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骨転移の治療をすることは溶骨の防止だけでなく、がんの進行も抑える
病状をコントロールして長く元気に過ごそう! 再発・転移の前立腺がん治療

演者(前立腺がん市民公開講座):吉野能 名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科講師
発行:2011年3月
更新:2013年4月

  
吉野能さん
名古屋大学大学院
医学系研究科泌尿器科講師の
吉野能さん

再発・転移しても前立腺がんの場合、治療の選択肢は多い。
ホルモン治療、抗がん剤治療、さらには転移しやすい骨へのケアについて、名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科講師の吉野能さんに、わかりやすく解説してもらった。

前立腺がんの転移は骨に起きやすい

まず「再発」「再燃」という言葉は何を意味するのか、というところから説明を始めましょう。再発とは、それまで消えていたがんが新しくできることです。これに対し、小さくなっていたがんが再び大きくなることを、再燃といいます。

もう少し詳しく説明すると、再発の中で手術した部分に再びがんができるものを「局所再発」といいます。別の部位にできる再発は「転移」です。

転移は、がん細胞のかたまりから、一部のがん細胞がはがれ落ちるために起こります。はがれたがん細胞は血流に乗り、他の臓器まで流れて行って、そこで増殖します。これが転移です。前立腺がんは、骨によく転移します。とくに多いのは、大腿骨の上部、骨盤骨、脊椎骨など、体の真ん中付近にある骨です。

[前立腺がんが転移するしくみ]
図:前立腺がんが転移するしくみ

ホルモン治療では薬が効く期間を延ばす

前立腺がんの再発や再燃が起きた場合には、まずホルモン治療(内分泌療法)が行われます。前立腺がんは男性ホルモンを利用して増殖するので、男性ホルモンの分泌を抑えたり、男性ホルモンが前立腺がんに作用するのをブロックしたりすることで、がんを抑え込むのです。

男性ホルモンの分泌を抑えるためには、LH-RHアゴニストという薬が使われます。また、男性ホルモンが前立腺がんに作用するのをブロックするためには、抗男性ホルモン剤が使われます。

ホルモン治療で下がっていたPSA(前立腺特異抗原)が、抗男性ホルモン剤を飲み続けているうちに、次第に上がってくることがあります。このような場合、打つ手はいろいろあります。

まず行うのは、抗男性ホルモン剤を中止することです。これでPSAが下がることがあります。このような現象を、「抗男性ホルモン剤除去症候群(AWS)」といい、治療法として利用されています。

なぜ薬をやめることで効果があるのかといえば、薬を飲み続けることで、かえって抗男性ホルモン剤を服用しているときの環境ががんにとって住みやすいものになってしまったからだと考えられます。そうした環境をなくしてやることで、PSAが下がるのです。

その後、再びPSAが上がってきたら、今度は抗男性ホルモン剤の種類を変えます。

抗男性ホルモン剤Aから抗男性ホルモン剤Bに替えることで、またPSAが下がることがあるのです。このような治療を「抗男性ホルモン剤交替療法」といいます。

次に行われるのは第2次ホルモン治療です。

男性ホルモンは精巣と副腎から分泌されます。それまでのホルモン治療は、精巣からの男性ホルモンを対象としたものなので、次は副腎からの男性ホルモンを抑える治療を行うのです。それにより、PSAが下がる、痛みの緩和や食欲の改善などでQOLが向上する、といった効果が期待できます。

それでもまたPSAが上がってきた場合は、エストラサイト(一般名エストラムスチン)という薬による治療が行われます。これは抗がん剤とホルモン剤の効果を併せ持った薬で、第2次ホルモン治療と抗がん剤治療の間に使われます。

副作用として胃腸障害が出やすいという難点がありますが、量を加減することで、うまく服薬を続けることができます。

[再発・再燃前立腺がん治療の流れ]
図:再発・再燃前立腺がん治療の流れ


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