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食道がんの基礎知識:初期症状がなく、転移もしやすいが…… 高精度の内視鏡で早期発見が可能 手術以外にも根治的治療の選択肢が

監修●堅田親利 北里大学医学部消化器内科学診療講師
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2013年9月
更新:2020年3月

  

北里大学医学部消化器内科学診療講師の堅田親利さん

食べ物を胃に運ぶ食道。食道にできるがんは初期症状がないために発見が遅れがちで、しかも転移しやすい特徴がある。しかし、最近は化学療法の研究などが進み、治療選択肢も広がっている。

食道がんの特徴は?

■アルコールが分解される仕組み

日本人の食道がんの約9割は扁平上皮がんという種類です。欧米では腺がんという、原因も違う種類のがんが半数以上を占めており、扁平上皮がんが多いことは黄色人種の特徴とされています。

扁平上皮がんは、飲酒が原因で発生することが明らかになっています。飲酒に適さない体質の人がかかりやすいがんです。

口から入ったアルコールは、体内でアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって、酢酸に分解されます。このALDHの活性が弱い人が飲酒をすると、アセトアルデヒドは速やかに酢酸へ分解されずに、体内に蓄積してしまいます。このアセトアルデヒドが食道がんの発がん物質なのです。

飲酒で顔が赤くなるような人は、ALDHの活性が弱い人です。このような人が毎日何十年も飲酒すると、口・のど・食道はアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなり、扁平上皮がんが発生しやすくなります。ALDH活性の弱い人が、週に5日以上、1合以上飲み続けると、食道がんになるリスクは、飲まない場合に比べて約5倍になることが明らかになっています。

早期発見するためには?

■ハイビジョンの内視鏡機器

進行がんが発生した場合、食べ物や飲み物が胸につかえるといった症状が出ます。しかし、このような症状が出た時点で発見した場合は、病期が進んでいることも少なくありません。症状が出る前に、内視鏡検診を受けて欲しいと思います。早期がんの段階で発見できれば、負担の少ない治療で食道を温存して治せる可能性が出てきます。

具体的には、飲酒で顔が赤くなる体質にもかかわらず飲み続ける人は、50歳を越えたら年に1度、内視鏡検診を受けて欲しいです。

内視鏡機器もハイビジョンの時代を迎えています。また、従来法よりも早期がんを発見しやすい画像強調法という技術も登場しました。

食道がんになりやすい体質の人や生活習慣をもつ人は、このような内視鏡機器を用いて、食道だけではなく、口やのども検診することをおすすめします。

治療はどのように選択される?

食道がんの進行度は、内視鏡検査やCT検査で診断します。現在の治療はUICC(国際対がん連合) TNM分類(第6版)でのエビデンス(科学的根拠)に基づいています。

治療は大きく、内視鏡的切除術、手術、化学放射線療法の3つに分けられます。内視鏡的切除術は、食道の内側から食道がんのみを切除する手技ですので、食道の外のリンパ節に転移がある場合や、転移の存在が疑われる場合には適しません。

内視鏡的切除術が困難なステージⅠや、周囲の組織(臓器)に入り込んでいないステージⅡまたはⅢの標準的な治療は手術です。近年、ステージⅡ、Ⅲについては、手術の前に化学療法をおこなうことによって、予後が改善することが報告されました。

周囲の組織(臓器)に入り込んでいたり、頸部リンパ節や腹腔動脈周囲リンパ節に転移している場合は、化学放射線療法が標準的治療となります。

 

■食道がんの進行度

ステージ 腫瘍の深さ(T) 所属リンパ節転移(N) 遠隔転移(M)
0期 粘膜上皮に留まっている なし なし
Ⅰ期 粘膜固有層、粘膜下層に及んでいる なし なし
ⅡA期 固有筋層、外膜に及んでいる なし なし
ⅡB期 粘膜固有層、粘膜下層、固有筋層に及んでいる あり なし
Ⅲ期 外膜に及んでいる あり なし
周囲組織に及んでいる(T4) 関係なし なし
ⅣA期 関係なし 関係なし 頸部リンパ節や腹腔動
脈周囲リンパ節に転移
ⅣB期 関係なし 関係なし 遠くの臓器に転移

UICC TNM分類第6版より

■食道がん進行度別の治療内容

(北里大学病院/北里大学東病院)

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