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基本的には治療ガイドラインに沿って治療

高齢者の大腸がん治療では併存疾患対策を十分に

監修●中野大輔 がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科
取材・文●半沢裕子
(2016年5月)

  
「高齢者は術後早くから動くことが大切です」と語る中野大輔さん

大腸がんの罹患率は50歳代から増加し、高齢になるほど高くなる。近年、高齢で大腸がんになる患者の数は増え続けている。では、高齢者が大腸がんになった場合、治療法は若年者と違うのだろうか。治療を受ける際、気をつけるべきポイントは何だろうか。高齢者における大腸がん治療上の注意点を聞いた。

高齢者のがん進行は遅いというのは迷信

まず、大腸がんにおける高齢者とは何歳以上を指すのだろうか。がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科の中野大輔さんは次のように述べる。

「高齢者の定義は様々で、例えばWHO(世界保健機関)では65歳以上とされています。日本では75歳以上を後期高齢者と定めているので、私たちも論文などでは75歳を念頭に置きますが、大腸がんでとくに『高齢者』として注意して対応するのは、80歳を超えている方の場合が多いですね」

大腸がん年齢階級別罹患率をみると、男女とも50代から急増している(図1)。同病院でも75歳以上の大腸がんは多く、近年は80歳以上で手術を行うことも珍しくなくなっているという(図2)。そして、高齢者が大腸がんの治療を受ける際、まず知っておきたいのは、「高齢者のがんは進行が遅いというのは迷信」ということだ。中野さんも言う。

「結論から言うと、がんの発症年齢の違いで進行スピードに差が出ることはありません。小児がんは進行が早いことから、高齢者のがんは進行が遅いと思われるようになったのでしょうか。つい最近も、90歳代の女性で、大腸がん根治切除後半年で再発された方がいました。大腸がんは高齢者でも非高齢者でも同じく進行すると言えます」

ということは、治療も非高齢者と同様に行ったほうがいいということになる。

「高齢者でも非高齢者でも がんを切除することによって死亡率が低下し、長期生存が得られていることがわかっています。高齢者も根治手術を選択するのがベストですし、術後の補助化学療法でメリットを得られる可能性もあります。ですから、基本的に『大腸癌治療ガイドライン』に沿って治療するべきだと思います」

図1 大腸がん年齢階級別罹患率(全国推計値 2011年)
出典:国立がん研究センターがん対策情報センター
図2 都立駒込病院における、初発大腸がん患者の年齢内訳の年次推移

高齢者でも非高齢者でも 基本はガイドラインに準拠

大腸がん治療の基本は原発巣の切除。がんが大腸の最も内側の粘膜層に留まっているか、その下の粘膜下層まで浸潤していても浅いところに留まっていれば、内視鏡での切除が可能となる。がんが粘膜下層の深いところかそれ以上に浸潤していれば、リンパ節郭清を伴う外科的手術(開腹手術か腹腔鏡下手術)が行われる。

術後、リンパ節転移のあるステージⅢ(III)と診断された場合や、再発の可能性が高いステージⅡ(II)の場合は、再発を予防するための術後補助化学療法(抗がん薬による治療)が行われる。遠隔転移のあるステージⅣ(IV)でも、手術や全身化学療法が行われる。

こうした治療をするにあたり、高齢であるために、とくに注意すべき点はどんなことだろうか。

呼吸器、心臓、腎臓などの併存疾患にはとくに注意

図3 COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

最も注意すべきは併存疾患という。疾患によっては、手術時に麻酔がかけられないなどの事態も起こる。そのため、術前検査の段階から十分にチェックを行う。

「検査項目は基本、非高齢者と変わりませんが、高齢者の場合、呼吸器、心臓、腎臓の併存疾患にはとくに注意が必要です。例えば、高齢の喫煙者(喫煙を止めた人を含む)には慢性閉塞性肺疾患(COPD)の人が高率にいますが、COPDがあると麻酔がかけられないリスクが生じますし、術後の肺炎のリスクも高くなります(図3)。

また、糖尿病は本人も気づかないことがあります。ヘモグロビンA1c(赤血球のタンパク質とブドウ糖が結合した物質の一種)の数値によっては、糖尿病・内分泌科を受診していただき、術前に入院による糖尿病のコントロールが必要なケースも稀ではありません。

心臓と腎臓の機能検査も十分に行う必要がありますが、さらに糖尿病がある場合は心臓や腎臓に併存疾患を起こすことがあるので、検査項目を増やす必要も生じます。心臓では通常の心電図だけでなく超音波検査も行う、腎臓の場合はクレアチニン(Cr)の数値だけでなく、腎臓の濾過機能を表す糸球体濾過量(GFR)やクレアチニン・クリアランス(CCr)などの数値も見る、といった対策が必要になると思います」

検査により併存疾患の状態を確認しておくのは、手術中や手術後に症状が出たとき、迅速に対応できるようにするためだ。

「高齢者では対応が遅れると重篤化し、命にかかわる可能性が高まるので、慎重に調べておくことが必要です。例えば、腎機能が低下しやすいので、術後の点滴や合併症の使用薬剤には腎臓に負担のかからないものを使います。代表的な鎮痛薬の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腎臓に負担をかけるので、違う機序の鎮痛薬を使います」

呼吸器、心臓、腎臓の検査を念入りに行う理由は、これらの臓器が密接につながっているためという。

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