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ガンマナイフや手術をも凌ぐ放射線治療
頭頸部がん等、放射線の可能性を広げるノバリスの成果

監修:大西寛明 浅ノ川総合病院脳神経外科部長
取材・文:菊池憲一
発行:2005年10月
更新:2013年4月

  

大西寛明さん
浅ノ川総合病院
脳神経外科部長の
大西寛明さん

昨年9月、石川県金沢市の浅ノ川総合病院はノバリスの日本第1号機を導入した。

ノバリスは、ドイツのブレインラボ社が、定位放射線治療用に開発した高精度・多機能のX線発生装置のリニアックである。IMRT(強度変調放射線治療)の機能のほか、いろいろな方向から照射する複数のビームを瞬時に腫瘍の形に一致させ、正常組織をさけて照射するなどの機能も備わっている。

同病院では既存のガンマナイフと合わせて「定位放射線外科センター」を開設し、現在、毎日約20人が治療を受けている。

ガンマナイフが苦手とするがんにも効果を発揮

ノバリス
浅ノ川総合病院に導入されている定位放射線治療器「ノバリス」

同病院では頭蓋内の腫瘍に対するガンマナイフ治療では年間300例、通算2200例以上の実績を有する。ノバリスは、UCLA、クリーブランド・クリニックなどの世界の主要な医療センターで約70台が稼働中だ。IMRTのような複雑な治療計画を容易に作成することが可能で、既存のリニアックによる定位放射線治療に比べて格段に治療精度、治療品質が高く、治療時間も短い。頭部の固定は患者の頭の形に合わせたマスクで行うため、苦痛を伴わずに治療が可能である。

そこで、同病院脳神経外科部長の大西寛明さん(金沢大学脳神経外科臨床助教授)は「直径3センチ以下の頭蓋内の腫瘍にはガンマナイフを、直径3センチを超える腫瘍にはノバリスを用いる」という治療方針を立てた。

「ノバリスでは大きな腫瘍や視神経に接する腫瘍でも分割照射を行うことにより、有効かつ安全に治療ができます。
また、ガンマナイフが苦手な細長い形や弧状の腫瘍でもIMRTを用いて、周辺の脳神経などへの被曝を回避しながら照射できます。さらに、脳腫瘍以外でも、副鼻腔や頸椎・頸髄などの頭頸部腫瘍も治療可能なのです」と大西さんは言う。

綿密な精度検証で安全を確保。痛みは全く感じない

Aさん(49歳、女性)は、同病院のノバリス導入によって、命の危機を乗り越えた患者の1人である。健康には自信を持っていた。勤務先の会社の職場検診ではいつも異常なし。以前からしばしば頭痛に見舞われたが、気にならなかった。友人の勧めで、一昨年、初めて脳ドックを受診。その検査で「精密検査が必要です」と言われ、昨年4月、浅ノ川総合病院を訪ねた。

脳の精密検査の結果、頭蓋底部に海綿状血管腫が見つかった。直径5~6センチ。視神経に接していた。ガンマナイフでは治療のできない大きさだった。開頭手術も大量の出血が予想され、危険が高い。そこで、大西さんは、導入予定のノバリスによる治療を説明した。Aさんは同意し、昨年10月、入院した。外来通院での治療も可能だったが、入院治療を選んだ。

入院当日、Aさんは自分の顔に合わせたマスクを作製した。治療の際、頭部の位置がずれないように固定し、正確な位置決めに用いるものだ。網状のプラスチックシートを熱で軟らかくしてから顔にかぶせて、冷やすだけ。20分ほどで作れた。

また、医師が作成した治療計画を医学物理士の太郎田融さんが精度検証を行った。ノバリスでフィルムに治療計画通りの照射を行い、かつ線量計で実測する。照射誤差が3パーセント以下におさまっていることを確認する。この精度検証は3時間ほど。これで治療前の準備作業は終わりだ。

金曜日に入院、月曜日から週5日、1回3グレイずつ10回、合計30グレイの照射が始まった。Aさんは放射線治療室でマスクを顔にかぶせてベッドに横になった。ベッドと治療装置が回転し、6方向から病変に放射線を照射する。照射時間は1回、20分ほど。

「ノバリスは照射ビームの形を瞬時に変化させることによって、正常組織への障害を減らすように工夫されています。さらにIMRTの併用で、複雑な形の病変でも脳幹、眼球、視神経などを避けながら照射できます。Aさんの場合も視神経を傷つけないで、血管腫だけを照射することができました」(大西さん)

Aさんは退院後、1~3カ月に1回ペースで外来通院。今年4月、11カ月ぶりに職場復帰もできた。

「治療中は何にも感じませんでしたが、治療前と治療後の自分の脳の画像を見たときは、ほんとに感動しました。治療後、明らかに血管腫が小さくなっていたのです。ガンマナイフも手術も不可能だった私が救われたのはノバリスのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです」とAさん。

現在、同病院ではガンマナイフでは治療困難と判断し、ノバリスで治療を行った頭蓋内の腫瘍は10カ月で64例、ガンマナイフ治療症例数の25パーセントほどである。

[ガンマナイフとノバリスの違い]
ガンマナイフとノバリスの違い

(大西医師作成)

体幹部へも正確な照射が可能

実は、ノバリスは体幹部のがんの治療にも有効である。同病院では昨年11月から前立腺がんや肺がん、脊椎へのがん転移などにノバリスを使い始めた。体幹部の治療を担当する金沢大学放射線部助教授の高仲強さんはこう語る。

「一般的に体幹部への照射は身体の位置決めなどが難しく、正確な治療が困難です。しかし、ノバリスはやっかいな患者さんの体の位置決めを自動的に行ってくれます。そのため、治療計画と実照射間の誤差は2~3ミリ以内でおさまります。照射の精度が高いため、正常組織の被曝が少なく、放射線による障害が少ないように思います」

昨年9月から今年7月まで、同病院でのノバリスによる治療数は161例。頭頸部は90例。体幹部は71例で、前立腺がん23例、肺がん19例など。スタッフはその治療内容に好感触を得ている。

ノバリスは浅ノ川総合病院のほか、国内では奈良県立医科大学付属病院、熊本放射線外科、新潟県立がんセンター新潟病院などに導入されている

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