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鎌田 實「がんばらない&あきらめない」対談
必ずメキシコの砂漠を走ってやるという目標が精神的支えになりました 作家/映像ディレクター・戸井十月 × 鎌田 實
バイクで5大陸を走破した行動派作家が肺がんを宣告されたとき
団塊世代の作家/映像ディレクターの戸井十月さんは、バイクで世界の5大陸を走破するなど、行動派として知られている。「がんばらない」の鎌田實さんは、同い歳の戸井さんを、いつまでも「不良少年」を貫いている、憧れの存在として見てきた。そんな戸井さんが肺がんを宣告され、鎌田さんは居ても立ってもいられず、対談のゲストに呼んだ。
とい じゅうがつ
1948年、東京・新宿生まれ。1970年、武蔵野美術大学商業デザイン科中退。以後、映像ディレクター、小説家として幅広く活動している。主な作品に、映画「爆裂都市」企画・主演、同「風の国」脚本・監督、TVドキュメンタリー「エルドラドへの道」編集・構成、宮本亜門演出「祝祭劇 マウイ」脚本、TVドキュメンタリー「ラリー・レイド・モンゴル」編集・構成、写真展「路上にて」開催、ハイビジョン・スペシャル「戸井十月のアフリカ大紀行」、ハイビジョン特集「生き抜く・小野田寛郎」、写真展「遥かなるゲバラの大地」など。その他、世界5大陸をオートバイで走破している。2011年4月より肺がん治療中
かまた みのる
1948年、東京に生まれる。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。長野県茅野市の諏訪中央病院院長を経て、現在諏訪中央病院名誉院長。がん末期患者、高齢者への24時間体制の訪問看護など、地域に密着した医療に取り組んできた。著書『がんばらない』『あきらめない』(共に集英社)がベストセラーに。近著に『がんに負けない、あきらめないコツ』『幸せさがし』(共に朝日新聞社)『鎌田實のしあわせ介護』(中央法規出版)『超ホスピタリティ』(PHP研究所)『旅、あきらめない』(講談社)等多数
還暦過ぎた不良少年が肺がんになった!
鎌田 私は4年ほど前、『空気は読まない』(集英社)という本の中で、「アラ還の不良少年」というエッセイを書きました。その中で、戸井十月さんのことを、「体を張って本を書く人、肉体派の作家のように見えるが、繊細で、ところどころが知的で……」って(笑)。
戸井 まあ「ところどころ」だけでいいけれども、要するに知的じゃないと(笑)。
鎌田 そのあとに、「やんちゃな不良少年のような奔放さを持っている人」って書いてます。
戸井 その部分、切り抜いて持っていますよ。
鎌田 私はずっと、戸井さんのことを「不良少年」と表現していますが、不良少年がうらやましくて、うらやましくてしかたがなかった。だから、10年ほど前に出した『あきらめない』(集英社)という本のあとがきで、「不良少年になりたい」と書いて以来、あちこちでそう書いたり言ったりしていますが、まだ不良少年になれていない(笑)。戸井さんはいまだに不良少年だから、うらやましい(笑)。
戸井 体力の衰えとかは多少あるけれど、基本は何も変わっていないから。それが鎌田さんから見て不良少年に見えるのなら、私はずっと不良少年ですよ。
鎌田 1年ぐらい前でしたか、戸井さんから「テレビ見てよ」というファックスが入って、メキシコをオートバイで走る番組を見たんですが、そのとき初めて戸井さんが肺がんだと知りました。
戸井 2011年11月に、メキシコのバハ・カリフォルニアの砂漠の中を走るレースに出て、転倒して骨折したんです。つい先日も、そのとき現地まで応援に来てくれたカミさんとその思い出話になり、「あのときはホントに呆れた」と言われましたよ(笑)。と言うのも、その年の4月に肺がんが見つかり、聖路加国際病院で速やかに治療をしてもらっていた体で、半ば強引にレースに出ましたからね。
「ステージはⅢb 5年生存率は40%」
鎌田 肺がんはどういう経緯で見つかったんですか。
戸井 咳き込んだり、痰が出たりということは、全然なかったんです。ただ、深く息を吐いたりしたとき、気道が狭くなって横隔膜が反発するような感じが、1~2カ月続いたんです。何かおかしいなと思って、軽い気持ちで小さな町医者に診てもらったわけです。胸のX線写真を撮ってもらうと、その町医者でもわかるような影があり、「早く大きい病院でCTやったほうがいいですよ」と言われた。
鎌田 どっちの肺ですか。
戸井 右です。私にもわかるような白い影が、ポン、ポン、ポンという感じで映っていました。腫瘍が縦隔リンパに広がってきていたんですね。要するに、縦隔リンパが腫れて、気道を圧迫していたわけです。聖路加病院呼吸器内科の蝶名林直彦先生に精密検査をしてもらい、「右肺だけの限局がんで、遠隔転移はありません。小細胞がんではなく、大細胞がんです。一般的に小細胞がんのほうが大変だと言われますが、大細胞がんだからといって、決して油断してはいけません」と言われました。
鎌田 セカンドオピニオンも求められたんですよね。
戸井 出版社の知人に紹介してもらい、三井記念病院の国頭英夫先生にお願いしました。若い先生です。ズバッと告知するけれど、そのあとで救いの言葉があり、「告知の名人」と言われているそうです。私には合っていたと思います。
鎌田 どういう告知をされたんですか。
戸井 「がんのステージはⅢb期。5年生存率は40%ぐらい。油断しちゃダメです。しかし、気にすることはありません。要は、死ぬほうの60%に入らなければいいんですよ」と(笑)。国頭先生に自分ならこうするという治療法を書いてもらい、聖路加病院に戻ると、蝶名林先生も同じ治療法がいいと思うと言われました。
鎌田 それはどういう治療法でしたか。
戸井 私は、手術で取ってしまえれば、一時は苦しいかもしれないが、そのほうがラクだろう、と考えていました。しかし、両先生とも、「まずは取らない」という方針でした。蝶名林先生には、「無理に取ろうとすると、右肺を全摘することになります。それでがんは無くなるかもしれないけれど、今までのような生活はできなくなる。戸井さんは今後も、旅をしたり、物を書いたり、オートバイに乗りたいんでしょ。じゃあ、取らないほうがいいです」と言われましたね。
鎌田 手術はしないで、どういう治療を受けたんですか。
戸井 「ちょっときついけれど、戸井さんなら大丈夫でしょう」と、抗がん薬治療と放射線治療を同時にやりました。肺がんが見つかった4月からすぐに治療に入り、抗がん薬を1カ月1クールとして4クール、肺の放射線照射は33回やりました。
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