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医療費相談:がん相談支援センターを活用して、使える制度を知る 公的支援制度を賢く利用して、病気と向かい合う

監修●菊池由生子 都立駒込病院医事課医療相談係・ソーシャルワーカー
取材・文●常蔭純一
発行:2013年7月
更新:2019年10月

  

都立駒込病院医事課医療相談係・ソーシャルワーカーの菊池さん

罹患を受けとめ、治療を開始したころに感じる医療費の問題。突然の出費とその金額に、どうしたらよいのか、誰に相談したらよいのか困惑することも多い。それは、治療の継続にも影響する。そこで、患者さんや家族のさまざまな相談を受ける相談支援センターに、経済的な問題の対応策を聞いた。

大きな治療費の問題

■表1 ソーシャルワーカーの業務分類件数

業務分類 件 数
受診援助 506
入院援助 2,009
退院援助 7,576
療養上の問題調整 5,989
経済問題調整 3,008
就労問題調整 53
住宅問題調整 111
教育問題調整 59
家庭問題調整 158
日常生活支援 365
心理・情緒的支援 85
医療における人権擁護 141
合 計 20,060

出典:都立駒込病院(2011年度)

「がんで入院が決まったのですが、治療費が心配です」

「外来での検査費用が予想以上に高額だったのですが」

都立駒込病院の相談支援センターには、毎日のように治療費に関する不安を抱えた相談者が訪ねて来る(表1)。

「深刻な病気には、必ず治療費の問題が付随しますが、がんもその例外ではありません。手術、放射線、抗がん薬などの治療が高額ですし、治療が長期化することも多いので、費用がかさみます」

と語るのは、ソーシャルワーカーとして、さまざまな患者さんの相談に応じている同院医事課医療相談係の菊池由生子さんである。

がん治療では、年間の治療費が100万円台に達することも少なくない。病気や治療の不安に加えて、がん患者さんには経済面での悩みものしかかってくるわけだ。

その悩みを少しでも軽くすることはできないものか。そこでぜひ利用したいのが、さまざまな経済面での公的な支援制度だ。

公的支援制度を知る

「患者さんのなかには、治療費の支援は個人で加入している生命保険だけと思っている人が多いです。大切な支援制度をあまりご存じない人もいます」

菊池さんがいう「大切な制度」とは、治療費の支払いに一定の限度を設けた「高額療養費制度」だ。現行の健康保険制度では、患者さんの治療費負担は3割もしくは1割になっている。

しかし、元の治療費が高額だと、それでも患者さんの負担は大きい。そこで健康保険加入者に対しては、患者さんの自己負担額に一定の限度が設けられているのだ。

「治療費がどんなに高額になっても、それ以上は負担しなくていいという制度。文字通り、高額医療費支援の中核となる制度です」

支払限度額は、患者さんの年齢や収入によってA、B、Cの3段階に区分される。たとえば年収600万円未満の世帯では、1年以内に3回目までは月単位の支払いの基本限度額が8万100円+αに設定されている。上位所得者の場合は、3回目までの基本限度額は15万円+α、収入が少ない非課税世帯では3万5,400円が基本限度額となる(表2)。

また、同一健康保険内に患者さんが2人以上いて、それぞれの負担額が2万1,000円以上なら合算して払い戻し申請できる。

もっとも、この制度は支払った治療費が、後で返還されるシステムだ。つまり病院の窓口では、保険で減免されない3割、もしくは1割の金額をそのまま支払わなくてはならない。患者さんにとってはそれも大きな負担となる。

■表2 70歳未満の高額療養費制度および自己負担限度額(月額)

区 分 3回目まで(過去1年間 4回目以降
A:上位所得者 150,000円+(実際の医療費-500,000円)×1% 83,400円
B:一般世帯 80,100円+(実際の医療費-267,000円)×1% 44,400円
C:非課税世帯 35,400円 24,600円

限度額適用認定証の利用を

■表3 70歳以上の医療費・高額療養費制度

医療費
一般の方 医療費の1割
一定以上の所得の方 医療費の3割
高額療養費および自己負担額(月額)
外来 世帯単位・入院および外来
低所得者 8,000円 15,000円(注1)
24,600円(注2)
一 般 12,000円 44,400円
一定以上の
所得者
44,400円
1~3回目:80,100円+
(総医療費-267,000円)×1%
4回以降:44,400円

(注1)年金収入のみで年金額が1人80万円以下の方
(注2)それ以上の収入でも世帯全員が非課税の方

そこで、そうした当座の支払いを支援する制度も設けられている。限度額適用認定証を利用する方法だ。限度額適用認定証の交付を受けて医療機関に提示すると、医療費の窓口負担が自己負担限度額までの支払いですむことになり、一時的な費用負担を軽くすることができる。

「申請が簡単ですし、限度額適用認定証が発行されればそれを窓口で見せればいい。便利で手間もかからないので、今では、外来通院でも利用しています」

70歳以上では1割負担が原則で、さらに外来と入院が世帯単位に区分されたうえで、自己負担限度額が、所得に応じて3段階に区分される。たとえば年金を含めた収入が年80万円を上回っている入院患者の限度額は4万4,400円となる(表3)。

ところで、この高額療養費制度では、もう1つ、意外に知られていない大幅減額の可能性もある。

企業などが加入している健康保険では、自己負担限度額がさらに引き下げられる附加給付制度が設けられていることもあるのだ。

「個々の健康保険によって具体的な金額はまちまちですが、2~3万円程度に自己負担限度額が抑えられているところもあります」

健康保険加入者は、ぜひ自分の加入している健康保険組合に確認しておきたい。

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