フィラデルフィア染色体陽性白血病。移植方法の選択、その可能性とリスクは?
43歳の夫がフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病と診断されました。医師からは、移植以外の選択肢はないと言われましたが、骨髄バンクでドナー(提供者)を探す時間的余裕がありません。割に体格が大きいため、臍帯血移植にも不安があります。臍帯血移植も含め、その他の移植方法についてはどの程度の可能性、またはリスクがあるのでしょうか。
(静岡県 女性 39歳)
A 治癒を望むなら、第一寛解期に移植をすべき
フィラデルフィア染色体陽性白血病は、急性リンパ性白血病の中でも特に治療が難しく、化学療法で治癒が得られる可能性は極めて小さいのが現状です。造血細胞移植の成績も決して良好とはいえず、よい状態(第一寛解期)で移植しても、治癒率は5割に達しません。
第一寛解期以外での移植の成功率は極めて低く、その原因の大部分は移植後の再発にあります。そのため、治癒を望むなら、第一寛解期に移植をすべきです。
ただ第一寛解のどの時点で移植を行うかべきかはいろいろな要素があって、簡単には決定できません。ある程度、化学療法を継続することで、より状態の良い寛解が維持できる場合があるので、移植は必ずしも寛解を得られたらすぐに行わなければいけないとも限らないのです。とはいえ、このことを予測することは困難なので、寛解が得られたら、化学療法を継続しながら、できるだけ早期に移植の準備を進めていくべきでしょう。
移植のドナーと骨髄や末梢血などの細胞ソースに関しては、まず血縁者でできるだけ広い範囲で探すべきです。血縁者とは、この場合、いとこまで、すなわち4親等内と考えて良いと思います。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の場合、HLAが1抗原不一致以内で移植可能な血縁者のドナーが得られれば、それを用いて移植すべきでしょう。HLAとは、移植のときに相性を示す白血球の型のことです。また、1抗原不一致以内とは、HLAがすべて一致しているか、1抗原だけ不一致のことをいいます。
骨髄バンクを介した非血縁者間移植に関しても、あきらめずに話を進めて下さい。非血縁者のドナーからは、最終的には、移植しなかったり、できなかったりする可能性はありますが、悩んでいる間に時間がどんどんたつので、非血縁者のドナーも探しておくべきです。ただし、経済的負担はあるし、それがまったく無駄になってしまう可能性はご承知おき下さい。
血縁者と骨髄バンクにドナーが見いだせない場合や、骨髄バンクのコーディネートを待てない病状(この見極めは難しい)となれば、臍帯血移植を考慮します。ただし、成人の臍帯血移植に関しては、データが乏しく、これまで報告されてきた成績の多くは必ずしも良好ではありません。特に、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に関しては、良好な成績は報告されていなく、多分に実験的な医療になります。
移植に適した臍帯血が手に入るかどうかは、悩んでいても始まりません。体重とHLAをもとに、すぐにインターネットで調べるべきでしょう。専門的な話になりますが、一般的には、HLA2座不一致以内で、体重あたりの細胞数2×10E7(2×107)以上のものであれば移植可能といわれています。