イマチニブを止めても OKという判断は?

回答者・鈴木憲史
日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
発行:2014年11月
更新:2015年2月

  

慢性骨髄性白血病と診断され、イマチニブの投与を受けています。しかし、保険適用を受けても高額な医療費がかかり、年金生活者としてはかなりな負担となっています。最近、イマチニブの服用を止めても治療効果が続くという情報を聞きました。私もその方法を取りたいのですが、どのようなケースで可能なのか、どれくらい効果が続くのか、教えて下さい。

(66歳 男性 島根県)

止めた後 インターフェロン投与も

日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長の鈴木憲史さん

イマチニブは服用し続けなければならない薬として処方されてきました。高価な分子標的薬で保険適用を受けても患者さんが負担する治療費は月に数万円に及ぶので、年金生活者には大変だと思います。ジェネリック医薬品(後発品)も出ていますが、ずっと服用し続けるのは金銭面以外でも相当な負担を強いられます。

我々はイマチニブの投与を中止する臨床試験を行っています。イマチニブを中止して数年たちますが、それでも良い状態を維持している方が半数ほどいます。急に適当に止めるのではなく、分子遺伝学的完全寛解(CMR)を達成した後、最長2年間の投薬後にCMRが続いたら中止するという医療的な見地に基づいた治療法です。

私たちはこれを応用した、インターフェロン(ウイルスの増殖を阻止する物質)の注射を週3回、1年間続けてその後に止めるという方法も有効だと思います。実施してから3、4年が経ちますが、半数近くは再発していません。

相談者がイマチニブの中止を望むのであれば、臨床研究として受ける必要があると思います。服薬しなくても、医療機関がきちっとフォローしてくれる体制の中で行うべきです。

進行中の研究なので、効果が何年続くのかは明らかではありません。3年くらいなら分かりますが、5年、10年となるとまだ分かりません。しかし、再発したとしても、その時点でニロチニブやダサチニブを使えばほとんどが寛解に入ります。それでもうまくいかなければ、同種骨髄移植という道もあります。

イマチニブは画期的な薬剤ですが、一生薬を服用するのは不安です。それを思うと結婚できないという人もいるくらいです。理解を示し、研究をしている医師を探して相談することをお勧めします。

一番よくないのは、患者判断で、勝手にイマチニブの服用を止めることです。必ず医師の指導下で行いましょう。

イマチニブ=商品名グリベック ニロチニブ=商品名タシグナ ダサチニブ=商品名スプリセル

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