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急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の新しい治療薬の効果
遺伝子レベルの解明で進歩著しい急性白血病の治療

監修:内丸薫 東京大学医科学研究所付属病院内科・先端医療研究センター分子療法分野准教授
取材・文:町口充
発行:2008年9月
更新:2013年4月

  
内丸薫さん
東京大学医科学研究所付属病院
内科・先端医療研究センター
分子療法分野准教授の
内丸薫さん

骨髄の中で白血球のもとになる未熟な細胞が腫瘍化して異常増殖し、正常な造血が行われなくなるのが急性白血病。
急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病とがあるが、近年、遺伝子レベルでの解明が進み、検査・診断法や治療法が格段に進歩してきた結果、治療成績が向上している。今回は成人白血病についてまとめた。

01年からWHO分類に変更

[急性白血病の症状]

正常造血が抑制されることによる症状
・好中球減少 易感染性 肺炎、敗血症など重症の細菌、
真菌感染症 発熱
・貧血 全身組織の酸素不足、全身倦怠感、息切れ
それに対応する心臓の症状 動悸
・血小板減少 出血症状 鼻出血、歯肉出血
腫瘍細胞=白血病細胞の増殖そのものによる症状
・各種臓器への浸潤、腫瘤形成
・骨痛
・発熱
(データ:IMSUT)

「急性白血病は比較的急激な経過をとるので、年に1回の健康診断では発見されないことが多い」

と語るのは、東京大学医科学研究所准教授の内丸薫さん。偶然に健診で見つかるケースもあるが、一般的には原因不明の発熱とか、貧血に伴う息切れ・動悸、出血、まれに骨痛などで医者の診察を受け、血液検査で白血病を疑うケースがほとんどという。

急性白血病にはいくつものタイプがあり、これまでは急性骨髄性白血病をM0~M7の8種類、急性リンパ性白血病をL1~L3の3種類に分けるFAB分類(急性白血病の形態分類として、広く世界中で用いられている分類)が国際的に広く普及していた。

しかし、急性白血病の研究が進んだ結果、FAB分類では限界があることがわかり、世界保健機関(WHO)が01年に新たな分類法として発表したのがWHO分類だ。変更の理由について内丸さんはこう語る。

「FAB分類は医療現場ですぐにできる比較的簡単な分類です。しかし、FAB分類では病気の本質に迫ることはできません。白血病の本質は何かといえば、染色体転座(後述)を含む染色体や遺伝子の異常が細胞を腫瘍化しているということです。そこで、染色体・遺伝子の異常を考慮して分類し直したのがWHO分類です」

そうはいっても、臨床現場で長い間慣れ親しまれた分類法はFAB分類であり、臨床研究の論文などもFAB分類に従っているものが多いため、現場では便宜上、FAB分類を使うケースも多いという。

治療と関係深い検査・診断

写真:PCR検査中の検査技師さん
PCR検査中の検査技師さん

具体的に検査・診断の流れをみてみよう。

近年、急性白血病の遺伝子レベルでの解明が進み、どのような遺伝子異常がどんなタイプの白血病を引き起こすかが明らかになってきているだけに、遺伝子異常を詳しく分析することは治療方針とも密接に関係しており、検査・診断の重要度はいっそう増している。

確定診断は、骨髄穿刺(通称・マルク、ドイツ語で骨髄の意味)により標本をとって調べる。標本をペルオキシダーゼ染色と呼ばれる方法で染色して骨髄性かリンパ性かを見分け、どんなタイプの白血病かを詳しく知るため、細胞の膜表面にあるCD抗原という特異な抗原(細胞の種類毎に決まっている目印となる物質)を調べる表面マーカー分析を行う。次に白血病細胞がどんな遺伝子異常を持っているかを調べる染色体分析が行われる。

白血病で多い染色体異常は、染色体転座と呼ばれる異常だ。各細胞の核の中にあるのが染色体。両親から受け継いだ遺伝情報が詰まっていて、染色体は遺伝子の集合体といえる。染色体の一部がちぎれてしまい、ちぎれたもの同士が互いに相手を交換してくっついた状態を染色体転座という。

「どの染色体が転座するかによって、どういう白血病になるかが決まり、白血病そのものの本質がわかってきます。タチがいいか悪いかも決まってくるので、治療に対する反応も転座を調べれば推定できるようになります」(内丸さん)

染色体転座を調べる方法としては、ターゲットを絞って特定の遺伝子を調べる方法もあり、FISH法、PCR法などがそれにあたる。FISH法は蛍光染色により異常を調べる方法。また、PCR法はわずかしかないDNA(遺伝子の本体)の断片を増幅させて調べる方法で、腫瘍細胞がわずかで異常遺伝子が微量しか存在しなくても検出できるという利点がある。すべての白血病に可能な診断ではないが、有力な診断方法である。

最近は、これらを網羅的に調べてより迅速に結果が得られるPCRキメラスクリーニングという最新の検査法が普及しており、臨床現場での診断に一役買っているという。


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