1. ホーム > 
  2. 暮らし > 
  3. 仕事 > 
  4. がんと就労
 

乳がんサバイバーの職場復帰 外来通院中の患者さんを対象に意識調査

職場復帰には周囲の理解と本人の自覚が大切

監修●小野智恵美 帝京大学医学部附属病院看護師
取材・文●「がんサポート」編集
発行:2014年10月
更新:2015年1月

  

「時間調整ができる職場のシステムが大切」と話す小野智恵美さん

「身体的負担でこれまでの仕事ができなくなるのでは」
「雇用条件はどうなるの?」

乳がんは治療後に良好な予後が望めるがん種だ。仕事を持つ女性が乳がんになることも珍しくないが、彼女たちの大きな悩みに「就業をどうするか」ということがある。患者さんに職場復帰への本音を聞いた調査結果がまとまった。

働く世代も襲う乳がん

乳がんの罹患者数は、女性ではすべてのがん罹患の中で最も多いがんだ。罹患率は年々上昇し、年齢別にみると、30歳代から増加し始め、40歳代後半から50歳代前半にピークを迎える。最近の傾向としては、若い世代でも罹患者が増えている。

一方で、女性の乳がん罹患者数は、乳がんで死亡する人数の3倍以上である。これは、見方を変えれば、乳がんの生存率が比較的高いことを示している。社会復帰できるサバイバーが多いという側面を持つ乳がんだが、そこには医療だけではなく社会的な課題も見えてくる。

「今後、さらに働く世代の乳がん患者さんが増加していくことが予測されます。現状でも、就業を続けることができるのか、職務を変えなくてはいけないのか、といったことに悩む方が増えています」

帝京大学医学部附属病院の乳がん看護認定看護師である小野智恵美さんは、女性たちの社会復帰への不安や障壁をケアすることの大切さを強調する。

「乳がん患者さんは、手術などの治療で職務を遂行する能力は一時的に低下しますが、治療後には罹患前と大差ないまでに回復することができます。化学療法や放射線療法は外来通院で可能です。仕事を続けることは十分にできるのですが、治療の現場では、治療の前から『仕事は辞めなきゃいけませんよね』という心構えの声をとてもよく聞きます。実際に、周囲の認識やサポート不足で仕事を継続できないという事実も聞いてきました。彼女たちの本心を聞こうと今回の調査を行いました」

通院61人が職場に所属 ステージⅡが4割

「外来通院中の乳がんサバイバーにおける職業復帰に対する不安」と題した調査は、2013年5月に帝京大学医学部附属病院に外来通院していた乳がん患者さんを対象に行われた。自立した日常生活活動(ADL)のできる20~65歳、精神科疾患の既往歴がない、そして乳がんへの知識を平均化するためにNPO法人が作成したリワークノート(就職支援ツール)を読んでいることを条件とした。

110人にアンケートを依頼し、75人が回答(回収率68%)、うち61人が職場に所属(休職を含む)していた。病期では、Ⅱ期が4割ほどを占めた(図1)。

図1 職場に所属している乳がん患者の背景

質問項目は、在籍している職場や仕事の状況に関して、「身体的不安」「雇用条件」「職場の人との関係」について、それぞれ選択肢を提示し、複数回答可能とした。

8割超が何らかの不安を抱く 一番は身体への負担

図2 職場復帰に対する不安

図3 身体的負担による職場復帰への不安

図4 雇用条件による職場復帰への不安

結果は、仕事を持つ女性のうち、職場復帰に対し、「不安なし」としたのは18%で、82%が何らかの不安を訴えた。不安の内容としては、身体への負担(63.8%)、雇用条件(40.9%)、職場の人間関係(14.8%)の順に多かった(図2)。

「病期ごとに不安について確認しましたが、有意な差はありませんでした。Ⅰ期でもⅣ期でも働けるという乳がんサバイバーの特徴を示したとも言えます」

身体的不安では、「身体を使う仕事」が36%、「人手が足りない」28%、「時間的プレッシャーが高い」16%などが上位だった(図3)。

「腋窩リンパ節の郭清などによって、腕が上がらなくなるという不安を持って手術を受ける方も多いのですが、現在は昔のような拡大手術ではないため、個人差がありますが、ひどい後遺症は多くありません。勿論、重い物を運ぶなどの仕事は難しいかもしれませんが、不安の元にあるのは治療前の仕事量をそのまま続けられるかということにあります」

雇用条件では、「休暇が取りにくい」(26%)、「時間や業務の調整がしにくい」(16%)など治療継続のための通院に対する職場の理解やシステムに対する不安が上位にきた(図4)。

一方、職場の人との関係については、85%が「不安なし」とし、「相談相手がいない」(8%)などが挙がった。

「人間関係で不安の声は少なかったのですが、一概に大丈夫とは捉えていません。
今回の対象者にはいませんでしたが、上司に退職を促されるようなことを言われた患者さんもいたと聞いたこともあります。人間関係は働く意欲に影響することなので、今後も患者さんのお話を傾聴していきたいと思います」

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!