術後補助療法として DAV-Feron療法を受けるべきか?

回答者・高橋 聡
国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科医師
発行:2014年8月
更新:2014年11月

  

父(78歳)がメラノーマ(悪性黒色腫)の手術を受け、生検の結果、リンパ節転移をしていることがわかり、リンパ節郭清をしました。主治医からは、術後に補助化学療法としてDAV-Feron療法を受けることも考えられるが、父の体力なども考えると、あまり勧められないと言われました。この治療は、やはりきつい治療法になるのでしょうか。家族としては、DAV-Feron療法を受けてもらいたい気持ちもあります。

(44歳 女性 宮崎県)

無理に受ける必要はない

国立がん研究センター中央病院の
高橋 聡さん

DAV-Feron療法は日本でのみ慣例的に行われていましたが、その有効性はエビデンス(科学的根拠)レベルの高いものではなく、日本での最近の調査でもその有効性は証明されませんでした。もともとメラノーマは抗がん薬が効きにくく、海外では抗がん薬を補助療法に用いる手法は80年代に既に否定されています。ですから、結論から申し上げると、主治医の言う通り無理にDAV-Feron療法を受ける必要はなく、むしろお勧めしません。

DAV-Feron療法自体は悪心・嘔吐などを予防する薬剤を併用して行うため、個人差はありますが、自覚する副作用は比較的軽い傾向にあります。しかし、自覚できない骨髄抑制をはじめとした様々な副作用があるため、とくに高齢者には勧めにくく、確率はごく低いですが2次発がんの危険性もあります。したがって、選択肢は2つ考えられます。

とくに術後の治療は行わず、慎重な経過観察のみとする インターフェロンβのみの治療を行う――のいずれかと思います。

日本で行っているインターフェロンβのみの治療とは、低用量のインターフェロンβを、病変切除部周囲の皮膚に注射するという方法が用いられています。インターフェロンβは注射された部位の皮膚からリンパ管内へ移行し、所属リンパ節領域までリンパ流とともに流れます。ですので、この治療はリンパ管内に残存している可能性のあるがん細胞を消失させる目的で行われます。副作用は少なく、安全性は高いと言えますが、この治療法も大規模な臨床試験は行われておらず、有効性が証明されているとは言い難いのが現状です。

この方のようにリンパ節転移がある場合、リンパ節郭清を行ったとしても、リンパ管内にがんが残っている可能性があり、術後にインターフェロンβの治療を受けることを考慮してもよいかと思います。以上の点を踏まえた上で、術後の治療を受けるかどうか、主治医とよくご相談されることをお勧めします。なお現在、メラノーマに効果のある新しい薬剤の開発が進んできており、日本でも様々な臨床試験が行われています。近い将来日本においてもより有効な薬剤が使用できるようになると思われ、再発リスクの高い患者さんに対しても術後補助療法が確立することが期待されています。

DAV-Feron療法=ダカルバジン(一般名も同様)、ニドラン(一般名ニムスチン)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、インターフェロンβの4剤併用療法

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