がんと食事5
肝・胆・膵がんの食事 退院後も栄養指導を利用し、食事で上手に体のサポートを
肝・胆(道)・膵がんの治療後の食事では、消化管への侵襲や残存機能の程度、合併症によって食事の内容は異なる。膵がんの治療後は進んで栄養士に相談するようにしよう。
肝がんと食事
肝臓の仕組みと働き
肝臓には小腸で吸収された栄養を含む静脈血が門脈を通って大量に流れ込んでいる。また肝臓は人体の「化学工場」ともいわれ、栄養の貯蔵や代謝、体に必要なタンパク質の合成、老廃物の排泄、薬物やアルコールの解毒などその機能(働き)は多岐にわたる。それだけに肝臓が障害されると体への影響は大きい。その一方で、肝臓は予備能力、再生能力にも優れた臓器でもある(図1)。
「肝がん治療後の食事については、肝硬変などの肝障害が大きくなければ栄養的代謝の影響は出にくいです。開腹手術をした場合、消化管などの臓器に影響が出ることもありますが、一般的に術後3~4日目から普通食が摂れるようになります」
と国立がん研究センター中央病院栄養管理室の高嶋浩子さんは話す。
●肝障害を伴う場合の食事
「肝がん患者さんの場合、肝硬変などの肝障害を伴っていることが少なくありません。そのような場合には、肝がんの治療後も肝機能の障害を考慮した栄養面からのサポートが欠かせません」
肝硬変を伴う場合の栄養摂取の目安として、表2を参考にしよう。
●肝硬変で制限される食事
肝硬変では、アンモニアの代謝が低下しやすくなる。その結果、高アンモニア血症を引き起こしやすい。血中のアンモニアが高くなると、昼夜逆転、判断力の低下など脳の働きが低下する肝性脳症が起こる。進行すると錯乱状態や混迷に陥り、意識がなくなることもある。
アンモニアの蓄積を防ぐためには、便秘に気をつけ、タンパク質の過剰摂取を避けた食事を摂る。
・便秘予防
便秘はアンモニアの蓄積を促す原因になる。水溶性食物繊維の多い野菜や果物を摂ることを心がけたい。乳酸菌飲料も取り入れ、腸内環境を整える。
・タンパク質の制限
タンパク質の過剰摂取にも気をつける。肝臓のアンモニア解毒機能低下を改善し、肝性脳症を抑制するために、必須アミノ酸を含む栄養剤BCAA(分岐鎖アミノ酸)製剤が補われることがある。この場合は、その分、食事から摂るタンパク質を制限する。
「タンパク質の制限が必要な場合もありますが、毎日の食事では過度にタンパク質の摂取を制限しすぎず、バランスの良い食事を心がけるようにしてください」と高嶋さんは話す。
・糖代謝が低下しているとき
肝機能の低下により肝臓から糖質が供給されず、糖質が不足することがある。その場合、糖質の代わりに脂肪がエネルギー源として使われ、体が飢餓状態に陥る。飢餓状態は、健康な人の3日間の絶食に相当するといわれている。
そういった場合は早朝の飢餓状態を避けるため、就寝前などに夜食(間食)を摂って夜間の糖質不足を補うLES(Late Evening Snack)といわれる食事方法が指導されている。
・塩分の摂取方法
浮腫や腹水がみられるときは、塩分摂取量を1日5~7gを目安に制限する。
・鉄分のとり方
肝臓には赤血球を蓄積する働きがあり、そのため代謝の衰えた肝臓には鉄分の摂りすぎは負担になる場合がある。「レバーや緑黄色野菜等、鉄分を多く含む食材を中心に摂取していたり、サプリメントを内服している方は、過剰摂取に注意が必要です。サプリメントについては、医師の指示に沿って行うことが大切です」
ビタミン、ミネラルは代謝の補助役なので、果物、野菜、海藻類は摂るようにしよう。
胆道がんと食事
胆道の仕組みと働き
胆道は肝臓と十二指腸をつなぐ管状の臓器(胆管と呼ばれる)で、肝臓で作られた胆汁を胆道の途中にある袋状の胆のうに貯留し、濃縮して十二指腸乳頭部を経て、十二指腸に少しずつ排出している。胆汁は、脂肪の消化や吸収を促進する。
胆道がんは胆道に発生するがんであり、胆管がん、胆のうがん、乳頭部がんに分類されます。
胆(のう)がん術後の食事
胆のうは肝臓で作った胆汁を溜めておく器官なので、切除しても消化機能への影響は少ない。ただし胆汁は、脂肪の消化に関わるので、胆のう切除後は、脂質の過剰摂取に気をつける。揚げ物や炒め物などの食事や外食が多い人は注意しよう。脂肪を過剰に摂取すると、消化不良による下痢症状が起こりやすくなる。
「ただし、野菜炒めやお魚を焼くときに油を少し使う程度ならかまわないので、極端な制限をする必要はありません。
どのがん種であっても共通することですが、基本は、バランスのよい食事(図3)を摂ることが重要です」と高嶋さんは強調する。
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