松果体実質腫瘍。開窓術でも症状がとれない
35歳の妻は、松果体にのう胞と腫瘍があり水頭症の症状が出たため、2週間前に第三脳室体部開窓術を受けました。画像では水頭症は改善されましたが、頭痛がいまだに残っています。生検結果では、中間型松果体実質腫瘍(1.5cm)とのことで、開頭手術を勧められています。とても難しい部位らしいのですが、開頭手術をすべきなのでしょうか。
(38歳 男性 埼玉県)
A 開頭手術で腫瘍を取って 髄液による播種を予防すべき
福田 直さん
中間型松果体実質腫瘍は様々な種類があり、治療法も未だ確立はされていませんが、患者さんの年齢が20歳以上で、腫瘍の大きさが25㎜未満の場合は、比較的予後がいいとされています。ご相談については病理診断の詳細は不明なので、一般的な中間型松果体実質腫瘍の治療として答えます。
中間型松果体腫瘍は浸潤性があり、一般的には、手術でできるだけ腫瘍を摘出した上で、局所もしくは脳脊髄への放射線治療と、症例によっては化学療法も併用することとなっています。
松果体は脳の中心部に存在しており、周囲には重要な機能をつかさどる脳があるため、脳外科手術の中でも困難なものの1つです。松果体腫瘍の手術に特記した後遺症発生率の報告はありませんが、複視、視野障害、記憶障害等の高次脳機能障害などが出ることもあり、周囲の重要な静脈を損傷するとさらに重篤な状態になる場合もあります。しかし、25㎜未満の腫瘍の予後がいいとの報告でもわかるように、手術によって安全にかつ腫瘍をいかに多く摘出するか(腫瘍摘出率)が予後には最も重要です。
なぜなら、腫瘍の悪性度が比較的高くて、手術による残存が多かった場合、脳脊髄を循環している髄液を介して播種することがあり、その場合の治療は困難を極めるからです。脳腫瘍の手術数が多く、松果体腫瘍の治療経験も豊富な脳外科医がいる施設で手術を受けることが重要です。
手術をせずに、定位放射線で治療することも可能ですが、松果体は定位放射線治療後に脳浮腫の出現率が比較的高く、症状も重篤となりがちです。また定位放射線治療では、局所での腫瘍の発育を制御できても、髄液を介した播種を抑えられないことが多いです。脳への放射線治療は通常複数回行うべきではなく、播種した際の治療はさらに困難になります。そのため、高齢者で手術ができない場合などを除いては、手術治療を選択したほうがいいと考えます。