血管肉腫と診断。治療方針を確認したい

回答者・吉野公二
がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長
発行:2016年1月
更新:2016年4月

  

数年前から、主人(72歳)の頭と額の境目あたりにシミができていたのですが、それが段々と盛り上がってきたため心配になり病院で診てもらったところ、血管肉腫と診断されました。今後は「放射線治療+化学療法」を行う方針だと主治医から説明を受けました。

手術による治療法もあるとのことですが、主治医から示された治療方針で間違いないでしょうか。血管肉腫という病気自体が希で、標準的な治療が確立されていないと聞いて不安です。

(69歳 女性 秋田県)

治療成績からすると「放射線治療+化学療法」を勧める

がん・感染症センター都立駒込病院
皮膚腫瘍科医長の吉野公二さん

以前は手術で病変を切除し、切除した部位に放射線照射を行うのが標準的でしたが、その場合の5年生存率は10%と、治療成績は芳しくありませんでした。その後、治療成績を改善する目的で、放射線照射と同時にタキソールによる抗がん薬投与を組み合わせた治療を行ったところ、局所制御率は90%、5年生存率も60%と、大きく改善しています。

このため、治療成績という観点からすると、「放射線治療+化学療法」による治療が良いと思います。

ただ高齢の場合、体の状態にもよりますが、化学療法に耐えられない可能性があります。しかも、「放射線治療+化学療法」の治療が終わった後に、引き続きタキソールを定期的に投与する維持療法を行うことが勧められます。これは、維持療法を行った人たちと、行わなかった人たちとを比べると、維持療法を行ったほうが、明らかに治療成績が良く、生存期間に差が出ているからです。従って、患者さんは「放射線治療+化学療法」と、その後の「化学療法による維持療法」の2つの山を乗り越える必要があります。

ただ、高齢の患者さんの中には、抗がん薬による治療を行いたくないという人もいるかもしれません。その場合には、局所の治療で、手術あるいは放射線治療を単独で行うという選択肢もあるかと思います。

ただし、これはあくまでも局所に対する治療となり、病勢自体のコントロールにはなりませんので、その辺りをきちんと理解した上で治療を受けることが重要です。

化学療法は、基本的には週1回投与を3週連続して行い、1週休むというサイクルで行います。ただし、患者さんの状態や体調などを見て、場合によっては2週連続投与で1週休み、もしくは1週投与して2週休みという変則的な投与法で行う場合もあります。

また、現時点でどの位の期間、維持療法を続けたら良いのかはわかっていません。

もちろん、抗がん薬の副作用がつらくなり、途中で化学療法を止めざるを得ない場合もありますが、仮に途中で化学療法を止めてしまって内臓に転移した場合、抗がん薬は効きづらくなります。このため、可能な限り、タキソールによる治療を続けることが大切です。

従って、主治医が言うように、治療成績という意味では「放射線治療+化学療法」による治療を行うことをお勧めします。

もしそれが難しければ、あくまでも局所の治療だということを理解した上で、手術あるいは放射線単独による治療もあり得るでしょう。

もし局所治療を選択するのであれば、手術よりも放射線治療のほうが、患者さんの体の負担は少ないかと思います。

タキソール=一般名パクリタキセル

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