上行結腸に1センチのがん。内視鏡治療で治るか?

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2005年7月
更新:2014年1月

  

健康診断で、上行結腸に平坦な形のポリープが発見されました。詳しい検査を受けてみると、がんと診断されました。大きさは1センチ程度ですが、がんが粘膜下層まで達しているので、開腹手術をすると言われました。できれば開腹手術は避けたいと思っています。このような場合、内視鏡で切除することはできないのでしょうか。内視鏡が適応になる条件について教えて下さい。また、放射線や抗がん剤で治療することはできないのでしょうか。

(香川県 男性 48歳)

A 4つの条件を満たせば可能

大腸壁は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、しょう膜下層、しょう膜の5層に分かれています。このうち、がん細胞が粘膜内にとどまっているものは転移している可能性はありません。日本ではこの段階のものも大腸がんと呼んでいますが、アメリカではがんとは呼んでいないくらいの段階です。

大腸がんで内視鏡治療(正しくは「内視鏡的粘膜切除術」)を行うのは、基本的には、直径2センチ以下のがんで、がんが粘膜にとどまっている場合です。

ご相談者のがんは粘膜下層まで達しているので、上記から考えると、内視鏡治療の対象にはなりません。粘膜下層まで達しているがんの場合、転移する可能性があるためです。

ただし、次の4点を満たす場合は、がんが粘膜下層まで達している場合も内視鏡治療の対象になります。それは、

(1)粘膜下層への浸潤が300マイクロメートル(1マイクロメートル=0.001ミリ)程度の微小浸潤である。

(2)内視鏡でがんを切除した場合、その切除箇所の断端部が陰性である。

(3)がんの組織型が未分化や低分化ではなく、中分化ないしは高分化である。

(4)顕微鏡で見て、リンパ管や静脈にがん細胞が認められない。

の4点です。

この4点を満たしていれば、転移の可能性が非常に低いと考えられ、外科的な手術(開腹手術や腹腔鏡手術)を行う必要がありません。

がんの大きさは1センチ程度ということなので、この点では、2センチ以下を対象としている内視鏡治療の対象になります。

一度、内視鏡治療を受けてみて、がん細胞を病理検査し、上記の4点が満たされていれば、そのまま治療を終了することもできます。この4点のすべて、あるいはいずれかが満たされない場合は、内視鏡治療に続いて外科的手術を受けられるとよいと思います。

大腸がんの場合、外科的手術であれ、内視鏡治療であれ、切除が唯一の根治方法です。ですから、放射線や抗がん剤の治療だけで治癒を望むことはできません。

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