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小社主催・市民公開講座パネルディスカッション
あきらめないで。前立腺がんはどんな状態でも治療法はある!

総合司会:白木良一 藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科教授
パネリスト:丸山高広 藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科講師
吉野能 名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科講師
発行:2011年3月
更新:2013年4月

  
写真

2010年11月23日(祝)、小社主催、ノバルティスファーマ株式会社協賛の前立腺がん市民公開講座が、名古屋市中村区のミッドランドホールで開催された。テーマは「前立腺がんでも、自分らしく生きる」。
「前立腺がんはどんな病態でも、どんな病期でも、やるべき治療があります」。
藤田保健衛生大学医学部腎泌尿器外科教授で、総合司会を行った白木良一さんは、そう力強く話す。
ここでは、白木さんを中心に、患者さんや家族の方々からの質問に答える形で進められたパネルディスカッションの様子を振り返る。

PSAが正常値を超えたら詳しい検査を受ける

写真:会場

2010年11月23日(祝)、小社主催の前立腺がん市民公開講座が、名古屋駅前のミッドランドホールで開催された。テーマは「前立腺がんでも、自分らしく生きる」。寒空の下、多くの患者さんが会場に詰めかけた

白木 PSA(前立腺特異抗原)がグレーゾーンで、少しずつ上がってきているが、がんの可能性はどうかという質問です。3.46、4.57、5.37と変化してきたようです。

丸山 一般的には3~4が正常値とされていますが、5になったら100パーセントがんなのかと言えば、そういうわけではありません。異常がなくても前立腺が大きい人は高くなりますし、慢性前立腺炎という病気でも少し上がってきます。ただ、徐々に上がっているのは気をつけなければいけませんし、4を超えるころからは、詳しい検査を受けたほうがいいと思います。

白木 3~4より下だった場合には、どうですか。

丸山 その場合、100パーセントがんでないとは言えません。年齢によって正常値は若干異なり(正常上限PSA値は、40代が2.5、50代が3.5、60代が4.5、70代が6.5)、たとえば同じ3.5だとしても、50代と70代では意味合いが違ってきます。大事なことは、最低でも年に1回はPSA検査を受け、上がってくる傾向がある場合には、専門の医師に相談することです。

白木 PSA検査で疑いがあると、次は前立腺生検となります。生検を1回やり、そのときは良性という結果でしたが、PSAが上がってきたため、もう1回生検を受けることになりました。生検は何回受ければいいのですか、という質問です。

吉野 何回やったら大丈夫ということは、意外とわかっていません。わかっているのは、1回目の生検でがんが見つかるのと同じ割合で、2回目でもがんが見つかるということです。たとえば、1回目で20パーセントの人にがんが見つかると、その人たちを除いて行った2回目でも、20パーセントの人にがんが見つかります。ただ、名古屋大学医学部付属病院で調べたところ、4回を超えると、前立腺がんの人はほとんど見つかりませんでした。
PSAが上がってきている人は、検査の方法を変えてみるのもいいでしょう。これまで直腸から針を刺していたのであれば、会陰からの方法に替えたり、刺す本数を増やしたりするのです。それによって、見つけにくいところに隠れていたがんを、見つけられるかもしれません。

[PSA値と前立腺がんの発見率]
図:PSA値と前立腺がんの発見率

出典:財団法人 前立腺研究財団編:前立腺がん検診テキスト

欧米化した食事を避け野菜中心の食事を

白木 PSAが少し高めで気にしていますが、日常生活で前立腺がんにならないようにする方法はありますか、という質問です。

丸山 どういう人が前立腺がんになりやすいかがわかっています。高齢の人、家族歴のある人、黒人や欧米人。これらは自分ではどうしようもありませんが、1つだけ努力してできることがあります。それは食事です。
欧米人に比べて日本人や東洋人には前立腺がんが少ないのですが、ハワイの日系人は、人種的には東洋人ですが、食生活は欧米人と同じで、前立腺がんの発生率は欧米人と東洋人の中間くらいです。こうした研究からも、食生活に注意すべきことがわかります。お肉を減らして野菜中心の食事にすることで、前立腺がんの発生をかなり抑えることになると思います。

手術後は尿失禁が起こるがその多くは回復する

白木 手術と放射線治療はどちらがいいでしょうか、という質問です。早期がんに対する治療成績はほぼ同じで、どちらがいいという結論は出ていません。したがって、局所療法としてこの2つから治療法を選択する場合、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるか、という比較になります。この点についてどうでしょうか。

丸山 手術を受ける患者さんに伝えておかなければならないのは、尿失禁のことです。ロボット手術で非常に細かいところまで見て手術をしても、尿失禁を完全に防ぐことはできません。また、70歳くらいを境にして、それより上の人には尿失禁が増えるような印象があります。
若い人が、悪いものを可能な限り取ってしまいたいという場合には、手術を選択されるのがいいと思います。しかし、これからの生活を考え、尿失禁はどうしても避けたいという人は、放射線治療を選んだほうがいいと思います。ただ、放射線治療でも、頻尿や排尿困難などの障害が出ることはあります。前立腺の大きさ、診断時の病期なども考慮し、主治医とよく相談して決めるとよいと思います。

白木 患者さんが若い場合や、前立腺肥大で排尿障害がある場合、私たちは手術を勧めることが多いと思います。吉野先生は、手術に関して患者さんにどのようなことを話していますか。

吉野 尿失禁が起こる割合についてですね。ほとんどの人に尿失禁が起こりますが、3カ月で3割が回復し、半年で6割が回復、1年後には9割以上の方が回復するという話です。

白木 手術に対して非常にネガティブになる方がいますが、吉野先生が言うように、最終的には9割以上の方が、尿失禁で困ることなく日常生活を送っています。初めから手術を選択肢からはずしてしまうのではなく、いろいろな方の話を聞いていただくのがいいと思いますね。


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