肛門付近の有棘細胞がん。手術は避けたいが…
肛門の近くに有棘細胞がんが認められ、病巣を切除しましたが、その後の検査でリンパ節転移もあることが判明しました。今後の治療としては、「病巣の周りをさらに大きく切除して、リンパ節郭清もする手術」「リンパ節郭清だけをする手術」「手術はしないで、放射線と抗がん剤で治療する方法」の3つがあると言われました。できれば放射線+抗がん剤の治療を選びたいのですが、手術に比べると、効果が心配です。仮に手術を受けることになっても、人工肛門だけは避けたいです。
(福島県 男性 68歳)
A 拡大再手術とリンパ節切除が標準治療。人工肛門の可能性は小さい
有棘細胞がんの治療の基本は手術です。ご相談者のケースでは、「病巣の周りをさらに大きく切除して(=拡大再手術)、リンパ節郭清もする手術」が標準的な手術になります。
人工肛門になることを心配されていますが、肛門付近であっても、有棘細胞がんで人工肛門になることは少ないです。なぜかというと、肛門の中は粘膜で、粘膜は表皮ではないからです。表皮でないということは、有棘細胞は存在しないことになりますから、肛門の中、特に奥のほうには有棘細胞がんはできないのです。
有棘細胞がんができるのは、基本的に外側から見える場所で、肛門付近にできて手術したとしても、一般的には人工肛門には至りません。ただし、腫瘍が非常に大きい場合は、人工肛門にせざるを得ないこともあるかもしれません。主治医に確認されたほうがいいでしょう。
どうしても手術を受けたくないのであれば、放射線と抗がん剤を併せて行う治療法も確かにありますが、確立した治療法ではありません。「治る」とは言えませんが、「効果がある」とは言えます。
選択肢の1つとして、まず放射線と抗がん剤治療を併用した治療法を始め、それが効を奏せば続けていけばよいですし、もし効果のでないときは手術に切り替える方法もあります。
その際は、やはり「リンパ節郭清だけをする手術」ではなく、「病巣の周りをさらに大きく切除して、リンパ節郭清もする手術」を受けられることをお勧めします。病巣の手術は小さい範囲のままで、転移しているリンパ節だけを切除するのでは、初めの病巣の周りに再発するリスクは高いままだからです。