がん看護専門看護師 山田みつぎの

副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の吐き気」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年6月
更新:2018年2月

  

がん看護専門看護師の
山田みつぎさん

抗がん薬治療はひどい吐き気を伴う、と決め込んでいませんか?今は、治療前に適切な制吐薬を使うことで、吐き気そのものをかなり抑えられるようになりました。大切なのは、その人に合った制吐薬にたどりつくことです。

やまだ みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長。2006年日本看護協会がん化学療法看護認定看護師認定。11年聖隷クリストファー大学大学院博士前期課程修了(看護学修士)。同年、がん看護専門看護師認定。13年より現職。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本看護研究学会所属

「吐き気は出て当然」ではない

■表1 吐き気を起こしやすい抗がん薬

吐き気で家事ができなくなったらどうしよう――抗がん薬治療を始めるとき、女性患者さんの多くが、そう話されます。テレビドラマなどの影響で「抗がん薬治療=吐き気で何もできなくなる」と思っておられるようですが、それは少し違うのです。

今は、予防的に制吐薬を使うことで、抗がん薬投与直後の強い吐き気は、ほぼ抑えられるようになりました。私が勤務する病院では、抗がん薬投与後24時間以内の吐き気は、ほとんど見られなくなっています。

もちろん、抗がん薬の種類や量によって吐き気のリスクは変わりますが、高リスクのプラチナ化合物系の抗がん薬でさえ、24時間以内の吐き気は、だいぶ抑えられるようになりました(表1)。

そもそも吐き気は、抗がん薬が脳内の嘔吐中枢を刺激したり、消化管粘膜に影響を与えることで起きるのですが、実はいくつかのタイプがあります。

まず、抗がん薬投与後1~2時間で始まり、通常4~6時間、長くても24時間以内に治まる急性の吐き気。抗がん薬の直接的な影響で起こるもので、ほとんどの吐き気がこのタイプです。前述のとおり、抗がん薬投与前に適切な制吐薬を使うことで抑えられるので、吐き気でつらい思いをする患者さんはほとんどいなくなりました。

2つめは、投与後24時間以上経ってから始まり、数日から1週間程度続く遅延性の吐き気です。このタイプは、制吐薬で抑えられる急性と違い、原因が多岐に渡るのが特徴です。消化管の蠕動運動が弱ったために食欲低下とともに吐き気を起こしたり、ときには精神的な理由が加味されるなど、さまざまな要素が絡むため、対処も一筋縄ではいきません。制吐薬のほか、症状を見ながらステロイドや胃粘膜保護薬、精神安定薬、ときには便秘薬などもプラスして、症状緩和を目指します。

3つめが、予測性の吐き気。抗がん薬を投与すると思っただけで気持ち悪くなったり、吐いてしまう患者さんが、たびたびおられます。以前、抗がん薬を投与したときに吐き気に苦しんだことを、大脳皮質の記憶野が覚えていて、抗がん薬という原因物質が体内に入ると思っただけで、強烈なその記憶が引き出されて吐いてしまう。そういう方には、軽い精神安定薬が処方されることもありますが、気分転換も大切です。抗がん薬投与中に、他愛ないおしゃべりをしていただけで、吐き気を感じることなく治療を終えられることもあります。

つまり、抗がん薬の種類や量、患者さんの体質、加えて、不安や緊張など精神状態によって、吐き気の出方や程度も異なります。まずは、1人ひとりの症状を正しく見極め、その方に合った制吐薬を選択することが、吐き気予防には何より重要なのです。

プラチナ化合物系抗がん薬=シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等

勇気を持って医師や看護師に伝えよう

●メモをとる習慣をつけよう

それでは、吐き気を抑えるために、患者さん自身にできることは何でしょうか。それは、抗がん薬治療のたびに、どのタイミングでどんな吐き気が起こったのか、それはいつまで続いたのか、を正確に医師や看護師に伝えることです。吐き気が出たのは食前か、食事中か、食後なのか。そのタイミングや程度によって、使用する制吐薬の種類が異なります。適切な制吐薬にたどりつくために、患者さんが、ご自身の状態を、医師や看護師にしっかり自分の言葉で伝えてほしいのです。これぐらい我慢しなくちゃ……などと思わず、勇気を持って、すべて伝えてください。

ただ、抗がん薬治療は2~3週間おきなので、困ったことに、次の治療日には吐き気も落ち着いています。あんなに苦しい吐き気だったのに、悲しいかな、時間がたつと忘れてしまうのが人間です。

「吐き気はいつ出ましたか」
「翌日……いや3日後だったかな?」

これでは医師もなすすべなし。翌日と3日後では、適切な制吐薬が異なってしまうのです。ですから、メモをとる習慣をつけてください。細かくメモをとり、正確な状況変化を医師や看護師に伝えさえすれば、適切な制吐薬が処方され、次回の抗がん薬治療での吐き気は格段に緩和されます。

「なるべく薬は使いたくない」と、衣類を緩めたり食べ物を工夫することだけで吐き気を乗り越えようとする方もいますが、抗がん薬の吐き気はそんな生易しいものではありません。

大切なのは、しっかり制吐薬を使って予防すること。吐き気が起こってからではなく、抗がん薬投与前に、点滴や飲み薬で、適切な制吐薬をしっかり使うことが大切。こうすることで、吐き気はかなり抑えられます。出たとしても、ちょっとムカムカする程度、軽いつわり程度、と思っていただいてよいと思います。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート9月 掲載記事更新!