT関連会社を退職しました。この不況下でも会社の業績は上がっていましたし、年俸制の給料も悪くありませんでした。しかし、こなさなければならない仕事量がはんぱではありませんでした。毎日の残業は当たり前、休日出勤を強いられることも多く、退職を決意した一番の理由は、この過重とも言える労働時間に体がついていけなくなったからです。退職直前には、疲れがとれにくく、胃もたれや食欲不振、体重減少などの体調不良を自覚していました。しかし、休みをとってまで病院に行こうとは思いませんでした。退職したらいつでもいけるし、せめて最後まではきちんと勤めようと考えたのです。

4年後にC夫さんは亡くなりました。胃がんでした。死亡の当時、C夫さんは国民年金の第1号被保険者でした。残された妻D子さんは遺族厚生年金を受けることはできませんでした。

国民年金第1号被保険者=自営業者、フリーターなど国民年金の保険料を自ら納めるべき人。給与から保険料を控除される会社員は第2号被保険者


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