直腸がんの肝転移。肝機能低下で転移の手術が困難に

回答者・大矢雅敏
獨協医科大学越谷病院外科教授
発行:2016年12月
更新:2016年12月

  

昨年(2015年)4月、父(72歳)に直腸がんが見つかり、同時に肝臓への転移も見つかりました。直腸の病巣や肝臓に転移したがんの縮小・切除を目指し、抗がん薬治療を行ってきましたが、薬による影響で肝機能が低下して、手術が困難になってしまいました。現時点で、直腸のがんのみ手術することはできるのでしょうか。肝転移への手術ができなければ、直腸のがんの手術を行っても、体への負担が大きくなるだけで、あまり意味はないのでしょうか。

(48歳 女性 神奈川県)

まずは抗がん薬治療を止めて、肝機能が回復するかを見極める

獨協医科大学越谷病院外科教授の
大矢雅敏さん

肝臓の機能低下が、本当に抗がん薬の副作用の影響であれば、休薬することで肝機能の回復が十分に期待でき、別の薬剤による治療や手術も可能になってきます。

ただ、抗がん薬の影響ではなく、病状が進行して肝機能が低下している場合、次の薬物療法を行うことは難しくなります。肝機能が回復しなければ、基本的には何も治療をせず、腸閉塞症状が出るなど直腸がんの原発病巣が進行した段階で、対症療法的に人工肛門造設を検討するといった方法しかありません。

その上で、肝機能が回復したらという条件付きですが、肝転移病巣を切除できないとしても、直腸の原発巣は技術的に困難でなければ切除したほうが私は良いと考えます。外科医によって考え方は異なりますが、原発巣を切除することで生存期間が延長するという報告もあり、出血や原発病巣の進展による局所の痛みを予防でき、腫瘍の部位にもよりますが、その後の治療を人工肛門なしで受けることができる場合があるからです。

ただし、肝臓への転移が急いで治療を必要とする差し迫った状況の場合には、原発巣の手術は避けたほうがよいでしょう。吻合(ふんごう)を伴う切除手術を行った場合、原則として、術後最低4週間は化学療法の導入はできないためです。

今後の治療を行う上で、肝機能が回復するかどうかは、重要なポイントです。まずは、現在の抗がん薬治療をいったん止めて、肝機能が回復してくるかを見極めることが必要です。

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