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血液がんの上手な日常での副作用管理 感染症対策が最重要。骨髄移植した患者はとくに注意を!

監修●坂井千加子 新潟県立がんセンター新潟病院血液内科・小児科チーム病棟主任看護師
取材・文●伊波達也
発行:2018年5月
更新:2018年5月

  

「いつもと違う症状が出たり、調子が悪いと感じたときには、自己判断せずに病院に連絡して欲しい」と語る坂井千加子さん

血液がんの治療は、強力な化学療法を行うことが多い。当然ながら副作用も強くなる。入院中は、医療スタッフのケアを受けられるが、退院後は患者やその家族も日常生活上の心がけが重要だ。日常でのセルフケアについて、新潟県立がんセンター新潟病院の看護師・坂井千加子さんに伺った。

免疫力低下による感染を防ぐことが一番重要

がんの治療、とくに長期間にわたる薬物療法で不可欠なのは、副作用といかにうまく付き合い、日常生活のQOL(生活の質)を保っていくかということだ。

とくに薬物療法や造血細胞移植など強い治療が主流の血液がんにおいては、病気にまつわる症状とともに副作用管理は重要だ。

「血液がんには様々な病気がありますので、病気によって様々な対応が必要です。いずれの病気でもまず注意すべきなのは、免疫力の低下による感染を防ぐことです」

そう話すのは、新潟県立がんセンター新潟病院血液内科・小児科チーム病棟主任看護師の坂井千加子さんだ。

退院後の日常生活で、副作用とどのように付き合って行くかについては、入院している間に、1つひとつ身につけてもらうことが大切だと坂井さんは話す。

「入院期間中は、看護師、薬剤師、栄養士ほか専門のスタッフが状況に応じてアドバイスできますので、それらを守って習慣づけすることによって、退院後もスムーズに日常生活の中に、副作用対策を組み込んでもらえると思います。患者さんもご家族も覚えるべきこと、やるべきことがたくさんあって大変ですが、QOLをよくして生活していただくためには、ぜひ覚えて実践していただきたいです」(図1)

■図1 新潟県立がんセンターで入院患者に配布している資料

それでは、症状のそれぞれに対するアドバイスをいただこう。

まず感染についてだ。

病気自体によることはもちろん、治療の過程で起こる血液を造る機能が低下する骨髄抑制により、免疫力が低下して起こりやすい。

「感染症を起こさないことがポイントです。それには、手洗い、うがいの徹底励行です。外気に触れたり、何かに触ったら常に手洗いを励行してください。

うがいも大切です。口腔内のばい菌は2時間程度で増えると言われていますので、とにかくこまめにうがい薬でうがいをするよう、常に伝えています。朝起きたときと夜寝る前、毎食後、それ以外にも口が渇いたら、常にうがいをしていただきたいです」

また、食事についても注意が必要だ。治療中は、生ものの摂取は感染の恐れがあるため一切厳禁だという。

「『お寿司が食べたい』という方がいますが、『治療中は我慢してください』と話しています。治療が一段落して退院するタイミングで、主治医の判断で、状態によっては『新鮮な物ならいいですよ』という指導をすることもありますが、基本的には火の通ったものを食べてくださいと話します」

骨髄移植後の人は外食も禁止だ。

「とくに試食コーナーや食べ放題のように、食べ物が長時間空気に触れているような状況で並んでいるものは、絶対に食べないでください」

人ごみを避けることも大切だ。筋力を保つために散歩などをすることは大切だが、できれば人があまりいない場所や早朝などの時間を選び、必ずマスクをして行き、帰ってきたらまず手洗いとうがいを。

さらに感染が心配なのは、便秘や下痢、皮膚のかゆみ・乾燥などだという。

「便秘でよくないのは、いきんだり、硬い便をすることで、肛門に亀裂が生じてしまい、そこから感染症を起こす可能性があることです。また、下痢の場合も、便により粘膜がただれて、そこからの感染が心配です。少しでも徴候があるときには、便秘の場合は、早めに下剤や腸の動きをよくする薬などを服用したり、肛門を洗浄して、皮膚を修復する軟膏を塗るなどして、未然に防ぐことが大切です。すでにただれてしまったような場合には、皮膚科や皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC看護認定看護師)にフォローしてもらい、早めに対処するようにしています」(坂井さん)

自己管理としては、食物繊維が豊富な食物の摂取、適度な運動、水分の摂取などを心掛けることが大切だ。

皮膚も予防が重要

皮膚のかゆみの場合は、掻きむしって傷をつけてしまうことが感染につながるため、要注意だという。

「元々アレルギーのある方もいて、皮膚に関してはとにかく保湿が大切です。お風呂から上がったら必ず保湿してください。日常生活では、普通に市販している香料の入っていないクリームを購入して塗ればよいと思います。それでも治らないときは、皮膚科に相談して薬を処方してもらうべきです」(坂井さん)

自宅の風呂はいいが、公衆浴場などは止めておいたほうがいい。また、自宅はきれいに掃除して、いつもクリーンに保っておきたい。

そして、歯科などはもちろん、体に触って施術をするような美容室やエステ、ネイルサロンといった場所へ行く場合には、必ず主治医や看護師に相談して欲しいということだ。

「プールや海、温泉も感染症の原因になる可能性があります。日常生活とは少しでも違うことを行うときには、どんな些細なことでもかまわないので、まず相談してください」

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