地方都市へも乳房再建手術の最新情報を届けたい――
患者会E-BeC「第10回 乳房再建全国キャラバン」を広島で開催
「乳房再建手術」の正しい理解の普及と、乳がん患者さんのQOL(生活の質)向上をめざして活動するNPO法人「エンパワリング ブレストキャンサー」(以下E-BeC)は、2017年2月18日(土)、広島市の広島マツダビルにおいて「第10回 乳房再建全国キャラバンin広島」を開催しました。
このキャラバンは、大都市部に比べ乳房再建手術に関する情報がまだまだ少ない地方都市在住の乳がん患者さんたちに正しい知識を得てもらおうとE-BeCが開催してきたもので、今回で第10回目の開催となります。乳房再建を考えている乳がん患者さんやそのご家族など約80人が、地元の乳腺外科医と形成外科医の講演を熱心に聴講しました。
地方の患者さんに乳房再建の情報を!
現在、日本人女性のおよそ11人に1人が乳がんにかかるといわれ、罹患率は年々増加しています。早期発見・治療ができれば比較的予後(よご)のよいがんですが、患部の摘出手術によって胸の形は大きく変形し、大きな精神的苦痛を残す患者さんも少なくありません。
「乳房再建(にゅうぼうさいけん)手術」は、乳がん手術で損なわれた乳房の形を取り戻すことを目的とした形成外科分野の手術です。手術を受けることで患者さんは女性としての自信を取り戻し、積極的な人生を送ることができるようになるという意味で、「乳房再建手術」には患者さんたちのQOL(生活の質)を高める大きな意義があります。
現在では、シリコンインプラントを用いた乳房再建手術が保険適用の対象となり、患者さんたちの経済的負担は大きく軽減されています。これに伴って手術を手がける医療機関も増加しており、乳がん患者さんが乳房再建手術の存在を知る機会も広がっています。
しかし大都市部に比べると、地方都市では乳房再建手術を受けられる医療機関はまだ限られており、手術に関する情報が得られる機会も多くはありません。乳房再建手術とはどんなものか、どのような胸が再建できるのか、どのような利益があり、またどのようなリスクがあるのか、自分にはどんな方法が合っているのかなど、患者さんが得られる情報の質と量には格差があるのが実情です。
地元医師を講師に、乳がん治療から再建まで幅広く聞く
乳房再建手術に関する情報を必要とする患者さんたちに向けて、正しい情報の提供機会を増やしていくため、E-BeCでは地方都市を訪問する「乳房再建全国キャラバン」の開催を、2013年から進めてきました。
すでに札幌、那覇、松本、静岡、京都、大阪、金沢、福岡、名古屋で実施しており、地元患者会などとの連携のもと、毎回多数の患者さんやそのご家族に参加いただいています。
第10回目となる今回は、「乳房再建術ってどんなもの? どうなるの?」~乳腺外科医と形成外科医、手術経験者がお教えします~をテーマに、県立広島病院乳腺外科部長の松浦一生さん、広島市立広島市民病院形成外科部長の身原弘哉さんを講師に、それぞれ「QOLをめざした乳がん治療」および「乳房再建の基本的知識」について講演をしていただきました。
身原さんからは、インプラント再建において広島市立広島市民病院が行っている工夫として、「乳頭くり抜き乳輪温存乳房切除術」(乳がん手術に際して乳輪を温存し、乳頭を皮下乳腺と一緒に切除する方法。乳輪乳頭部分の自然な再建が可能になる)についての説明があり、乳房再建手術の最前線の様子を知る貴重な機会となりました。
また、講師による質疑応答も貴重な時間となりました。
実際に見てふれられる貴重な機会
キャラバンでは毎回、再建経験者の手術後の胸を実際に見て触れることのできる「体感会」を行っており、今回も広島地区をはじめ8名の再建経験者の協力のもと、参加者(女性のみ)に手術後の胸を見たり、経験者の話を直接聞いたりする貴重な機会を提供することができました。
ライフスタイルの変化などを背景に、日本人女性の乳がん罹患率はじりじりと高まっており、乳がんはあらゆる女性にとって身近な病気となっています。
E-BeCではこれからも、乳がん患者さんはもちろんのこと、いまの時代に生きるすべての女性に役立つ様々な情報発信を続けていきたいと考えています。
NPO法人エンパワリング ブレストキャンサー(E-BeC)
「乳房再建手術」への正しい理解と乳がん患者さんのQOL(生活の質)の向上をめざして活動。全国各地でのセミナー、「乳房再建ハンドブック」の制作・配布、公式ウェブサイトなどを通じて「乳房再建手術」に関する情報提供を行っています。