CMLが寛解に 高額治療薬服用やめたい

回答者・鈴木憲史
日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

慢性骨髄性白血病(CML)で、グリベックによる治療を行っています。1年間服用をして、寛解となり、大変うれしく思っています。ただグリベックは非常に高価な薬剤で、高額な治療費負担で生活が苦しいのは否めません。できたらこれから少し減薬するか、休薬できたらと思い、ご相談です。

寛解したからと言って、減薬や休薬はできないのでしょうか……。また、もし減薬や休薬をした場合、再発してしまうのでしょうか。再発してしまった場合、グリベックによる治療を再開することはできるのでしょうか。

(49歳 男性 鳥取県)

休薬には自己判断せず 主治医に相談を

日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長の鈴木憲史さん

これは大変多く寄せられる質問です。

基本的に、慢性骨髄性白血病の治療では、グリベックによる治療を一度始めた場合に効果があるうちはずっと服用を続けることが原則でした。しかし、分子遺伝学的完全寛解(CMR)という状態になって2年くらい経って、グリベックの服用を止めても40%くらいの方が、再発しないということが、ヨーロッパで行われたSTIM試験という結果で明らかになりました。

その後、日本でも同様の臨床試験が行われています。結果はまだ出ていませんが、今後は慢性骨髄性白血病でグリベックの治療によってある程度寛解が得らた場合に、一旦グリベックの服用を止めるという方法もなくはないのです。ただ現段階では、治療中は服用を続けるというのが原則となっています。

STIM試験の結果を受けて日本で行われている試験は、2年間の完全寛解が認められた患者さんを、グリベックを中止する無治療群と、グリベックは中止するもののインターフェロンによる治療を週3回、1年間行った後に無治療とする群に割り付けて行われています。

インターフェロンは、グリベックが登場する前に慢性骨髄性白血病の治療に使われていた薬剤で、これにより10%ほどの方が根治することもありました。

グリベックとは違う作用機序で慢性骨髄性白血病に働きます。

グリベックの投薬中止後の1年間のインターフェロン治療は、海外の試験でも高い有効性が認められているようです。

この日本での試験はまだ臨床研究の段階で、始まってから1年しか経っていませんが、今後4~5年経った段階で、試験結果を見てグリベックの休薬やインターフェロンによる治療などを患者さんが選択できるようになるのではないかと思います。

また、グリベックを一旦止めて再発してしまった場合に、もう一度グリベックによる治療を始めることで慢性骨髄性白血病をコントロールできるということも海外では言われています。

再発後のグリベックの使用、あるいはタシグナやスプリセルなどの第二選択薬の使用も可能になるでしょう。

グリベックが登場して、10年ほどになります。非常に画期的な薬剤で、慢性骨髄性白血病で入院する患者さんは少なくなりました。ただ、非常に高価な薬剤であり、ずっと飲み続けなければならないことに悩まれる患者さんは少なくありません。

しかし患者さんは、まずはしっかり寛解を目指すことが先決です。症状が落ち着いたからといって自己判断で休薬したり減量したりしないようにしてください。主治医と相談し、臨床研究を行っている施設などで医師の管理の下、検討してもらうといいと思います。

グリベック=一般名イマチニブ タシグナ=一般名ニロチニブ スプリセル=一般名ダサチニブ

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!