NPO法人グループ・ネクサス
納得の治療選択のために、適切な医療情報の提供を
代表の天野慎介さん
悪性リンパ腫の患者団体として、医療格差の是正に努める
悪性リンパ腫は、白血病などと同じ血液の悪性腫瘍の1つで、白血球の中のリンパ球ががん化して、リンパ節の腫れなどの症状が出る病気です。日本国内では、年間1万人以上が発症し、その患者数は増え続けています。
悪性リンパ腫は、かつては治療が難しいとされていましたが、放射線治療や化学療法、造血幹細胞移植(血液細胞の元となる造血幹細胞を、患者さん自身や患者さん以外のドナーさんからあらかじめ採取・保存し、抗がん剤を投与した後に、造血幹細胞を患者さんの体に輸血して戻す治療法)、そしてリツキサン(一般名リツキシマブ)に代表される分子標的治療薬などの新しい治療薬の進歩に伴い、より多くの患者さんに治癒が期待できるがんとなってきました。
しかし、血液のがんの治療法の進歩は文字通り「日進月歩」であり、治療法の選択にあたって患者さんが苦慮することも少なくありません。また、悪性リンパ腫は細かく分けると30種類以上の病理タイプに分けられ、それぞれ病態や治療方針が異なってくる場合もあるので、患者さんが適切な医療情報をもとに、充分納得して治療を選択することが重要となってきています。
グループ・ネクサスは、悪性リンパ腫の患者団体として2001年12月に発足し、2005年11月末現在およそ650名の会員が全国にいらっしゃいます。
東京、名古屋、大阪、福岡にて血液疾患を専門とする医師を招き、医療講演会を開催して、日進月歩である治療法についての情報を患者さんに提供するとともに、各地で交流会や「お茶会」(患者さんやご家族による茶話会)を開催し、交流と情報交換の場を提供しています。
IT社会の進展により、患者さんは自宅や病院のベッドの上から、インターネットに接続して医療情報や交流の場を得ることができるようになりました。当会は、ホームページで医療情報のページや掲示板を設けるとともに、会員や医療関係者を対象としたメーリングリストを設けています。
メーリングリストに参加している入院中の患者さんは、パソコンや携帯電話から自分の治療や悩みについてメーリングリストに電子メールを投稿し、それに他のメンバーから返信が来るといった形で、活発なネットコミュニティが形成されています。
しかし、がんの患者さんは高齢の方も多く、電子メールやインターネットをしない方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々に適切な医療情報が行き渡らないと、それは情報格差にとどまらず、医療格差に繋がりかねない危険性もあります。
『悪性リンパ腫と言われたら』
そこで当会は、会員の方を対象とした会報『ネクサス通信』を発行し、各地の医療講演会の講演録や会員の方の闘病記を掲載するなどして、インターネットを利用しない方にも専門的な情報や他の患者さんとの交流の場を提供できるよう努力しています。
また、日本財団及び日本製薬工業協会の助成をもとに、悪性リンパ腫の病態や治療、副作用の対処法などについて体系的に記した患者さんへの説明用冊子『悪性リンパ腫と言われたら』(A5判24頁)を2万部作成し、入手を希望する患者さんには冊子を無償配布するとともに、全国の血液内科のある医療機関に発送しています。
この冊子については、患者さんやご家族から入手を希望する連絡を連日のように頂いています。また、例えば国立がん研究センターや東大病院などで冊子を置いていただくなど、その他各地の多くの医療機関で冊子をご活用いただいています。一方で、「患者さんは医療情報を知る必要はない」との考え方の医療機関も未だにあると聞きます。これは情報格差、医療格差であると言っても過言ではないと感じます。
すべての患者さんに治癒を期待できるというわけではなく、治療によって重篤な副作用を引き起こす可能性もある状況では、「患者さんが適切な医療情報を得て、納得して治療を受けること」は不可欠です。
当会は2005年11月に、東京都に「特定非営利活動法人(NPO法人)グループ・ネクサス」の設立認証申請を行いました。
当会はNPO法人として認証された後も、引き続き情報提供や政策提言、他の患者団体との連携を推し進めることで、このような医療格差をなくし、日本の医療環境の向上に寄与していきたいと考えています。
NPO法人グループ・ネクサス(悪性リンパ腫患者・家族連絡会)
代表・天野慎介
〒158-0091 東京都世田谷区中町2-21-12 なかまちNPOセンター内
FAX:020-4624-4204
ホームページ
同じカテゴリーの最新記事
- 新しくWell-beingをテーマに 4つの活動を柱に日本骨髄腫患者の会の輪を広げたい
- 患者会E-BeC「第10回 乳房再建全国キャラバン」を広島で開催
- 「小児脳幹部グリオーマ」患者会 厚生労働大臣に直接陳情
- 「医師と患者で、一緒に考えよう」をテーマに BCネットワークが第6回乳がんタウンホールミーティングを開催
- 乳がん体験者ががん患者を支える 患者の悩み、必要なサポートとは?
- リンパ浮腫について知ろう、語ろう、「リンパカフェ」
- 「乳房再建手術がわかる」 セミナーを開催
- BCネットワークでは初めて、患者さんの経験談をメインに開催
- 患者さんや家族の気持ちが、少しでも楽になるように「まる」と名付ける
- 「小児脳幹部グリオーマ」に関する要望書を厚生労働大臣宛に提出