「並木ひろば」(がん全般/岡山)
「安心できる温かい場」の提供を
個性ある患者会が多く生まれ、選べるようになってほしい
「安心できる温かい場の提供を」と、並木ひろばは発足した
土曜日の午後にみんなで集まり、おしゃべりに花が咲く
当クラブは1999年2月に「がんの悩み電話相談室おかやま」(1996年開設)の分室として誕生しました。ホスピス(現在は閉鎖、診療所)の多目的室をお借りして、毎週土曜日(午後1時半から3時半)の午後、皆さんが集います。
開設のきっかけは、ホスピスのラウンジに集う患者、家族、ボランティアがお茶などを飲みながら、さりげなく温かく支え合う姿に感銘したのがはじまりでした。そして在宅で療養されている皆様にも、このような「場」があればどんなにか癒やされ励まされるのでは……との思いで、ボランティア、医療関係者などの発起人14名により開設されました。
「土曜日の午後、並木ひろばに行けばメンバーの誰かに会える」
1番大切にしていることは「安心できる温かい場」の提供です。ここに来れば話ができる、相談できる、黙って居ることもできます。いつでも温かいコーヒーやお茶が用意され、時おり訪れる看護師、医師、心理療法士、ソーシャルワーカー(社会福祉士)等や研修生ともテーブルを囲んで話が弾みます。
例会(第3土曜日)は15名前後(40代~80代、60代が中心、がんの種別なし)、ふだんの土曜日は4、5名のメンバーが集います。
2007年他界されたAさん(40代主婦、乳がん再発・転移)の入会動機にこう書いてありました。
「がん治療が始まって5年半たった中で常に望んできたこと。1人で頑張るには、がんという病はつらすぎることがある。支え、仲間、励ましが必要不可欠です。ときには家族、友人にも話せないことがある。そんなやりばのない思いを安心して吐露できる場が欲しいとの思いで入会しました……」
クラブ室に飾られている前代表が描いた静物画
イチゴを手に持つ西永ムツ子さん(右)
集いでは自由に話が弾みます。がんの話はもちろん、時事問題から家族問題、恋愛話やお墓の話まで飛び出し、涙と笑いが交錯します。事務局の悩みは時間になっても話が終わらないことです。
クラブへの問い合わせは岡山に限らず関西などからもあります。残念ながら遠くの方は参加できないのですが、電話でお話を聴くこともあります。初代、2代目の代表が2007年に相次いで他界されました。現在、代表は空席ですが、クラブ室に飾られた遺作の絵画に見守られて活動を継続しています。
活動内容は、集い、情報交換、相談、研修会、講演会への参加と案内、自宅への訪問、福祉機器の貸し出し、レクリエーション(忘年会、新年会、バザー)など、皆さんの希望に沿って活動しています。
ここで、西永ムツ子さんの「並木ひろば」参加の様子を紹介したいと思います。西永さんは70代の女性。1人暮らしで2008年7月に入会され、現在はすい臓がんで緩和医療中です。
「私がクラブに参加し始めて、2カ月以上経ちました。はじめは行くのが大儀だなあと思っていても、行くと自分のことを分かってくれる人たちの中でさまざまなことを話せて楽しく過ごせています。
私と『並木ひろば』を出合わせてくれたのは青野さんです。青野さんは入院中も自宅療養している今もサポートしてくれ、自宅にイチゴの鉢を持ってきてイチゴ狩りをさせてくれました。そして私に『並木ひろば』を教えてくれたのです。
7月、初めてクラブの皆さんと高梁の『定林寺』へ行きました。もう来られないと思っていた高梁に行くことができて嬉しかったです。そこで高月さんと秋山さんに出会い、仲良くなれたことで入会を決めました。
涙が出て悲しい気持ちなのは自分1人だと思っていたのですが、クラブに行ってみると、周りにも同じ思いをしている人がこんなにも沢山いるのだなと分かりました。それもいろんながんと闘っていると思ったら気持ちが少し楽になったような気がしました。優しい心をゆずり受け、思いやりをもらったりしているうちに自分の心も落ち着いてきて幸せだなと思えるようにもなりました。
以前は体調が良ければ行ってみようという気持ちでしたが、いろんな人が私を気づかってくれ、私と同じように涙を流している人をみると、自分のことのようにその人のことが気になり、翌週もその人の元気な姿を確かめたいと思うようになりました。今ではクラブに行くために体調を整えようという気持ちになり、毎週休むことなく行くことができています。帰宅したら『次はいつかなあ』と思えて待ち遠しく、涙ばかりの毎日だったのが、涙も半分くらいに減ってきました。『並木ひろば』に出合えて本当に感謝しています」。(西永さんは会員からのビデオレターに笑顔をみせられ、2008年12月9日に永眠されました)
「並木ひろば」はアットホームで小さなクラブですが同じがん患者、家族であっても、1人1人が抱えている状況や立場は違います。しかしそれらを乗り越えていく人々の強さと優しさを目の当たりにすることで、支援ボランテイア会員にとっても「大きな癒やしの場」となっていると感じています。個性ある多くの患者会が生まれ、選べるようになればと願っています。
クラブ「並木ひろば」事務局
〒702-8058 岡山市並木町2-27-5
TEL 090-4140-2500
同じカテゴリーの最新記事
- 新しくWell-beingをテーマに 4つの活動を柱に日本骨髄腫患者の会の輪を広げたい
- 患者会E-BeC「第10回 乳房再建全国キャラバン」を広島で開催
- 「小児脳幹部グリオーマ」患者会 厚生労働大臣に直接陳情
- 「医師と患者で、一緒に考えよう」をテーマに BCネットワークが第6回乳がんタウンホールミーティングを開催
- 乳がん体験者ががん患者を支える 患者の悩み、必要なサポートとは?
- リンパ浮腫について知ろう、語ろう、「リンパカフェ」
- 「乳房再建手術がわかる」 セミナーを開催
- BCネットワークでは初めて、患者さんの経験談をメインに開催
- 患者さんや家族の気持ちが、少しでも楽になるように「まる」と名付ける
- 「小児脳幹部グリオーマ」に関する要望書を厚生労働大臣宛に提出