慢性骨髄性白血病で、グリベックが効かなくなったときは?

回答者:薄井 紀子
東京慈恵会医科大学付属第3病院 腫瘍・血液内科診療部長
発行:2010年11月
更新:2013年12月

  

慢性骨髄性白血病と診断され、分子標的薬のグリベック(一般名イマチニブ)を服用しています。幸い非常によく効いていて、体調もよいです。しかしこの先、グリベックが効かなくなることもあると、主治医に言われています。グリベックが効かなくなった場合、タシグナ(一般名ニロチニブ)やスプリセル(一般名ダサチニブ)といった、新しい分子標的薬があると聞きました。今後、タシグナやスプリセルに切り替えることも必要になるでしょうか。また、グリベックが効かなくなった場合、どちらがより望ましい治療でしょうか。

(三重県 男性 53歳)

A タシグナやスプリセルなどに切り替える。副作用にも留意

グリベックが大変効いていて、体調もよいということですから、今後もグリベックを服用し続けることが重要です。

しかし、グリベックが効かなくなるケースも、なかにはあります。その時期は、細胞遺伝学的な寛解になった患者さんでは、寛解になってから1~2年目が最も多いといわれます。逆にいうと、寛解後、3年目以降はグリベックが効かなくなることは少なくなります。また、細胞遺伝学的な寛解よりもさらに進んだ分子遺伝学的な寛解に至れば、グリベックが奏効しなくなる割合はかなり下がると考えられます。

グリベックが効かなくなる理由は主に2つあります。

1つ目は、グリベックを服用しなくなることです。効いているからといって、飲むのをやめると、慢性骨髄性白血病が増悪ないしは再発することがあります。

2つ目として、きちんと飲んでいるにもかかわらず、グリベックが効かなくなることがあります。これはグリベックに対して耐性を持った白血病細胞が出てくるためです。耐性が起こる割合は、慢性期では10パーセントほどです。

グリベックが効かなくなった場合、あるいは、副作用がひどい場合などは、タシグナかスプリセルに切り替えることになります。

タシグナもスプリセルも、グリベックより強力な薬で、血液の副作用はグリベックより強い場合があります。ただし、グリベックでは出た副作用が、タシグナやスプリセルでは出ないこともあります。たとえば、グリベックで胃の調子が悪くなったり、顔がとてもむくんだりした患者さんが、タシグナやスプリセルに切り替えると、それらの症状が治まり、副作用が出なくなるといった例もあります。とはいえ、タシグナとスプリセルはまだ新しい薬のため、治療効果や副作用については引き続き検討していくことが必要です。

タシグナとスプリセルのどちらがより良いかということに関しては、まだ学術的に検討している段階で、結論は出ていません。

また、ボスチニブ(一般名)という薬の治験が現在、行われています。ボスチニブはスプリセルによく似た薬で、スプリセルの副作用をやや改善すると期待されています。慢性骨髄性白血病に対して、グリベック、タシグナ、スプリセル、ボスチニブなどのどれがより良い薬剤であるか、恐らく数年以内にさまざまなデータが出て明らかになるのではないかと思います。

さて、回答の冒頭で「今後もグリベックを服用し続けることが重要です」と書きましたが、グリベックを飲み続け、長期に渡り分子遺伝学的な寛解が得られる場合、グリベックの服用をやめてもよいのではないかという意見も最近出ています。グリベックをやめて半年以上寛解が持続すれば、そのままグリベックの服用をやめられるかもしれません。再発した場合は、グリベックを再び服用すれば、多くは再び寛解に到達します。ただし、この方法はまだ一般的ではなく、将来の可能性としてありうるという段階です。現状、グリベックが効いているのであれば、そのまま服用し続けることが大切です。

細胞遺伝学的な寛解=染色体の検査によって、白血病細胞が検出できなくなった状態で、身体内の白血病細胞が100万~1億個程度になった状態
分子遺伝学的な寛解=寛解の最終段階で、身体内の白血病細胞が100万個以下になった状態。通常の検査では検出不能である

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