子宮頸部にできた悪性黒色腫で脳転移。放射線治療が終われば治るのか

回答者・吉野公二
がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科医長
発行:2017年1月
更新:2017年1月

  

私の姉(45歳)が2年前に子宮頸部にがんができて、手術をしました。がんは悪性黒色種という病名で、子宮全摘と卵巣1個と半分を摘出しました。その後、昨年(2016年)1月に脳転移がわかり、ガンマナイフ治療をしました。今まで5回ガンマナイフ治療をしましたが、転移数は一向に減らず増えてしまい、9月から全脳照射をしています。全脳照射の副作用なのか足が全く動かなくなり、手も力が入らなくなってきています。放射線治療が終われば治るのでしょうか? 先生はホスピスを勧めてきています。年内生きられるかどうかとも宣告されました。本人は退院できると思っています。

(41歳 女性 山梨県)

脳転移病巣が増悪した場合、放射線治療が終わっても治癒は難しい

がん・感染症センター都立駒込病院
皮膚腫瘍科医長の吉野公二さん

悪性黒色腫(以下、メラノーマと記す)には、発生した部位によって大きく2つに分かれます。1つが皮膚原発タイプ、もう1つが粘膜原発タイプで、この方は子宮頸部にできたメラノーマということで、粘膜原発タイプになります。粘膜原発タイプの場合、病状が進行してから見つかるケースが多く、恐らくですがご相談者も、不正性器出血で発見されるなど、ある程度病気が進行した状態で見つかったことが予想されます。

現在、手足が動かなくなってきており、麻痺(まひ)が起きているようですが、これは全脳照射による副作用ではなく、脳転移病巣による神経症状で手足に力が入らなくなっている可能性が高いです。もしそうであるならば、放射線治療が終わったとしても、病気が治癒することは難しいかもしれません。

脳転移に対する治療としては、サイバーナイフやガンマナイフによる定位放射線治療が基本になるかと思いますが、他にも免疫チェックポイント阻害薬による治療も選択肢となる可能性があります。現在、メラノーマに対しては、BRAF遺伝子陽性タイプに効果を示すゼルボラフやタフィンラーとメキニストの併用療法、免疫チェックポイント阻害薬であるオプジーボなどの治療薬が存在しますが、ご相談者のような粘膜原発タイプのメラノーマでは、BRAF遺伝子陰性タイプがほとんどであり、恐らくゼルボラフ等は使用できないと思います。また、海外の臨床試験結果から、免疫チェックポイント阻害薬とBRAF阻害薬とを比較した場合、脳転移に関しては、免疫チェックポイント阻害薬のほうがより効果があるという結果が出ており、治療選択肢としては、免疫チェックポイント阻害薬があげられます。

免疫チェックポイント阻害薬は、放射線治療と併用することで効果が現れるという臨床試験結果が出ていますが、ただ詳細な解析を行ったところ、脳転移症状を伴う場合と伴わない場合で、その後の予後(よご)が異なることが明らかになっています。この方は、すでに脳転移による神経症状が出ている状態であり、症状が出ていない人と比べると、治療効果は現れにくいと考えられます。また、免疫チェックポイント阻害薬は、効果が現れるまで2~3カ月の時間を要しますが、それまで病勢を抑えられるかどうかという点も気になります。恐らく、担当の医師も、免疫チェックポイント阻害薬が使えないわけではないが、残された時間を有意義に使うという意味で、緩和医療を提案されたのだと思います。その場合、例えば脳転移が増悪し、麻痺や嘔気(おうき)の症状があればステロイドを使用するなどの対処療法を行い、いかにQOL(生活の質)を維持して、普段の生活を送るかということに重点を置くことになります。

ゼルボラフ=一般名ベムラフェニブ タフィンラー=一般名ダブラフェニブ メキニスト=一般名トラメチニブ
オプジーボ=一般名ニボルマブ

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