大腸がんの基礎知識 大腸がんはどんな病気?
編集●「がんサポート」編集部
国立がん研究センターが昨年(2015年)4月に発表した2015年のがん患者数の推計で、これまで3位だった大腸がんが、胃がん、肺がんを抜いてトップになった。増加傾向にある大腸がんについて、基礎から治療までをまとめた。
人工肛門のほうが良いケースも。手術選択は慎重に
監修●船橋公彦 東邦大学医療センター大森病院一般・消化器外科教授
たとえ肛門に近い部位にがんができたとしても、肛門を温存することができる手術法がある。それが、肛門括約筋の一部を切除する「内肛門括約筋切除術」、いわゆるISRと呼ばれる手術だ。「究極の肛門温存術」とも言われるが、どんな人にも向いているわけではない。その適応は?治療成績は?専門家に話を聞いた。
基本的には治療ガイドラインに沿って治療
監修●中野大輔 がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科
大腸がんの罹患率は50歳代から増加し、高齢になるほど高くなる。近年、高齢で大腸がんになる患者の数は増え続けている。では、高齢者が大腸がんになった場合、治療法は若年者と違うのだろうか。治療を受ける際、気をつけるべきポイントは何だろうか。高齢者における大腸がん治療上の注意点を聞いた。
側方郭清を省略しても治療成績は同じ
監修●川合一茂 東京大学医学部附属病院腫瘍外科講師
局所進行した下部直腸がんでは、手術時に直腸の左右にある側方リンパ節を切除する側方郭清が標準治療となっている。ただ、直腸周辺には、排尿や性機能などに関わる大事な神経が走っているため、側方郭清を行う際に傷つけてしまう可能性がゼロではない。そうした中、注目されているのが側方郭清を省略して術前に化学放射線療法を行う治療法だ。
ステージⅢ(III)と再発リスクの高いステージⅡ(II)が対象に
監修●鶴田雅士 慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器)助教
大腸がんは手術でがんを取り切ることができれば、他のがん種よりも治癒率が高い。しかし、進行がんでは、CTやPETでも捉えられない微小ながんが残されている可能性が高く、これが再発のもとになる。そのリスクを下げるのが、手術後に抗がん薬を投与する術後補助化学療法だ。効果と副作用、ライフスタイルなどを踏まえ、患者にとってベストな治療法を選びたいものだ。
ストーマの専門家に相談を
監修●工藤礼子 国立がん研究センター中央病院看護部皮膚・排泄ケア認定看護師
大腸がん治療では、術前、あるいは術後に抗がん薬や分子標的薬による化学療法を実施することが一般的な治療法として普及してきている。ただし、化学療法を行うと、皮膚障害、下痢、末梢神経障害など多様な副作用が現れることも少なくなく、ストーマ保有者には大きな問題となる。一方、抗がん薬治療を受けた患者の排泄物による曝露対策も、患者とその家族にとって重要な問題である。