今春には再発膠芽腫に新たな治療機器が承認
治療法は着実に進歩!神経膠腫の最新治療
悪性脳腫瘍で最も多い神経膠腫。悪性度により、治療は手術だけではなく、放射線治療や化学療法が必要となってくる。そうした中、今年(2015年)3月には、神経膠腫の中でも最も悪性度の高い膠芽腫に対する再発治療として、新たな治療機器が承認された。神経膠腫の治療は着実に進歩している。
脳腫瘍の中で多い神経膠腫
脳腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍を含め、多くの種類がある。国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科科長の成田善孝さんによれば、神経膠腫はその中でも頻度が高いという。
「脳にできる腫瘍には、がんの転移でできる転移性脳腫瘍と、脳から発生する原発性脳腫瘍がありますが、数が圧倒的に多いのは転移性脳腫瘍です。原発性脳腫瘍の中でも多い神経膠腫ですが、それでも発生数は年間4,000~5,000人ほどです」
細かく分類していくと、神経膠腫は何種類かのタイプに分けられる(図1)。
「大きく分けると、星細胞腫と乏突起膠腫に分かれ、これらが混じっている乏突起星細胞腫があります。そして、これらが悪性度によって、グレード1~4に分類されています。グレード1が良性腫瘍で、グレード2~4は悪性腫瘍です」
神経膠腫には良性腫瘍も一部含まれるが、ほとんどが悪性腫瘍である。良性腫瘍は手術で基本的に治癒する。しかし、悪性腫瘍の多くは、手術しても再発が起きてくる。
「例えば、びまん性星細胞腫で手術をしても、2~5年ほどで再発してくることがあります。再発すると悪性度が増し、グレード3となります。またその後治療をしても、1~2年後に再発し、グレード4へと進行することがあります。グレード4の神経膠腫は膠芽腫と呼ばれ、グレード2と3を経て膠芽腫になることもありますし、いきなり膠芽腫が発生することもあります。最も多いのは、いきなり膠芽腫になるケースで、発症から診断まで3カ月程度と考えられます」(図2)
(治癒した例)
悪性の神経膠腫でも、全てが治らないわけではない。グレード2であれば、治癒する人は3割ほどいるし、20年以上生存している人もいるという(写真3)。
「神経膠腫で現れる症状は、腫瘍が脳のどこにできるかで異なっています。前頭葉の右側のように、あまり使われていない部位だと、大きくなるまで症状が出ないこともあります。また、腫瘍が大きくなると頭蓋内圧が亢進し、そのために頭痛、嘔吐などの症状が現れてきます」
最も悪性度が高い膠芽腫の場合、腫瘍の増殖スピードは速く、週単位で症状が悪化するという。
正確な診断を下すため 組織を採取して調べる
脳腫瘍の疑いがある場合、神経学的所見(意識レベル、麻痺の状態など)が調べられ、CT検査を行うのが一般的。それからMRI検査が行われる。
「CTやMRIでは、腫瘍の形とできている部位を調べます。脳神経外科医が画像を見れば、それがどういう腫瘍なのか、だいたい分かります。ただ、正確なことは、手術をして組織を採取し、顕微鏡で調べてみなければ分かりません」
そのため、手術中には迅速病理診断と呼ばれる検査が行われる。術中に組織を採取して調べ、30分ほどで結果が出る検査だ。
「脳腫瘍の中には、放射線治療や化学療法がよく効くものがあります。このような腫瘍なら、手術で無理に全部取らなくても、手術後に放射線や抗がん薬で治療すれば済みます。一方で、悪性の神経膠腫であれば、できるだけ腫瘍を摘出しておく必要があります。手術中に迅速病理診断でおおよそのことが分かれば、適切な治療を行えます。これは非常に重要です」
脳腫瘍の手術は、迅速病理診断のできる医療機関で受けるのが望ましいという。
また摘出した腫瘍の病理検査は、手術後1週間~10日ほどで最終結果が出る。そこで確定診断がつき、手術だけでよいのか、手術後に放射線治療や化学療法を加えるのか、といった治療方針が決められる。
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