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新たな治療薬が続々と、薬の使い方が重要に 去勢抵抗性前立腺がんの薬物療法

監修●上村博司 横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科診療教授
取材・文●伊波達也
発行:2020年1月
更新:2020年1月

  

「去勢抵抗性前立腺がん治療の選択肢は次々に増えてきていますので、患者さんにとっては大きな希望となるでしょう」と語る
上村博司さん

前立腺がんはあらゆるがん種のなかでも、予後の良いがんとして知られている。I~Ⅲ期では5年相対生存率は100%だ。しかし、IV期では63.7%、なかでも遠隔転移のあるホルモン療法の効果がなくなった去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)では、生存期間はほぼ3年だ。

だが、現在、次々に新しい治療薬が登場し、去勢抵抗性前立腺がんにも光が見えてきた。その現状を横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科診療教授の上村博司さんに聞いた。

大きく変化した去勢抵抗性前立腺がんの治療

現在、前立腺がんの2019年罹患数予測は78,500。全がんでの総合順位は5位、男性のみでは4位だ(国立がん研究センター・がん対策情報センターがん統計)。2025年には1位になると予測されている。

しかし、進行が遅く、手術や放射線治療が適応できれば根治(こんち)に導くことができる予後(よご)良好ながんでもある。

現在の課題は、手術や放射線療法などの局所療法が適応にならない、進行・再発転移がんに対する治療だ。

「前立腺がん全体の10~15%ほどを占める進行・再発がんのなかでも、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)と言われる症例では、5年生存率が50%以下となってしまいますので、その治療をいかに行なっていくかが課題です」

そう話すのは、横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科診療教授の上村博司さんだ。上村さんは、日本泌尿器科学会の『前立腺癌診療ガイドライン』で、去勢抵抗性前立腺がんについて研究協力を担当している。

「去勢抵抗性前立腺がんは、手術や放射線治療後に再発し、遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん(M0CRPC:エムゼロCRPC)と、転移のある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC:エムCRPC)の2つに分類されます。進行・再発前立腺がんのうち8割程度が、去勢抵抗性前立腺がんへ移行する可能性があり、そのうちM0CRPCは3割、mCRPCは7割程度で、画像診断により分類されます」(図1)

以前は、去勢抵抗性前立腺がんで転移が起こっているケースでは、生存期間は1年程度だったが、タキサン系抗がん薬タキソテールなど(一般名ドセタキセル)の適応により2年に延び、現在はほぼ3年となってきた。

現在の治療について順番に説明していこう。

「去勢抵抗性前立腺がん治療の主要薬剤は抗がん薬タキソテールでしたが、このタキソテールに抵抗性となった場合の薬として、2014年には、新規アンドロゲン受容体(AR)シグナル阻害薬である抗アンドロゲン薬、イクスタンジ(同エンザルタミド)、CYP17阻害薬であるザイティガ(同アビラテロン)、タキサン系の抗がん薬であるジェブタナ(同カバジタキセル)が使えるようになり、治療は大きく変化してきました」

転移の有無に関わらず投与できるイクスタンジとザイティガ

現在では、去勢抵抗性前立腺がんの1次治療として、イクスタンジとザイティガが使えるようになっている。ガイドラインでは推奨グレードAである。

イクスタンジは、アンドロゲン受容体へのリガンド(細胞の表面に存在する特定の受容体に結合する物質)の結合を抑え、アンドロゲン受容体核内移行を妨げ、アンドロゲン受容体のDNAへの結合を阻害する作用を持つ。

「イクスタンジのメリットは、ステロイド薬や抗がん薬を使わなくても、より良い効果を得ることができる点です」

副作用については、疲労感、食欲不振、脱力感などがあるが、それほど重度なものではない。

ザイティガは、男性ホルモンの生合成に必要なCYP17という酵素を阻害する作用を持っており、男性ホルモンを介したがん細胞増殖の情報伝達を抑え、腫瘍の増殖を抑制するアンドロゲン合成阻害薬だ。

副作用は、肝機能障害や体液貯留(浮腫)、心血管系障害があるため、注意が必要だ。

「わが国では、イクスタンジもザイティガも去勢抵抗性前立腺がんについて、転移の有無に関わらず投与することができます。患者さん個々の状態を考慮しながら、各医師の戦略によって使い分けられています」

タキソテールと同じタキサン系の薬であるジェブタナはタキソテールによる治療の再燃後の2次治療薬として使われてきた。副作用として注意が必要なのは骨髄抑制だ。

骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対してはゾーフィゴ(塩化ラジウム223)という薬も登場している。ラジウム223という放射性物質が、骨に集まりやすい性質を持っており、体内に入るとがんの骨転移巣に多く運ばれ、α(アルファ)線の放出により、がん細胞の増殖を抑えるというメカニズム(作用機序)を持った薬剤だ。副作用は骨髄抑制、悪心・嘔吐、下痢、食欲減退、骨の痛み、疲労感などがある。

現在、去勢抵抗性前立腺がんに対する治療としてここまで述べてきた薬剤については、投与開始の判断や治療効果判定の方法に関する明確な基準はなく、PSA(前立腺特異抗原)などの腫瘍マーカー、画像検査、患者の状態などを評価しながら医師が判断しているのが現状だという。

ただし、AR-V7、CYP17などの酵素の発現の多寡、転写因子ETSファミリーであるERGの遺伝子異常はイクスタンジやザイティガの効果に関係しているという報告もあり、今後も新しいバイオマーカーの応用による治療が期待されるところだ(図2)。

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