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10年生存率80%以上という治療成績

高リスク前立腺がんでも根治が可能なトリモダリティ治療とは?

監修●矢木康人 国立病院機構 東京医療センター泌尿器科
取材・文●伊波達也
発行:2015年3月
更新:2015年5月

  

「高リスクでもトリモダリティ治療で根治が可能です」と語る東京医療センターの矢木康人さん

前立腺がんの小線源療法というと、低・中リスクの患者さんだけがその対象となるという考え方が根強いが、決してそうではない。
小線源療法に外照射とホルモン療法を併用する「トリモダリティ治療」によって、高リスク患者さんに対しても非常に良い治療成績が出ており、根治が期待できる治療となっている。

高リスクでも小線源療法を実施

様々ながんの中でも生命予後が良く、しかも治療の選択肢が豊富なことで知られているのが前立腺がんだ。昨今では、ロボット支援下による腹腔鏡手術が保険適用となり、局所治療において、低侵襲で根治が望める可能性がさらに広がっている。そんな前立腺がんにおける、もう1つの侵襲性の低い局所治療の代表的なものが永久密封小線源療法(小線源療法)だ。

通常の放射線療法が体外から照射する外照射であるのに対し、放射線源を直接、前立腺の中へ埋め込む内照射と言われる治療だ。

小線源療法は、超音波で前立腺の形を確認しながらコンピュータで治療計画を立てて、会陰部(陰嚢と肛門の間)から長い針を刺して、その針からヨウ素125という放射線源を密封したシード(カプセル)を、がんのある前立腺に50~100個埋め込む。すると埋め込まれた線源から放射線が放出されて、がんを叩くというメカニズムだ。

こうした低侵襲の小線源療法を全国に先駆けて2003年より実施しているのが東京医療センターだ。

「小線源療法は、我が国では一般的に、早期の限局性の前立腺がんに対して標準治療として実施されていますが、当院では治療当初から高リスクの患者さんに対しても小線源療法を行ってきました。
高リスクであっても、安全で根治に導く治療が十分に実現できることを、今までの経験によって認識しています」

そう話すのは、同センター泌尿器科の矢木康人さんだ。

前立腺がんにおける高リスクとは、がんが限局してはいるものの、悪性度が高いものや、PSA(前立腺特異抗原)値の高いもの、それに前立腺の被膜に浸潤したようながんのことを言う。高リスクの場合、小線源療法が適応されず、通常はホルモン療法と放射線療法(外照射)の併用か、前立腺全摘出手術が選択される。

それに対して、高リスク症例に小線源療法を取り入れて行われているのが、「トリモダリティ治療」という方法だ。

「トリモダリティとは3つの治療を組み合わせるという意味です。ホルモン療法と小線源療法と放射線の外照射の3つの治療を行うことによって治療効果を向上させるのです」

トリモダリティ治療の流れ

東京医療センターでは2003年10月から08年8月までの期間、高リスク患者さん96例を対象にトリモダリティ治療を実施、良好な結果が得られているという。

対象となったのは、NCCN(全米がん情報ネットワーク)のガイドランに準じて、❶PSAが20ng/ml以上、❷がんの悪性度を評価するグリソンスコアが8以上、❸病期分類としてはcT3a以上――のいずれか1つでも満たす高リスク患者さん(図1)。

治療の流れは、まず3カ月間ホルモン療法を受ける(図2)。これは、放射線の治療効果を高めるために行われる。その後、小線源療法を3泊4日で実施。さらに1カ月半ほど、外照射の放射線療法を行う。またそれと並行して、ホルモン療法もあと3カ月間(合計6カ月間)実施し、放射線療法の終了とともにホルモン療法も終了するという流れだ。

図1 トリモダリティ治療が対象となる高リスク患者とは?
図2 トリモダリティ治療の流れ

局所と微小転移のコントロールが重要

表3 トリモダリティ治療での照射線量

高リスク患者さんに対しては、「局所のコントロールと、20~30%に見られる微小転移のコントロールが重要」と矢木さん。
トリモダリティ治療では、照射線量として小線源療法110Gy(グレイ)、外照射治療45Gyで治療しており、単独照射のそれぞれ約6割程度(表3)。

しかし、BED(生物学的等価線量)といって、前立腺に放射線がどの位照射されているかをトータルで示す指標で換算すると、小線源と外照射を併用することによって、それぞれの単独照射と比べて照射線量を1.5倍ほどに高められ、「局所のコントロールはしっかりできている」という。また、昨今では外照射についてはIMRT(強度変調放射線療法)が選択されて、「さらに精度が上がっている」そうだ。

一方、高リスク患者さんに考えられる微小転移については、ホルモン療法が重要な役割を果たしているという。「高リスクの場合は、局所療法を徹底して行うことはもちろんですが、可能性として2~3割は考えられる、目に見えない微小転移に備えて全身療法も行うべきです。したがって、ホルモン療法を合計6カ月間行うことは重要です」

なおホルモン療法の影響で、1年ほどは男性機能が失われ、また放射線療法によって排尿障害や直腸障害の有害事象が生じる場合もあるが、その多くはほとんど治療を要さない程度(グレード0~1)で収まるという(表4)。

表4 放射線療法による有害事象

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