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医療費制度の今後 がん患者さんも、他疾病患者さんも、健康な人も一緒に議論を!

救済制度の谷間からがん患者さんをすくい上げ、安心できる社会へ

監修●児玉有子 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーション
監修●松井彰彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 システム社会連携研究部門特任研究員      
取材・文●半沢裕子
(2013年7月)

闘病中の患者さんを対象とした高額医療費に対するアンケートは今回で3回目。しかしそこには前回、前々回と変わらず、医療費に圧迫されるがん患者さんの苦しい現実があった。打開策はあるのか――。

医療費支払限界額「1~2万円」に道遠し

■図1 医療費が高くて治療を中断したことがあるか(複数回答)
治療(薬も含む)を中断したことがある 22(6.6%)
治療回数や薬の量を減らしたことがある 46(13.8%)
治療(薬も含む)をやめた(中止した) 22(6.6%)


東京大学医科学研究所特任研究員の児玉有子さんは2012年9~10月、「医療費に関する経済的および精神的負担に関する調査」(アンケート調査)を実施した。

児玉さんが病気療養中の患者さんを対象に調査を行うのは、今回で3回目。最初は2009年5~10月、慢性骨髄性白血病の治療薬グリベックを服用する患者さんを対象に行った。その結果、「夢の治療薬」ともいわれるグリベックによって患者さんが5~10年以上の長期生存が可能になった一方で、それは1錠2749円、通常1日4錠服用する必要があり、超高額な薬代に生活を圧迫されている実態が浮き彫りになった。

■図2 罹患後の生活の変化
病気が理由で仕事をやめた 93(27.9%)
病気が理由で仕事を辞めることを考えた 75(22.5%)
(2012年4月以前)病気が理由で、生活保護を申請した 4(1.2%)
(2012年4月以降)病気が理由で、生活保護を申請した 1(0.3%)
生活保護申請に関する書類を取り寄せた 7(2.1%)
生活保護の申請が受理され、現在生活保護を受けている 4(1.2%)
病気(治療費)が理由で、子供の教育投資を減らした。/進学を諦めさせた 19(5.7%
病気(治療費)が理由で、子供に進学を諦めさせた。進路変更をお願いした 13(3.9%)
その他(具体的にお書きください) 67(20.1%)
回答なし 134(40.2%)


この結果は大きな反響を呼び、ほかの疾病の患者さんから「私たちも苦しい」との声が溢れた。これを受けて行われたのが、2009年12月の「高額な医療費をお支払いの患者の方の実態調査」だ。

さまざまな疾病の患者さんを対象としたこの調査でも、「高額な医療費を長期、場合によっては生涯、払い続けなければならないこと」が患者さんを負担感で押しつぶし、「希望をもって普通に生活すること」を阻んでいるという事実が明らかになった。

3回目に当たる今回の調査は、平成24年度の同研究所基盤研究、「社会的障害の経済理論・実証研究」の一部として行われたが、その目的を児玉さんはこう語る。

「研究代表者は東京大学経済学部の松井彰彦さんですが、松井さんとは2009年のグリベック服用患者さんの調査時から一緒に研究に取り組むようになりました。その過程で、松井さんは『障碍者には障碍者の、健康者には健康者の救済制度(医療制度など)がある。しかし、これら制度の谷間には、どこからも救済されずに苦しむ人がいる』という考え方を打ち出されました。長期疾病療養者はまさにこれに当たります。今回の研究目的は『いずれの制度にも救済されない人を救済し、誰もが生きやすい社会を模索する』こと。長期疾病療養者の調査と救済は、その大きな柱の1つになっています」

今回も対象としたのは「高額な医療費をお支払いの方 々」だが、結果としては回答者約300人の半分近く(43%)をがんの患者さんが占め、さらに、がん患者さん147人中107人が薬物治療を受けていることが明らかになった。その高額療養費の中身は多くが薬代だった。

グリベック=一般名イマチニブ

自己負担4万4400円減額される可能性は?

■図3 毎月の医療支払限界額アンケート回答の8割が、毎月の医療支払い限界額が2万円までと答えた

2009年の調査との違いを、児玉さんはこう語る。

①高額療養費制度が広く知られるようになり、利用者も増えた(「高額療養費制度を知っている」人が78~84%になり、高額療養費制度利用者は34%となった)。

②前回は高額療養費の情報を医師から得る人が多かったが、今回はパソコンなどで自分で入手する人が増えた。

③患者さんが持続的に可能と考える1カ月の支払額は今回も1~2万円ということが明らかになった(図3)。

④2012年4月、高額療養費制度が改正になり、これまで自己負担分を超える分も1度支払わなければならず、後で払い戻す仕組みだったが、自己負担分だけ支払えばいい仕組みになった。

⑤これにより、「負担感が減った」とする人も12%いたが、「以前と変わらず」とする人は40%。現実に支払う額は変わらず、課題はやはり自己負担分の減額。

「調査では患者さんが所得など通常答えにくい内容にもお答えいただくなど多くの協力をしてくださったので、マスコミにも取り上げられ、『真剣に考えよう』という動きがみられるようになりました。今回は経済学の専門家との研究ですので、さらに精度の高いデータを集め、患者さんの負担の少ない医療を1歩1歩実現できればと思っています。

同時に、高額療養費見直しに関する会議(社会保障審議会医療保険部会など)の推移を、患者の皆さんにも見守っていただきたいと思います。 厚労省は『大変な金額が必要』と議論を先送りしていますが、その必要額も当初に比べれば半分以下の額が示される様になりました。我々の試算ではがんに限っていえば、『高いがよく効き、患者さんが長く飲み続ける』という条件がそろった薬剤の売り上げから推定すると、現行の自己負担4万4400円を2万円に下げるのに巨額の追加予算はいらないと思われます。

こうした議論を見守り、患者さんは自分の病気だけでなく、すべての病気の患者さんが利用しやすい制度を実現することを一緒に考えていただければと思います。そして、健康な人もです。あらゆる病気になる可能性を、すべての人がもっているのですから」

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