NPO法人 周南いのちを考える会(ホスピスケア/山口)
「最期まで寄りそう」気持ちで仲間をサポート
「念願」の緩和ケア病棟が社会保険徳山中央病院に開設される
心の繋がりを大切にし、寄りそう
NPO法人 周南いのちを考える会代表の
前川育さん
「山口県東部にホスピス・緩和ケア病棟を」と願い、01年2月から活動を始め、08年12月に念願叶い、緩和ケア病棟が社会保険徳山中央病院に開設されました。
NPO法人「周南いのちを考える会」の活動内容は、講演会や勉強会の開催・ラビューの集い(患者会)、そよ風(大切な人を亡くした方の会)・会報発行などで、活動の柱はラビューの集いです。
01年春、新聞の地方版に当会の記事が掲載されると、がんに悩む方々からの電話が殺到しました。当時は、がんは人に隠す時代でした。そのときの電話がきっかけで、自然発生的に「患者会」ができ、現在に至っています。
最初の頃は、我が家の2階の部屋で患者同士が集まって話をしていました。和気あいあいとした雰囲気だったのは、自宅だったからのように思います。モルヒネの錠剤を持参してご夫婦で参加したAさん、リンパ浮腫でつらそうだったBさん、大腸がんのCさん。9年前の患者会の仲間は、亡くなってしまいました。その後、場所を公民館に移しましたが、最近は、参加者の減少が悩みです。
私たちの患者会は、会員以外でも、がん経験者はどなたでも参加OKです。
がんになった場合、進んで患者会に参加する方と、参加を躊躇する方の2通りがあるように感じています。
後者の場合は、個人的にサポートしています。
Sさんがメールで届けてくれた「ホスピスからみた09年の夜明け」
心に残る患者仲間をご紹介いたします。
☆Sさん(62歳) 1人暮らし。大腸がんから肝臓と骨に転移。オキシコンチン(一般名オキシコドン)(*)やモルヒネで疼痛緩和。患者会への参加は拒否。突然のがん宣告で仕事ができなくなった悔しさ、子どもの頃の楽しかった思い出、死は覚悟していることなどを話されました。
近くを散歩したときに、「嬉しいなあ、こんな楽しい時間がもてるなんて」という言葉が心に残っています。
1人暮らしの場合、孤独感とともにいざというときに手助けをする人がいません。08年の晩秋、尿が出ない、食事も摂れない状況で3日間アパートに。SOSの電話で駆け付け、翌日再入院。人工肛門は、便でいっぱいになり膀胱が破裂寸前でした。
主治医の意向もあり年末に、ホスピスに転院。新年にこんなメールが届きました。
「8階ホスピス病棟から見た09年の夜明けです。今年中にいなくなると思われる数人の人達と並んで見るのは、それなりの感がありますが、そこは日本人でやはり清心の気を感じます。今年も皆様の幸運と健やかに過ごされん事を心より願うと共に昨年はとてもお世話になった次第ですが今年もお世話にならざるをえません。伏してお願い申しあげます」
山口県立総合医療センター内にオープンした「患者サロンきらら」
3月、「どうしても家に帰りたい」と連絡があり、車で迎えに行きました。後部座席で横になって、1時間半かけて帰宅。このとき、骨盤にも転移していて、ホスピスのスタッフは外泊は無理と考えていたそうですが、こちらには知らされておらず無謀な外泊となりました。
這いながらアパートの部屋にたどり着き、「帰れて良かった! やっぱり自分の部屋は落ち着くなあ」と、にこにこした嬉しそうな表情は忘れられません。痛み止めを飲みながらでも、歩けなくても、自分の部屋で過ごした1泊2日は、Sさんの人生の最期の締めくくりの時間だったように思います。
☆Mさん(60代後半)
大腸がんの手術直後の男性がお見えになりました。「自分ががんになるなんて。手術跡は痛いし、生きている甲斐がないから死にたい」と。
大腸がんの先輩患者のNさんが、「手術の直後は、そんなもの! 女の私が、頑張ってきたのだから、大丈夫。あと数年もすれば、あんなこともあったと笑って話せますよ」と励ましました。Mさんは、08年、手術後5年を迎え、趣味の卓球を楽しんでおられます。「Nさんの喝のお蔭で、目が覚めた」そうです。
☆Nさん(60代)
患者会でMさんを励ましていたNさんは、とてもしっかりした聡明な女性です。病状が進み、自らの意思でホスピスに入院。ホスピスではご自分の死と向き合い、以下のメールを残して亡くなられました。
「あちこち転移しているようです。こんなことを言って心配かけてごめんなさい。気分は、落ち込んでいませんので心配しないでね!(^-^)」
「病棟でお友達ができ、一緒にモーニングを食べています。在宅より、ホスピスが私にはあっているみたい」
「そのときがきたら、会のみんなに、よろしく伝えてね」
嬉しいことや哀しいことなどいろいろありましたが、患者会では心の繋がりを大切にし、心身ともにお元気になられることを願って運営しています。もしものときは、「最期まで寄りそう」気持ちを大切にしています。
09年度の新たな活動としては、山口県立総合医療センター内に「患者サロンきらら」を開設しました。ボランティアスタッフが、「くつろぎの場・情報提供の場にしたい」と、張り切っています。
*オキシコンチン=鎮痛剤の一種
NPO法人 周南いのちを考える会 事務局
〒744-0032 山口県下松市生野屋西3丁目6-13
TEL&FAX:0833-43-6772
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