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第1号のクリゾチニブが米国で承認。耐性ができても、効く次世代の薬も続々開発中
最新報告!ALK阻害剤の開発はここまで進んでいる

監修:間野博行 自治医科大学教授                             
   木島貴志 大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学助教
取材・文:「がんサポート」編集部/増山育子
発行:2011年11月
更新:2013年4月

  
木島貴志さん クリゾチニブの目覚しい症例を
報告した
木島貴志さん
間野博行さん ALK阻害剤の研究を
リードしている
間野博行さん

肺がんの新しい分子標的薬「ALK阻害剤」の開発は第2段階に入った。
先行するクリゾチニブを1次治療、第2世代のALK阻害剤を2次治療に使うという道筋まで見えてきた。
一方、治験の現場からはクリゾチニブの目覚ましい効果が次々と報告されている。

次世代のALK阻害剤も開発

肺がんの化学療法で、世界的に今最も注目されているのは、「ALK阻害剤」の研究だろう。ALK阻害剤は、非小細胞肺がんの一部に起こる「EML4-ALK陽性」という遺伝子異常に特異的に働く分子標的薬だ。

「EML4-ALK陽性とは、本来別々のEML4遺伝子とALK遺伝子とが融合した異常遺伝子が作られている状態。EML4-ALKは細胞を際限なく分裂・増殖させてしまうため、がんは猛スピードで大きくなるのです」

こう説明するのは、EML4-ALKを発見し、ALK阻害剤誕生のきっかけをつくった自治医科大学教授の間野博行さん。現在、東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座特任教授も務めている。EML4-ALK陽性は、非小細胞肺がんの5パーセント程度だという。

EML4-ALKのALK酵素活性は異常に亢進し、その働きによって細胞は分裂・増殖を始める。このALK酵素の働きを妨げるのがALK阻害剤だ。

「ALK酵素が働くためには、ATP(アデノシン3リン酸)というエネルギーが必要で、ALK酵素にはATPを取り込む口のようなポケットがあります。ALK阻害剤は、ATPより先にALK酵素のポケットにはまって、ALK酵素が働けないようにするのです。現在開発されている複数のALK阻害剤は、それぞれ構造は違うものの同じ仕組みで働きます。どの構造のALK阻害剤がより早く、より効率よくALK酵素の働きを止められるか、今ではそういう開発競争になっています」

クリゾチニブに耐性ができる仕組み

[クリゾチニブの効果(2年生存率)]
クリゾチニブの効果

2011ASCO発表データによる

ALK阻害剤の開発競争で先行しているのがクリゾチニブ(一般名)だ。EML4-ALK陽性の非小細胞肺がんに対する目覚ましい効果は、今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)でも発表された。薬物治療歴のあるEML4-ALK陽性の非小細胞肺がんについて、クリゾチニブ投与群とクリゾチニブ非投与群を比べたところ、2年生存率はクリゾチニブ非投与群が9パーセントだったのに対し、クリゾチニブ投与群が61パーセントに上った。

米国では今年8月、クリゾチニブがEML4-ALK陽性の非小細胞肺がんの2次治療薬として、異例のスピードで承認された。すでに、米国では1次治療薬としての承認に向け、第3相試験も始まっているという。

「効き目がわかっている以上、EML4-ALK陽性の非小細胞肺がんの治療薬として第1選択となるのは当然でしょう」

日本でも今年5月、クリゾチニブの承認申請がなされ、遠からず認可される見通しだ。

ほかにも、日本では、国内製薬メーカーが開発した複数のALK阻害剤の第1相試験が行われている。クリゾチニブより開発が出遅れたこれらの薬だが、後発ならではの長所もあるという。

[クリゾチニブの耐性と第2世代ALK阻害剤のしくみ]
クリゾチニブの耐性と第2世代ALK阻害剤のしくみ

「実は、クリゾチニブに耐性()ができる症例があることが、私たちの研究でわかりました。クリゾチニブが効かなくなったがん細胞を調べたところ、EML4-ALKがさらに変異して、ALK酵素内のポケットの形が変化し、クリゾチニブがはまらなくなっていたのです。ところが、今開発中の薬には、こうした変異が起きてもALK酵素の働きを妨害できるものがあります」

将来、クリゾチニブが1次治療薬となった際、もしクリゾチニブに耐性ができても、2次治療薬としてこれらのALK阻害剤が活用できるわけだ。

米国でのクリゾチニブ承認を受けて、日本でも個人輸入が始まると間野さんは見る。

「注意していただきたいのは、必ずEML4-ALK陽性かどうかを確かめてから使うこと。さもなければ、逆効果になるばかりか、予期せぬ重大な副作用が起きるかもしれません。日本でも、EML4-ALK検査は受けられます」

日本でも、EML4-ALK陽性がクリゾチニブの承認条件につく可能性が高い。それに向けて、従来よりも高精度のEML4-ALK検査法()の普及が急務だと間野さんは訴える。

耐性=がん細胞が薬に慣れて、効かなくなること
EML4-ALK検査法=現在、主流の遺伝子検査法であるFISH法だけでは診断精度が低いが、PCR法やiAEP法という非常に感度の高い方法を用いたALK免疫染色も用いれば診断精度が高まる


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