がん治療中のインフルエンザについてどう考える?

取材・文:月崎時央
(2004年2月)

  

渡辺 亨さん
腫瘍内科医、
山王メディアカルプラザ
オンコロジ-センター長
渡辺 亨さん

抗がん剤治療中の患者さんにはインフルエンザの予防接種を勧めています

――この冬、患者さんに予防接種を勧めていますか?

渡辺 今年はとくにSARS流行に対する警戒もあり、厚生労働省も医療機関に対してもインフルエンザ予防接種を勧告しています。私も抗がん剤治療を受ける患者さんには、全員に勧めています。

――抗がん剤治療をうける患者さんでは、やはりインフルエンザに罹りやすいのでしょうか。

渡辺 そうではありません。

抗がん剤治療で好中球減少の可能性がある場合には、緑膿菌などの感染症が懸念されます。抗がん剤治療を受けている患者さんの場合には、抗がん剤投与後7~10日ぐらいで好中球が普段の半分以下に減少します。このときに38度以上の熱が出たときに、インフルエンザの熱なのか、それとも好中球減少による発熱なのかを区別する必要がありますが、その際、インフルエンザの予防接種をうけた患者さんでは、インフルエンザの可能性は低いと考え、緑膿菌などをねらった抗生物質を積極的に使用することができます。

――好中球というのは何でしょう。

渡辺 好中球は白血球として、分類されます。体に侵入してきたばい菌を食べる働きを持つ、いわばパトロール隊の役割をするものです。パトロール隊が減少すると防衛する力が下がります。

――緑膿菌とは?

渡辺 人の体の中にいつもいる、普段は気弱な菌です。大腸菌などもそうです。健康なときにはいいのですが、体調が悪くなると暴れ出すことがあります。

――それでは、どのような人にインフルエンザワクチンが必要なのでしょうか。

渡辺 インフルエンザワクチンに関しては、いくつかのガイドラインがあります。
たとえば、ACIP(米国予防接種諮問機関)の勧告では、50歳以上、老健施設などの入居者や、慢性疾患で長期入院中の患者、成人および6カ月以上の小児で、慢性心臓、肺疾患の方、喘息患者、成人および6カ月以上の小児で、糖尿病、慢性腎疾患、免疫機能低下患者、小児および18歳以下の若年者で、長期間にわたりアスピリンを内服しているため、インフルエンザ罹患後にRye 症候群に罹患する可能性のある人、妊娠12週以上でインフルエンザ流行期間に妊娠中~後期を過ごす女性などは、接種対象とするべきとなっています。


ていねいな手洗い習慣は感染症予防の基本

――がんや慢性の病気を持つ患者の家族、高齢者がいる場合は?

渡辺 合併症を起こしやすい人にインフルエンザをうつす可能性のある立場の人は、インフルエンザワクチンを受けることが望ましいとされています。つまり医療従事者、老健施設などの職員、自宅に高齢者、慢性疾患患者のいる家庭の家族などは受けておきましょう。

――がん患者さんの場合、予防接種以外での冬の風邪やインフルエンザの対策は?

渡辺 薬用石けんを使用し手洗いをよくすること、口腔内の清浄化のために、うがい薬(リステリンやイソジンなど)によるうがいを。夜更かしや不規則な生活を慎んで、バランスのとれた食事をすることなど、ごく一般的な注意が重要だと思いますね。

Rye症候群=おもに小児におけるインフルエンザ、水痘等のウイルス性疾患に罹患した後の、嘔吐、意識障害、けいれん等の急性脳症の症状。アスピリンとの関連性が指摘されている
産婦人科主治医とよくご相談下さい


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