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食道粘膜炎、皮膚炎は軽減できる。気になる症状は病院で相談を 放射線治療の副作用を理解して、つらい時期を乗り切ろう

監修●西村美穂 兵庫県立がんセンターがん放射線療法看護認定看護師
取材・文●植田博美
発行:2013年9月
更新:2020年3月

  

「不安に思う症状は、何でも相談してください」と話す西村さん

食道がんにおいては、放射線治療の果たす役割は大きいが、粘膜組織である食道は放射線のダメージを受けやすく、副作用は避けられない。がん放射線治療に伴う副作用症状の予防や緩和、セルフケア支援について、日本看護協会認定のがん放射線療法看護認定看護師の西村美穂さんに話を聞いた。

食道がん治療で多用される放射線

■図1 放射線による副作用が現れる時期(化学放射線療法の場合)※治療スケジュールは、兵庫県立がんセンターの術前化学放射線療法の1例

食道がんの放射線治療はどのような場合に行われるのか。

「根治を目指せる食道がんでは、治療の第1選択は手術になります。放射線治療の役割は、切除不能例や高齢・合併症などで手術が難しい患者さんへの対処です。また、抗がん薬と併用する化学放射線療法は、再発・進行食道がんの治療に広く行われるとともに、術前の補助療法にも用いられています。さらに、通過障害・気管圧迫症状の改善を目的とした緩和照射もあります」

このように話すのは、兵庫県立がんセンターがん放射線療法看護認定看護師の西村美穂さんだ。

「化学放射線療法の標準的な治療法は、抗がん薬治療と並行して、1日1回2グレイの放射線を計30回照射します」(図1)

食道は、成人の場合で25~30cm前後と意外と長い臓器だ。そのため、食道上部、中部、下部、全域など、放射線を照射する範囲によって副作用の現れ方は異なり、個人差も大きい。

必ず現れる食道粘膜炎

■図2 放射線の皮膚・粘膜への影響放射線によってダメージを受けた基底層の細胞が、2週間をかけて角質層に上がってくる。これらの細胞は、バリア機能が低下しているので、外からの刺激に弱い。さらに2週間をかけてアカとしてはがれ落ちるころには、皮膚の機能は元に戻る

食道がんの放射線治療の副作用で、ほぼすべての症例に発現するのが、食道粘膜に浮腫(腫れ)と炎症が生じる食道粘膜炎だ。食道の粘膜上皮細胞は放射線の感受性が強いため、健康な細胞までもが影響を受やすく、再生が追いつかなくなるからだ(図2)。

治療開始後2週目ごろから症状が現れる。治療前より食物の通りが悪くなるため、がんが進行したのではないかと不安を感じる患者さんもいるという。

「放射線治療による食道粘膜炎は、残念ながら避けようがありませんが、症状を強めないよう対策をとることは可能です」(西村さん)

食道粘膜炎を増強させる要因には、①刺激物(たばこ、アルコール、香辛料、高・冷温の飲食物など)②1回の嚥下量(飲み込む量)が多い③低栄養④血糖コントロール不良(糖尿病等による)⑤放射線の加速過分割照射(1日2回の照射など)⑥化学療法の併用――などがある。

「①と②は刺激物の摂取をやめる、よく噛んで少しずつ飲み込むなどで対策を講じられます。長年の習慣を改めるのは難しい面もあるかもしれませんが、リスクを理解していただき、患者さん自身の意識で改善していくことが大切です。⑤と⑥は取り除けない要因なので、薬剤による疼痛コントロールを早い段階から行い、苦痛の軽減を図ります」

具体的には、①粘膜保護薬を少量ずつ頻回に内服②食事などの食道刺激時に症状が出る場合は、アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)を食前30~60分前に服用。効果が得られない場合は頓用の医療用麻薬を併用③食事摂取時以外や、痛みによる睡眠障害があるときはアセトアミノフェン+貼用の麻薬。

「薬剤の効果を評価できるのは患者さんご本人だけですから、遠慮せずに医師や看護師に伝えてください」

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