がん心のケアの会
がん患者さん・ご家族のための電話相談「がん心のケアほっとライン」
代表の毛利祐子さん
思いを語る場を提供し、希望の種を見つけてもらう
「がん心のケアの会」では、2000年5月11日に、無料電話相談「がん心のケアほっとライン」を開設し、現在満6年になります。
代表の毛利は、18年前に乳がんの手術を受けてから、命ある限り精一杯生きたい、また同じ苦しみを持つ方のためにできることがあれば何でもしたいと思ってまいりました。その中で、乳がん患者会の会報に載った「末期がんです。何でもいいから情報を下さい」という患者さんのお手紙に出合いました。
それは1997年のことで、私は、その頃読んで深く心に染みていた、進行がんについてのアメリカ国立がん研究所発行の小冊子を、翻訳して送ることにしました。どう思われるだろうと心配していましたが、とても喜んでくださって、お元気になられました。そこで、多くの他の方々にもお役に立つのではないかと思い、その翻訳した小冊子に『一日一日を大切に生ききる』という題をつけて手作り本として出したところ、新聞に紹介されて全国から申し込みの手紙がたくさん届きました。その多くに、ご自分の現在の状況や思いが書かれていたのです。そこで、誰かに気持ちを話したいという患者さんやご家族が多くいらっしゃるということがわかりました。
当時私は、地方自治体の電話相談員ボランティアをしていて、人は心の中の思いを語ることでほっと安心することができることを実感していましたので、がん患者さん・ご家族のための電話相談があれば良いのではないかと思いつきました。そこで、相談員仲間に呼びかけ、臨床心理士の先生方のご協力を得て、1年間勉強し、患者さんやご家族のための電話相談を始めたのです。
臨床心理士の先生を交えた月例会の様子
その後、2003年には、がん体験者の方々にも、傾聴の勉強を経て会に参加していただき、現在は、一緒に自治体のボランティアをしていた電話相談員と体験者合わせて10名で、お話を聴かせていただいています。臨床心理士の先生方3名も、当初からボランティアで参加されていて、聴き方の研修をしていただいたり、心の支えになって下さっています。他に、資金援助をして下さる賛助会員の方もいらっしゃいます。
6年間、電話相談でお話を聴かせていただいて、患者さんやご家族の方の生きる力の大きさをしみじみと感じました。
電話をかけてこられる方は、がんという病名に怖れを感じたり、これから先のことを不安に思ったり、なぜ自分や家族ががんになるのだろうと割り切れない思いを抱いたり、周りの人は皆健康そうなのに自分だけが病に苦しんでいると感じて独りぼっちになったような寂しさを抱えていたりします。また、どの治療法を選ぼうかとか、次回の抗がん剤治療を受けても副作用は大丈夫だろうかと迷って決心がつかないこともありますし、いっそ死にたいくらいつらいと訴える方もいらっしゃいます。
こうしたことは、人に話してみてもどうにもならないことのように見えますが、時間をかけて状況を細やかに語っていくうちに、言いたいことが十分に言えたとほっとすることがあります。すると、気持ちがすっきりして落ち着き、おのずから私はこうしてみようと思えるものが浮かび上がってきて、心が定まります。
あるいは、自分は何もできない、役に立たない人間になったような気がしてたがそうではない、病床に寝ていても、周囲の人たちとこんなにも深い心のつながりを持っているではないか、今生きてここに在ることには大きな意味があったのだと気づかれることもあります。そこに心のよりどころを発見されると、再び生きる勇気が湧いてくるのです。
どんなに苦しい思いをしている方も、その心の奥底には必ず生きる希望と喜びが隠れています。人は一時的に絶望的な気持ちになることはあっても、いつまでも落ち込んだままではいません。必ず希望の種は見つかるのです。私たちは、多くの患者さんやご家族のお話を聴くことで、“いのちある限り、人には希望がある”ということを教えていただいたように思います。
人と人との間には深いつながりがあります。患者さんとご家族や友人、患者さんと医療関係者、また話し手と聴き手の間で深く心が通い合っていることが実感できると、それは大きな満足感となって双方の人を支えることができると感じます。この世で最も大切なものは、人と人との間にあるこの心のつながりなのではないでしょうか。
電話相談は、思いを語る場を提供してお話の続く間、悲しみや喜びを共にし、共に生きることでお互いを支えあうことのできるボランティア活動だと思っています。
がん心のケアの会
〒468―0028愛知県名古屋市天白区島田黒石1213
<がん心のケアほっとライン>
TEL052-836-7565(木、金曜日10時~16時)
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