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自家組織再建か、インプラント再建か

乳房再建はそれぞれの長所・短所を理解して、価値観やライフスタイルに合う選択を

監修●松本綾希子 がん研究会有明病院形成外科
取材・文●伊波達也
発行:2017年9月
更新:2017年9月

  

「乳房再建は、患者さん1人ひとりに適した方法が異なります。自分の価値観やライフスタイルに合う再建法を選択しましょう」と語る松本綾希子さん

乳房全摘出手術を受けた患者の中には、乳房を再建したいと考える人が少なくない。乳房再建には、自家組織再建とシリコン乳房インプラントによる再建法がある。それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのか。また、術後の合併症の違いはあるのか。乳房再建に詳しい専門医に伺った。

乳房再建術には4つのパターンがある

乳房再建術は、乳がんの手術にあたって、がんの大きさや発症部位、再発リスクなどを考慮した結果、乳房を残すことが難しく、乳房全摘出手術を行った後、形成外科医によって新たな乳房を作る手術だ。

この乳房再建術は、実施する時期によって、「一次再建」と「二次再建」がある。一次再建は、乳がんの手術と同時に行う方法で、二次再建は乳がんの治療の終了後に改めて乳房を再建する方法だ。

また、再建が完成するまでの手術の回数によって、「一期再建」と「二期再建」に分けられる。一期再建は、1回の手術で乳房を作る方法で、二期再建は、1回目の手術でティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を入れて乳房の皮膚を十分に伸ばし、6~8カ月後に行う再建術だ。

この組み合わせで、乳がんの手術と同時に再建術を完了する「一次一期再建」、乳がんの手術と同時にティッシュ・エキスパンダーを入れて、6~8カ月後に再建術を行う「一次二期再建」、乳がんの治療が一段落した後に1回の手術で再建術を行う「二次一期再建」、まずティッシュ・エキスパンダーを入れ、その後に再建術を行う「二次二期再建」の4つのパターンがある。

一次一期再建は体への負担が最も少ない。適応になるのは、1回の手術で明らかにがんを取り切ることが可能な場合だ。ただしインプラントを用いる場合は、乳房が大きな人には難しく、乳頭乳輪が温存可能でかつ乳房が小さめの人に適している。

一次二期再建は、ティッシュ・エキスパンダーですぐにふくらみを取り戻すので、胸の喪失感が和らぎ、安心感が生まれることがメリットだ。また、再建術まで6~8カ月の猶予期間があるので、その間にインプラントを使う方法にするか、自家組織を使う方法にするかを、じっくり考えて決めることができる。

二次一期、二期再建は、まず乳がん治療に専念することができ、再建方法について考える時間がある。ただし、乳房の喪失感がある。乳がんの手術時には再建を希望しなかったが、改めて再建術を受けたいという人や、がんの進行度により再建術を見送っていた人などに行われる。

「患者さんの条件やご希望によって手術方法を決めますが、当院の場合は一次二期再建を行うケースが多いです。がんがしっかり取り切れているかなど、安全性を確認してから行うという方針で実施しているためです。施設によっては、一次一期再建を多く行っているところもあります」

そう話すのは、がん研有明病院形成外科の松本綾希子さんだ。松本さんは、乳腺外科医で形成外科医という両方のキャリアを持っている。

インプラント・自家組織再建のメリットとデメリット

乳房再建術には、シリコンのインプラントによる再建術(人工乳房再建術)と、自分のお腹や背中の組織を使って行う自家組織再建術がある。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。

「インプラントによる再建は手術が2~3時間程度と短く、2~3日の入院で済むため、早く社会復帰できます。しかし、人工物であるため、少しかたく、温度が冷たく感じられます。また、長期的には破損の可能性があるので、メンテナンスの必要もあります。さらに、年齢を経て健康な側の胸の形が変わると、アンバランスになることもあります。

一方、自家組織は自分の組織を使うため、温かくてやわらかく、自然な感触や動きがあり一体感があります。メンテナンスの必要もありません。ただし、お腹や背中の組織を取るため、その傷が残ってしまいます。また、術式にもよりますが、手術時間は10~12時間程度かかり、入院期間も10日~2週間程度必要になります。傷の回復にも時間が必要ですから、すぐ社会復帰ともいかないのがマイナス面です」

また、乳がんの手術後に放射線治療を行うと、皮膚が薄く、伸びにくいためシリコンが露出してしまうなどの可能性があり、インプラントによる再建は難しいとされている。自家組織では手術の難易度が上がるが、再建は可能だ。

では、費用についてはどうか。長い間、乳房再建に保険が適用されるのは自家組織による再建術のみだったが、2013年7月からラウンド型(お椀型)のインプラントが保険適用になり、2014年1月からアナトミカル型(しずく型)のインプラントによる再建術も保険適用になった。

再建術の医療費は、インプラントの場合は25万円、自家組織は術式によって異なり(後述)、有茎腹直筋皮弁法の場合は49~53万円、深下腹壁穿通枝皮弁法の場合は84万円(価格については保険点数)で、これに入院費が加わる。ただし、保険対象の手術費用については、いずれも高額療養費制度が利用できるので、患者の費用負担は保険外である入院費のほうが高くなる。

がん研有明病院の場合、かつてはインプラント再建と自家組織再建の比率は4対1程度だったが、現在は15対1程度となっているという。インプラント再建と自家組織再建の比較を表1に示す。

表1 自家組織再建とインプラント再建の比較

入院期間、手術時間、メンテナンスなどは施設によって異なることがあります。

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