グレード2の乏突起膠腫。手術後、経過観察でよいか

回答者・田部井勇助
日本赤十字社医療センター脳神経外科専門医
発行:2015年8月
更新:2015年11月

  

主人(62歳)が神経膠腫と診断されました。グレード2の乏突起膠腫で、手術で部分摘出したのですが、主治医の説明によると、悪性度が低いので今後は放射線治療も化学療法も何もせずに経過観察すると言われています。まだ腫瘍が取り切っていない状態ですが、このまま経過観察でよいのでしょうか。

(59歳 女性 秋田県)

放射線治療と化学療法の併用を勧める

日本赤十字社医療センターの
田部井勇助さん

グレード2の神経膠腫に対しては、2005年に、手術の後、経過観察を行い再発した場合に放射線治療を行う群と、手術後、早期に放射線治療を行う群とを比較する臨床試験の結果が報告されています。それによると、早期に放射線治療を行ったほうが再発するまでの期間は若干長かったのですが、予後に関しては変わらないという結果でした。ご相談者も、この報告に基づいた治療方針だと考えられます。

ただ昨年(2014年)のASCOにおいて、放射線治療単独よりも、放射線治療と化学療法(PCV療法)を組み合わせたほうが、統計学的な有意差をもって治療成績がよいという結果が出ています。

グレード2の乏突起膠腫に関しては、術後経過観察、化学療法単独、放射線治療単独、放射線治療+化学療法(テモダールあるいはPCV療法)とガイドラインでも治療方針が様々です(図)。年齢(40歳以上)、部分摘出という状況を考慮すると、ご相談者の場合、放射線治療(通常は50~54Gy)+化学療法を早期に行うことが勧められます。

■NCCNガイドライン2015 ver1 成人低悪性度浸潤性テント上星細胞腫/
乏突起膠腫(毛様性星細胞腫WHOグレード1を除く)

TMZ=テモダール

化学療法に関しては、副作用が強いPCV療法よりも、実臨床では忍容性の高いテモダールを用いることが一般的です。

ASCO=米国臨床腫瘍学会 PCV療法=塩酸プロカルバジン(一般名プロカルバジン)+ロムスチン(日本未承認)+オンコビン(一般名ビンクリスチン)の併用療法 テモダール=一般名テモゾロミド

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