乳がん長期生存の秘密
乳がんが再発しても、長期生存するための7箇条

発行:2009年6月
更新:2013年5月

  

医療面から日々の生活、そして、がんとの向き合い方など、心の側面に至るまで、取材を通して浮かび上がった、再発患者が長期生存を実現するためのポイントをまとめてみた――。

第1条 医療の進歩の恩恵を受ける

再発乳がんに対する治療は、急激なスピードで進化を続けている。「再発乳がんの治療は、まさに日進月歩。半年ごとに新薬が出てきている状況」と聖路加国際病院乳腺外科部長の中村清吾さんも語っているように、再発乳がんの治療は新たな時代にさしかかっている。こうした状況変化の中で、画期的な新薬が次々と開発され、多くの患者たちに恩恵をもたらしている。

この「新たな治療」を象徴するのが、分子標的薬ハーセプチンだ。ハーセプチンの効果は画期的で、乳がん再発患者さん13人のエピソードで取りあげた患者の中でも新川さん、橋本さん、中村さんの3人がハーセプチンによる治療で再発がんが消滅、その後も投与を続けながら元気な日々を送っている。もちろんすべての再発乳がん患者にこの治療薬の投与が適用されるわけではない。しかし、開発中の治療薬が登場することにより、長期生存の可能性が広がっていくことは間違いない。

こうした医療技術の革新の恩恵をあずかるには、当然ながら、再発乳がんの治療についての情報収集が不可欠だ。日々進歩する再発乳がん治療がどう変化しているのか、標準治療を理解したうえで最新の治療法についても情報を収集していきたい。

第2条 患者会に参加する

一般に初発の乳がんは予後がよく、患者たちの交流も活発だ。しかし、そのがんが再発すると状況は一変する。患者会イデアフォーの中澤さんが話すように、再発患者は「仲間から離脱を余儀なくされ、1人で病気と立ち向かわざるを得なくなる」のが実情だ。孤立した患者はさらに落ち込み、それが病状の悪化に拍車をかけることも少なくない。

長期生存を目指すには、健やかに病気に向かい合う姿勢が求められる。そのためには仲間の存在は、不可欠である。自分1人ではないことを再確認し、苦しみを分かち合い、支え合うことで「ともに、がんと対峙する」力を得ることができる。そうした仲間との交流を実現してくれるのが、患者会だ。

患者会あけぼの千葉の高柳さんは、同会のおしゃべり会に参加して「明るくなり、日々の暮らしが前向きになった」と言う。

「仲間とともに生きる喜びを知る」――そのこと1つをとってみても、患者会に参加することの意味が理解できるだろう。

第3条 前向きに行動する

あけぼの千葉の中村さんは再発後、「それまで、生活のすべてを主人まかせだったのが、何ごとも自分で考えて行動するようになった」と言う。

食生活を変え、また日々の暮らしの中にウォーキング、スイミングなどの運動を取り入れ、さらにそれまでは医師まかせだった治療法の選択も、自分で行うようになっている。

再発後、自らの生き方を見直し、前向きに人生を送ろう、1日1日を大切に生きよう、と考えた結果といえるだろう。このことは、他の患者にも共通している。同じあけぼの千葉の高柳さんは、「何としても、自分の手で子どもを育て上げる」ことを目標に、過酷な抗がん剤治療を受け続けている。

未来に目を向け、前向きに、主体的に行動することも長期生存を果たすうえで欠かせないポイントの1つといえるだろう。

第4条 “患者力”を身につける

緒方さん(あけぼの千葉)は、再発後、多くの治療専門書を読破し、患者会を通じて患者仲間との交流を重ねることで“患者力”を身につけた。“患者力”とは、自らの病気を理解したうえで、患者自らが治療について考える力といえる。「医師を信頼し、医師にすべてを任せる」ことで安寧を得る患者もいるが、長期生存を可能にしている多くの患者が、こうした患者力を身につけることで、医師とより深い信頼関係を築き、主体的に治療に取り組んでいた。納得できる治療を受けるためにも、最低限の患者力は獲得したい。

第5条 ストレスをためず、豊かな生活をする

緒方さんは、「がんに向かい合うよりも自分がイキイキと暮らせることを優先する」と言う。その結果、「――ねばならない」という自分を縛る考え方からの脱却を果たしている。

また、くにとみ内科外科クリニック院長の國富道人さん、国際医療福祉大学付属三田病院医師の岡崎みさとさんも「がんと距離を置いて、自分の生活を楽しむことが大切」と、口を揃える。もちろん、がんやその治療に対して真摯に対峙する姿勢も大切だ。しかし、岡崎さんも話しているように生活そのものをがんに支配されるようになっては本末転倒である。がんと向き合いながらも、自らの生を精一杯謳歌したい。

第6条 がんを特別な病気と思わない

くにとみ内科外科クリニックで治療を続けている渡辺さんが「がんを特別な病気だとは思わない」と、話すように、多くの患者は再発後も、それまでと同じように働き、同じ暮らしを営んでいた。でも、決して無理はしない。そうした生き方が、豊かな生を実現している。

渡辺さんは、「周囲が、特別扱いをしなかったことがよかった」と言う。しかし、それは渡辺さん自身が、がんを特別視しなかったゆえんでもある。日本人の2人に1人ががんを患う時代となった今、「がんも数ある病気のうちの1つ」と位置づけて治療に臨みたい。

第7条 希望を捨てない、あきらめない

冒頭のイデアフォーの田村さんは再発による骨転移で、下半身全まひというダメージを負い、リハビリ専門病院でも「それ以上何を望むのか」と突き放された。しかし田村さんは、自らの未来に希望を持ち続け、絶望的な状況を克服した。田村さんだけでなく、ここで紹介した13人の患者は、全員が希望を捨てず、あきらめず、病気に向かい続けた。そして、そのことこそが長期生存を実現する最大の原動力となっているようだ。

紹介した乳がん再発患者さん13人のエピソードは、彼女たちの考え方、生き方ががんを遠ざけることを証明している。


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