初期の直腸がん。一番安全な手術方法を選びたい
トイレで便に鮮血が付いているのに気がつきました。病院で検査をした結果、直腸に丸い形をした腫瘍が見つかりました。初期の直腸がんで、肛門を温存して、摘出手術が可能とのことです。ただ、手術には、縫合不全などさまざまな合併症が起こるとの説明を受けました。私は、高血圧の持病があり、10数年前から降圧剤の服用を続けています。一番安全な手術方法を教えてください。
(岐阜県 女性 68歳)
A 開腹手術が一般的。高血圧はあまり気にせずに
基本的には100パーセント安全な手術はありません。大腸がんの手術に限らず、あらゆる手術で、術後にいろいろな不都合が起こることもあります。手術を受けるときには、このことを十分に理解していただく必要があります。
非常に肛門に近く、早期の直腸がんであれば、肛門から挿入した内視鏡で治療可能です。それが無理な場合には、(低位)前方切除術、あるいは人工肛門を併設する直腸切断術のいずれかが選択されます。
(低位)前方切除術の場合、基本的には開腹し、大腸の切除、リンパ節郭清、残った腸管をつなぎ合わせて吻合という順序で行います。多くの施設では、残った腸管をつなぎ合わせる際には、通常は自動縫合器という器械が用いられます。なお、初期の直腸がんでは、開腹せずに腹腔鏡を用いて手術を行う施設もありますが、肛門に近い直腸がんでは合併症の発生率が高く、現時点では開腹して行うのが一般的です。
直腸がんの手術の合併症として、腸管のつなぎ目(吻合部)から便が漏れる縫合不全が約5パーセントの割合で起こります。医療技術は進歩していますが、残念ながら、縫合不全をゼロにすることはできません。縫合不全を生じた場合には、腹膜炎を経てお腹に膿が貯まり、熱が出ます。こうした場合には、一時的に吻合部よりも口側に人工肛門を作って、便が縫合不全の場所に流れないようにします。3~4カ月後に人工肛門を閉鎖することは可能になります。縫合不全が命にかかわることは稀です。
このほか、手術後の一般的な合併症として、心臓に関わる心不全や心筋梗塞など、肺に関わる無気肺、肺炎、塞栓症などがあります。なお、高血圧の持病についてですが、高血圧のない人よりはリスクがあるかも知れませんが、大きなリスクにはなりません。あまり気になさらないでください。