「使命」を持った患者会をめざして
生きるということを改めて感じ、命をどう活かしていくかを考える場に
代表 和田真由美さん
(石川県)
〒929-0125 石川県能美市道林町ト29
TEL&FAX:0761-55-2217
※ 連絡は夕方以降
「誰かに支えられ 誰かを支えている」
萌の会は、1998年に金沢大学附属病院を中心に発足した血液疾患の患者会です。金大病院は骨髄移植に歴史があり、会員の中には移植から30年近く経った患者さんもいらっしゃいます。現在は金大病院の他、石川県立中央病院、金沢医科大学病院、金沢医療センター、NTT西日本金沢病院、芳珠記念病院など、県内の主要な血液内科やがん相談支援室、行政、北陸がんプロなどとも連携しながら運営しています。
会員数は100名前後で、子どもから80歳代の方も数名います。主な活動は会報の発行と交流会で、毎月発行している「萌の会だより」には、体験談や医療情報などを掲載。会報は各病院の外来待合室や病棟にも置いていただき、通院、入院中の患者さんも見られるようになっています。
各病院内で開催している交流会には医療者の参加も多く、つらいときに支えてもらった看護師さんとの再会を喜んだり、新人看護師さんに「自分はこんなに大変だった……」と闘病体験を熱く語ったりする場面もしばしば。近年では、ソーシャルワーカーさんの支援も大きく、日常の相談のみならず患者会運営の窓口になってくださるところもあります。
何より嬉しいのは、他県の患者会も親睦を兼ねて毎年、交流会に参加してくださっていること。病院や地域の垣根もなく集える場となっています。
皆さんが楽しみにしているのは何と言ってもおしゃべり。意外にも高齢者や男性の参加が多いのは、普段、病気のことを話すことがないからかもしれません。
病院によって参加人数や雰囲気は異なりますが、ここに来れば思いを受けとめてもらえるという実感。その様子は一人ひとりが「誰かに支えられ誰かを支えている」そんな感じがします。
医療者も交えた交流会は “同窓会”のよう
私の発病当時、インターネットは普及していないし、一般向けの医療書籍や闘病記もほとんどなくて、頼れるのは主治医だけ。まだ本人に告知することを医療側が躊躇していたころです。悩みを相談できる所もなく愕然とした思いでしたが、ないなら作ればいいのではと思い、主治医に相談。最初は「患者会って何するところ?」という面持ちでしたが、熱意が伝わったのか話が終わるころには、「やってごらん。協力するよ」と力強い言葉を頂きました。
その言葉通り、最初から医療者が全面協力して下さり、会場の手配や案内ポスターの掲示といった準備段階から、交流会時には皆さんの輪に入って一緒におしゃべりや臨時相談会まで。
初期の頃は、病院内のレストランを貸し切っての交流会で、私服の先生や看護師さんと患者、家族が食事を囲みながらともに話し合っている様子は、まるで同窓会のよう。そんな温かな雰囲気の交流会を重ねるうち、ある医療者が「患者会はどんな薬より患者さんに効く薬だね」と言ってくださったことが嬉しく、患者会を作って本当によかったなと思いました。
2005年には北國がん基金の表彰を受け、その助成金で「患者会が作った患者さんのための冊子」を作成。2008年には10周年を記念して「萌いずる」という会員からのメッセージ集を作成しました。その時々の患者や家族、そして医療者の生の声は本当に重みがあり、会報や記念誌に記された言葉に思いを寄せると、その人の生き様さえも見えてくるようです。
様々な声を拾い上げて 会報で情報共有
患者会としてもうひとつ担っていることは、がん教育。医療講演会や小中学校での活動を十数年前から続けています。
がん教育では、がんの理解や予防もさることながら、どう生きるかということも一緒に考えていけたらという思いを持っていて、北陸がんプロの活動でも、運営委員や外部評価委員としてこの点を重視しながら取り組んでいます。
血液疾患は他のがんに比べ患者数は少ないものの、男女を問わず小児から高齢者までと年齢層も幅広く、本人や家族の抱える悩みは疾病のみならず、医療費の問題、進学、就職、結婚、不妊の問題……と様々です。
萌の会では早くからこうした患者さんの声を拾い上げ、会報で情報を共有していました。今では、病院内でがん相談支援室やがんサロン、就労相談が行われるようになり、専門家のアドバイスが頂けることは喜ばしい限り。また、石川県もがん安心生活サポートハウスを立ち上げ、積極的にがん患者支援に動いています。
情報があふれんばかりの今日、自分に必要な情報を選択することも大切なこと。悩みが多い患者さんが安心して治療を受けられたり考えを整理したりするには、そうして欲しい時にそっと手を差し伸べてくれる身近な存在が欠かせません。患者会は医療的な相談や悩みに「答え」を出せませんが、気持ちに「応える」ことはできます。人が人を支えていく……。少し前を歩んでいる先輩患者さんの言葉や生き方は、生きたモデルとなって次の患者さんを勇気づけてくれることでしょう。
命を使うと書いて使命。患者会は、生きるということを改めて感じさせてくれる存在であり、命をどう活かしていくかを考える場でもあります。そんな大事な使命があるのです。
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