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わたしの町の在宅クリニック 13 川崎高津診療所

病院と常に連携し、臨機応変な対応で患者さんをサポート

取材・文●「がんサポート」編集部
(2015年5月)

「自分が身内だったらという視点を大事にしています」と話す川崎高津診療所院長の松井英男さん
川崎高津診療所

〒213-0001 神奈川県川崎市高津区溝口4-1-3 T・Iビルディング4F
TEL:044-829-0103 FAX:044-829-0104
URL:kt-clinic.jp/


「在宅に移るということは病院とのお別れではない。主治医は何人いてもいいのです」。こう話すのは、神奈川県川崎市にある川崎高津診療所の院長・松井英男さんだ。病院と常に連携し、患者さんや家族の希望、患者さんの身体の状態から判断して、臨機応変な対応でサポートしてくれる。

大学病院の外科医からの転身

東急田園都市線・高津駅近くにある川崎高津診療所。外来を行いつつ、在宅医療も行っている(上)松井さんの著書『人生をわが家で終える 在宅医療の現場から』(日本経済新聞出版社)(右)

長年、大学病院で外科医として患者さんの治療にあたっていた松井さんが、川崎高津診療所を開設したのは2010年。「大学病院の消化器外科医」から「診療所の在宅医」という180度の転身だった。そこには、患者さんをよりトータルな視点で診たいという思いがあった。

「外科の治療は、治療全体の一部です。私自身、外科医療に携わる中で、人間全体を俯瞰して見る必要性を強く感じるようになっていました。また、高齢化社会を迎える中で、今後がん患者さんは確実に増えていきます。私も外科だったので、多くのがん患者さんを診てきましたが、手術ができて病院から家に帰っても、診てくれるところがないといった場面によく遭遇しました。病院での治療はもちろん必要ですが、家に帰ってQOL(生活の質)の高い生活を送れるようにサポートできたらと思い、診療所を開設しました」

訪問するエリアは診療所から約5㎞圏内が目安で、高津区、宮前区、中原区と世田谷区南部がメイン。1日2人の医師で訪問し、1日に診る患者さんは20人弱だ。

「現在、患者さんは全体で約200人、そのうちがん患者さんは10人ほどです」

主治医は何人いてもいい

松井さんは在宅に移る患者さんに、いつも言っていることがある。それは、「主治医は何人いてもいい」ということだ。

「在宅に移るというと、『病院に見捨てられた』と思う人も多いですが、うちでは病院との連携は継続するようにしています。患者さんには『病院から家に帰ってくることが病院とのお別れではない。ずっと繋がっていて、病院にも主治医がいて、こちらにも主治医がいる。主治医は何人いてもいいのですよ』と伝えています」

在宅看取り率も50%ほどで、在宅での看取りにこだわっているわけではない。

「もし状態が落ち着いているのなら、家で最期まで診ることもできますし、状態が悪ければ病院へというように、とくに在宅看取りにはこだわってはいません」

在宅医療に固執するあまり、患者さんやその家族が不安に陥ったり、かえってQOLが損なわれるようでは本末転倒になってしまう。とくに、患者さんが1人暮らしの場合には、介護にも限界があるからだ。

がんの救急医療にもしっかり対応

図 入院を併用することの意義
出所:KTCデータ
川崎高津診療所では、たとえ終末期だとしても、救急医療が必要であれば、入院などを併用する。そのことでQOLが維持され、「生存期間中央値)が約3週間延びる可能性があると考えています」(松井さん)

「もう最期だから何もしないのではなく、治療は尽くす」治療を行う上での松井さんの考え方だ。

70代の肝がんの終末期だった女性は、ある日腹痛が強まり、血圧が低下してショック状態に。緊急入院して診断したところ、肝臓が破裂していることが判明した。その患者さんは病院で入院治療を施すことで、再び家に戻ってくることができたという。

「末期だから何もしないのではなく、救急医療を併用することで症状を緩和し、いい状態にしてあげることが大事です。当院のデータでは、入院など救急医療を併用することで、生存期間が約3週間延びる可能性があると考えています」(図)

治療を尽くすことでQOLを維持したままより長く生活することも十分考えられるのだ。最期だからといって、医師が関わる限り「治療を尽くさないことは、医療放棄にしかならない」と松井さんは強調する。

ITを利用した在宅医療の可能性も検討

現在、松井さんはITを利用した在宅医療の研究にも取り組んでいる。経済産業省や厚生労働省の研究班に参加し、病診連携や遠隔医療での可能性を検討している。「まだ研究段階であり、検討課題も多い」(松井さん)が、実用化すれば、患者さんにとっても医療者にとっても、より行いやすい在宅医療に繋がると期待される。

「家に帰ってきたら何が何でも最後まで家で」という固執した考えではなく、患者さんや家族の意思、身体の状態を見て、病院との連携を取りつつ臨機応変な対応をしてくれる川崎高津診療所。「自分が身内だったらという視点が大事」と話す松井さんの言葉通り、患者側の気持ちを第1に考えたケアが施されている。

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