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がんとうまく付き合っていくためには生活習慣の改善が必要
あるって本当!? 前立腺がんで食べて良いもの、良くないもの

監修:堀江重郎 帝京大学医学部付属病院泌尿器科教授
取材・文:伊波達也
発行:2011年3月
更新:2019年7月

  
堀江重郎さん
帝京大学医学部付属病院
泌尿器科教授の
堀江重郎さん

前立腺がんの急増の背景には食生活の変化が大きく関わっている。
今、前立腺がんと食品に関する研究も進められ、前立腺がんで食べて良いもの、良くないものがあることがわかってきた。

急増する前立腺がん発症の若年化も

「前立腺がんは、早期発見が可能で、転移がなければ、ほぼ100パーセントの5年生存率があります。慢性疾患として10年、15年と長い期間で経過を診ていくべきがんなのです。また、他のがんに比べ、がん細胞が発生してから、実際にがんが発症するまでの期間が長いのも特徴です」

そう話すのは、帝京大学医学部付属病院泌尿器科教授の堀江重郎さんです。同科は、国内初の『メンズヘルス外来』を設置し、前立腺がんの患者さんに対して、海外の文献などのエビデンス(科学的根拠)に基づいて、食生活やヘルスケアの指導も行っています。

男性特有の臓器である前立腺は、膀胱の下の尿道の周囲にあり、性機能と排尿機能の双方に関わっています。この臓器にできる前立腺がんは、昨今急激に増えています。2020年には、2000年の3.4倍の約8万人がかかり、肺がんにつぎ、男性のがんの2位になると予測され、死亡率も2.8倍になるといわれています。

以前は60~70代の病気といわれていましたが、21世紀に入ってからは、50代からの発症も増え、さらに40代でも発症危険年齢になってきました。

前立腺がんは、PSA(前立腺特異抗原)検査により、早期発見が可能になっています。PSAとは、前立腺内の悪玉タンパクともいえるもので、PSAの数値の高さは炎症のマーカーであり、がんの危険度を計る目安となっています。

「目安としては、60歳以上でPSAの値が1以下であれば心配ありません。一方、60歳以下で1以上は、生活習慣の改善を考えるべきですし、3以上であるならば、前立腺がんになる可能性がかなり高くなりますので、予防的な食生活も心がけるべきなのです」

[世界の前立腺がん罹患状況]
図:世界の前立腺がん罹患状況

アメリカやカナダなど、乳製品・脂肪の摂取が多く、肉食中心の食生活である地域に前立腺がんが多い。日本では急増しているものの、欧米に比べて発症率が低いのは、豆腐など大豆食品を多く摂るためだといわれている

前立腺がんの原因は食にあり?

前立腺がんの急増の理由は、どこにあるのでしょうか。

「わが国の前立腺がん急増の背景には、食生活の欧米化が大きく関わっています。したがって前立腺がんは、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病と同様の疾患であるという認識に立って、他の生活習慣病と同じように食生活、生活習慣にも気を配り、改善していくことが必要なのです」

それでは、前立腺がんとうまくつきあっていくためには、どのような食生活や生活習慣を心がけたらよいのでしょうか。

「がんは簡単にいうと2つのタイプに分類されます。炭水化物(糖質)で生きていくがんと、脂肪で生きていくがんです。活動エネルギーとなる糖質で生きていくがんは、進行すると急激に痩せていき、いわゆるがん性悪液質になりやすいのです。胃がん、肺がん、膀胱がんなどがそれに該当します。一方、前立腺がんや乳がんは、進行してもあまり患者さんが痩せません。脂肪を食べて生きていくがんなのです。そこで、がんが増殖するための栄養になってしまう脂肪の摂取を減らすことが大切なのです」

実際、前立腺がんが多い国を見ていくと、アメリカ(とくに黒人)や北欧、オーストリアなど、乳製品と脂肪の摂取が多い、肉食中心の食生活を送っている地域です。

「日本に目を転じてみますと、戦後のわが国の食生活において、カロリーを1番摂っていたのは高度経済成長の時期だといわれています。現在ではむしろカロリー摂取量が下がってきているといいます。しかし、男性においては、食事における脂肪の割合は増えているのです」

[日本人の食生活は変わってきている]
図:日本人の食生活は変わってきている

脂肪中心の毎日の食生活に罠が

働き盛りのサラリーマンの食生活を考えてみればわかるとおり、朝食に菓子パンや調理パン、昼食にハンバーガーやポテトフライ、とんかつなどを食べ、夕方はスナック菓子などをつまみながら残業。そして、仕事が終わった後に、揚げ物などをつまみに1杯、さらに深夜のラーメンといった具合に、高脂肪食まみれの生活をしている人が多いでしょう。

ちなみに、前立腺がんでは、焼鳥屋でよく頼みがちな鶏皮を食べると進行が早いという、ハーバード大学の研究員が行った、患者を対象にした調査報告もあります。とくに、揚げ物などに使われるトランス脂肪酸(マーガリンやショートニングに含有)などオメガ6系の油はよくありません。


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