直腸がんで、肝臓および骨盤内リンパ節に転移。今後の治療法は?
父(58歳)のことでご相談します。父は2007年12月、直腸がんで、多発性肝転移と骨盤内リンパ節転移があると診断されました。手術を受ける予定でしたが、化学放射線療法に変更になりました。具体的には、原発巣に50グレイの放射線を照射し、5-FU(一般名フルオロウラシル)とエルプラット(一般名オキサリプラチン)の抗がん剤治療を受けました。その後、腫瘍マーカーのCEAは7ナノグラム/ミリリットルに、CA19-9は5920ユニット/ミリリットルになり、原発巣の形は平らになりました。
2008年2月から2009年(今年)2月までの治療の経緯は次のとおりです。
・2008年2月~4月……FOLFOX*
・2008年4月~10月……5-FU+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)
・2008年11月~2009年2月……FOLFOX
この後、画像上、肝臓の転移巣が増えたため、転院し、今年の2月からラジオ波治療を受けました。転院先の病院では、これまでのところ、ラジオ波治療を6回受けて、FOLFIRI*+アバスチン(一般名ベバシズマブ)の抗がん剤治療を9回受けています。現在、原発巣の近くに新たにがんが見つかりました。場所は肛門管の出口付近2センチのところと肛門から8センチのところにそれぞれ1センチ、また肛門から12センチのところに3センチのがんがあります。CEAは78ナノグラム/ミリリットル、CA19-9は24197ユニット/ミリリットルです。腹膜播種(腹腔内全体に多数散らばった状態)が起きていて、腹水が少し出ています。お聞きしたいことは次の3点です。
(1)腹膜播種の治療をしている医療施設や医師を教えてください。
(2)標準治療が終わった後もあきらめずに抗がん剤治療をしてくれる医師を教えてください。
(3)今後どのような治療を受けるのがよいのでしょうか。
(東京都 女性 32歳)
A アービタックスなどが考えられる。主治医に相談を
1つずつお答えします。
(1)大腸がんや胃がんの腹膜播種に対しては、腹腔内への抗がん剤の注入や温熱療法など、様々な治療が試みられてきましたが、現在に至るまで効果が定かな治療法は確立されておりません。
抗がん剤のがん組織中の濃度を腹膜内への注入と静脈内あるいは経口注入で比較した場合、両者で差はないので、腹膜播種に対しては、静脈内あるいは経口投与が選択されています。
腹膜播種に対しては特異的な治療はなく、難治であるのが現状です。
(2)大学病院やがんセンターには大腸がんなどの固形がんに対する抗がん剤治療を専門にしている腫瘍内科医がおります。腫瘍内科医のもとへ未だに使用していないが効果の期待できる薬剤に関するセカンドオピニオンを聞きに行かれるのもよいでしょう。
(3)選択肢の1つとして、FOLFIRIにアービタックス(一般名セツキシマブ)を加える方法があります。
ただし、KRAS遺伝子というがん遺伝子が、正常な機能を有しているワイルドタイプであることが条件です。
FOLFIRI+アービタックスでも効果が現れない場合は、FOLFIRIをFOLFOXに変えて、それとアバスチンかパニツムマブ(一般名。日本では09年9月現在未承認)を併用する方法も考えらます。 後者もKRAS遺伝子がワイルドタイプであることが必要ですし、保険収載されておりませんので自費診療になります。
NCCN(米国包括的がんネットワーク)から出されている治療のガイドラインによると、次の3つの選択肢があります。
A……アービタックス+トポテシンまたはカンプト(一般名はいずれも塩酸イリノテカン)。ただし、アービタックスを使うには、KRAS遺伝子がワイルドタイプであることが条件です。
また、ご相談者はすでにFOLFIRIを使っていて、その中にはトポテシン(またはカンプト)も含まれていますから、その点を考慮する必要があります。
B……アービタックスの単剤、あるいはパニツムマブの単剤。ただし、いずれもKRAS遺伝子がワイルドタイプであることが必要です。
C……臨床試験か緩和治療を受ける。
こうした情報をお知りになった上で、今1度、主治医にご相談ください。
*FOLFOX=5-FU(一般名フルオロウラシル)の持続注入+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)の3剤併用療法
*FOLFIRI=5-FU(一般名フルオロウラシル)の持続注入+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)+トポテシン/カンプト(一般名塩酸イリノテカン)の3剤併用療法