是非知っておきたいチャイルド・ライフの考え方や実践方法
子どもががんになったら!?――「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」を探して下さい

インタビュー:藤井あけみ 千葉県こども病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト
取材・文:半沢裕子
発行:2008年12月
更新:2013年4月

  
藤井あけみさん 千葉県こども病院の
藤井あけみさん

ある日突然、自分の子どもががんと言われたら、あなたはどうしますか。
「信じられないという思いで、その事実をなかなか受け入れられないのは理解できます。しかし、だからといって事実を受け入れないと、前には進めません」と、病気の子どもとその家族をサポートするチャイルド・ライフ・スペシャリストの藤井あけみさんは話します。
親は子どものがんにどう立ち向かい、子どもと共にどう乗り越えていけばいいのでしょうか。


困った時は、チャイルド・ライフ・スペシャリストを

写真:千葉県こども病院

藤井さんが働く千葉県こども病院。チャイルド・ライフ・スペシャリストがいるのは千葉県ではこの病院のみ

がんになることは、大人にとっても大変な事態です。まして、子どもががんになれば、子ども自身も親御さんも兄弟姉妹も、さまざまな問題に直面して、パニックに陥ってしまうはずです。

私たちチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)は、病気の子どもたちとご家族に寄り添い、サポートする専門スタッフです。

日本ではまだ10年程度の歴史であり、残念ながらチャイルド・ライフ・スペシャリストのいる病院はごく限られています。けれども、実際にチャイルド・ライフ・スペシャリストのサポートが受けられない場合でも、チャイルド・ライフの考え方や実践方法を知っていただくと、「こんな場合にどうしたらいいのか」という疑問や不安に対する答えが、多少なりとも見えてくるのではないかと思います。そこで、チャイルド・ライフについての説明を通じ、がんのお子さんのケアについて、お話ししてみたいと思います。

チャイルド・ライフのケアを受けると術後の回復も早い

写真:グループ会議「Hope Tree~パパやママががんになったら~」

グループ会議「Hope Tree~パパやママががんになったら~」で、絵本を紹介する藤井さん(中央)

チャイルド・ライフは1950年代、アメリカで始まりました。長期入院で親から切り離された子どもたちが、精神的ダメージを受けるという研究発表が相次ぎ、「病気の子どもにかかるストレスをできるだけ少なくすること」の重要性が確認されたのです。

これを受け、アメリカの病院ではひどく制限されていた親の面会が改善され、多くの病院で24時間自由になりました。

また、チャイルド・ライフはその後もノウハウを積み上げ、今日では「良質な小児医療にとって不可欠」(アメリカ小児科学会)と認められ、多くの病院にチャイルド・ライフ・スペシャリストが常駐するようになっています。

効果も検証されています。その中には、「チャイルド・ライフ・スペシャリストのケアを受けた子は、受けなかった子に比べ、術後の回復が明らかによかった」とする研究もあります。この研究によると、チャイルド・ライフのケアを受けた子どもは、術後に排泄できるまでの時間も、歩き出すまでの時間も、また、退院までの時間も、ケアを受けなかった子どもより短いのです。

子どもの状態をよくするのに役立つ遊び方、おもちゃがある

写真:棒倒しゲーム

病院内の友達同士、なじめない時などに行う棒倒しゲーム。社会性の発達などにも役立つ

写真:香り付き粘土

香り付き粘土。目のがんで眼球を摘出した子どもなどには、香りつきの粘土で遊ぶことで、嗅覚など残された機能を刺激することができる

写真:聴診器を当てられる人形「クターちゃん」

聴診器を当てられる人形「クターちゃん」。子どもは普段されていることを自分が行うことで、検査の意味を理解する

では、チャイルド・ライフ・スペシャリストが行うのは、実際にはどんなケアなのでしょうか。大きく分けて、5つの仕事があります。

(1)セラピューティック・プレイ

(2)プリパレイション

(3)処置中の援助

(4)家族への心理社会的支援

(5)ターミナル・ケア(グリーフ・ケア)

(1)の「セラピューティック・プレイ」とは、文字通り「治癒的な遊び」です。子どもの遊びは、余暇や気晴らしである大人の遊びとは違います。生活であり仕事であり、コミュニケーションの手段です。ですから、どの子にもそれぞれの年代に必要な遊びの機会が与えられ、「遊びきる」経験をすることが大切です。

セラピューティック・プレイの目的の1つは、病院で子どもが感じる不安やストレスを減らすことですが、「遊びきる」ことによって、もう1つの目的である「その子本来の発達を促す」ことにも役立ちます。

具体的にいうと、私たちが行うセラピューティック・プレイは、おもちゃの特性で2つに分けられます。1つは「形の決まった遊び」。パズル、塗り絵、迷路などが代表です。もう1つは「形の決まっていない遊び」。病院では水遊びや砂遊びができないため、絵の具や粘土がそれにあたります。

子どもは病院で、おとなしくしているように強制されますが、そうした時間が長くなると、支配されることが当たり前になり、自分に自信を失ってしまいます。これを逆転するのが、遊びなのです。

「プリパレイション」とは、心の準備の意味。これから起こる治療や検査に対して、子ども自身が理解し、安心して臨めるよう、手助けをすることです。

また、「処置中の援助」は、セラピューティック・プレイなどで治療から気をそらし、子どもがリラックスできるようにすること。そして、「家族への心理社会的支援」とは、両親だけでなく、病気の子の兄弟姉妹もふくみ、ご家族をサポートする仕事です。

「ターミナル・ケア(グリーフ・ケア)」は、残念ながら治ることができないお子さんとご家族に対するサポートです。最後までその子らしく過ごせるように、セラピューティック・プレイなどを行って関わり、親御さんや兄弟姉妹には、「お別れ」に際して心の準備ができるよう、「プリパレイション」を提供します。

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