1期の悪性黒色腫。手術後のインターフェロン療法はやめてもよいか
足の裏のほくろが気になり、皮膚科を受診したところ、がんの疑いがあると言われました。ほくろを切除して調べてもらったら、1期の悪性黒色腫(メラノーマ)と診断され、広い範囲を切除する手術を受けました。手術後は再発予防のためにインターフェロンを使っています。検査の結果、転移など異常は見られないが、念のためにインターフェロンは続けると言われました。しかし副作用がつらく、治療費が高いので、やめようかと悩んでいます。
(茨城県 女性 53歳)
A 標準治療は手術。インターフェロンの効果は定まっていない
1期の悪性黒色腫の治療法は、原則として手術です。手術以外の治療法については確立されたものがありません。ですから、手術が上手くいっていれば、手術後に、さらにインターフェロン(正確には「インターフェロンβ」)を使い続けたほうが治療成績がよいという証拠はないのです。ただし、悪性黒色腫の1期と言いましても簡単にひとまとめにできない場合がありますので、もう少し詳しく説明してみます。
皮膚は大きく2つの層から成り立っていて、表面を「表皮」、その下を「真皮」と呼んでいます。真皮の下は皮下脂肪です。
悪性黒色腫は、表皮の中のメラニン細胞から発生するがんで、「ほくろのがん」とも呼ばれ、悪性度が高く、表皮から真皮へと浸潤し、比較的早い時期にリンパ節や全身に転移するので、とりわけ注意が必要です。
悪性黒色腫の病期は、1~4期に分かれます。このうち、がんの厚さが1ミリ以下のものが1期になります。
1期の場合、先に説明したように、原則として手術だけの治療になります。ただし、同じ1期でも、がんのできた場所などによっては、より深いところまでがんが浸潤していることがあります。それは、からだは、部位によって皮膚の厚みが違うからです。
たとえば、足の裏の皮膚は厚いけれど、まぶたの皮膚は非常に薄いです。そうすると、厚さが同じ1ミリのがんでも、がんが達している層は違ってきます。足の裏では浅いところにとどまっているけれども、まぶたでは真皮の深い層まで達していることもありうるわけです。
そうなると、リンパや血液の流れに乗って、転移する可能性も高まります。ご相談者は足の裏の悪性黒色腫1期ですから、もしかしたら、がんが浸潤している深さはあまり深くないかもしれません。
その場合でも、初回の手術より前に少し削るような処置を受けていたり、腫瘍の中に潰瘍ができている場合は、同じ1期の中でも、少し2期に近い1期と考えて念のためにインターフェロンを投与することはあります。しかし、再発予防効果の実証されていないものを「念のため」使うかどうか、判断の難しいところです。
副作用がつらいとのことですが、インターフェロンの主な副作用は発熱です。発熱は、インターフェロンを投与する直前に解熱剤を使うことでほぼ防ぐことができます。
また、インターフェロンには保険が利きますが、値段の高い薬剤ですので確かにご負担になると思います。
ちなみに、欧米各国では、悪性黒色腫の2期まで、手術以外の治療は特に行いません。また、当センターの悪性黒色腫の患者さんの中には上記のような説明をお聞きになった上でインターフェロン療法を選択される方もおられます。こうしたことを知った上で、再度、主治医と話し合って決められたらどうでしょうか。