ステージⅠの大腸がんが悪化。完治する治療法はないか
2014年8月に大腸内視鏡検査で大腸がんが見つかる。手術1週間後、穿孔により1週間絶食。その後、経過観察(抗がん薬投与はなし)。2015年7月にCT検査で、肝転移(7カ所、最大4.5㎝)が見つかり、8月から12月まで*FOLFOX療法を受ける。
2016年1月転院。肝臓手術。残肝臓が25%程度しか残らず、残った肝臓を大きくする手術(経皮経肝門脈塞栓術)を受ける。2月転移性肝がんの手術を受ける(右側大半)。術後、肝機能の回復が遅く抗がん薬投与は行わず。8月肝臓に1個再発、左右の肺に転移が見つかる。10月約1㎝大の肛門管がんが見つかり、11月手術。12月より2017年8月まで抗がん薬投与(IRIS)。10月再発肝がん手術。11月左肺転移の手術。2018年1月右肺転移の手術。術後の抗がん薬投与は行われず。7月両肺に最大7㎜、約10個の腫瘍が見つかる。肝臓の再発はなし。ただ約1㎝大の肛門管がん及び直腸がん再発、加えて側方節への転移が見つかり、8月より化学療法開始(IRIS)。
ステージⅠの大腸がんがここまで悪くなってしまい残念でなりません。完治する治療法はないでしょうか。
肛門管がんの治療は、抗がん薬投与を行いながら放射線治療は出来ないものでしょうか。また、直腸がん(骨盤内)の再発は重粒子線治療もあるように聞いています。
側方リンパ節及び肺転移についても何か良い治療法はないでしょうか。
腫瘍マーカーのCEAは現在23まで上がってきています。抗がん薬治療は必要だと思いますが、全身と個々のがん治療は出来ないものでしょうか。
(71歳 男性 大阪府)
A 治療がうまくいけば、年単位での生存が可能に
外科教授の大矢雅俊さん
ステージⅠの大腸がんがここまで悪くなってしまい残念とのことですが、ステージ0なら100%治癒するのですが、ステージⅠの治癒率は100%ではなく、5年生存率は90%ぐらいなのです。ですから残念ながらこの患者さんのような再発は起こりうるのです。
また、完治する治療法はないか、とのご相談ですが正直難しいと言わざるを得ません。
「抗がん薬治療を行いながら放射線治療は出来ないか」、とのご質問もありますが、放射線治療は局所治療で手術できない場合の局所コントロールがメインで直腸以外に肺や肝臓などに転移がある状態では放射線治療を行って効果が出ることはないです。
もちろん肛門に痛みが出てきた場合は対症療法としての放射線治療もあるでしょうが、とくに症状がない場合は、局所治療ではなく全身治療の薬物療法が標準治療です。
この患者さんの場合もそうですが、遺伝子検査をされていないようなので、RAS遺伝子を調べて野生型だったらEGFR抗体にアービタックス(一般名セツキシマブ)かベクティビックス(一般名パニツムマブ)を投与してみる選択肢もあるでしょう。
また、MSI検査をして適応であればキイトルーダ(一般名ペムブロリズマム)を使う方法はあるでしょうが、どちらにしても根治になることは考えにくいですが、治療がうまくいけば年単位で生存が可能になることも考えられます。
*FOLFOX療法=5-FU(一般名フルオロウラシル)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)+アイソボリン(一般名レボホリナート)